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第七章 やっぱり…… Ⅰ

「なんで隠れるんだ」

「いやあ、こういうのは知り合いに見つかったら気まずいもんだろう?」

「お前も慌ててるんじゃないか?」

 その店は目当てのパスタ屋ではなく、はるか東方から伝来したウントン屋だったが。やむを得ぬと席に着き、それぞれ茹でたウントンにとき卵をかけたものを頼んだ。


「しかし、お嬢さまはこの世界に慣れない龍介に街を案内してやってるだけかもしれないぞ」

「まあ、そうだなあ。もうできちゃってるなんて、さすがにないよなあ」

 リョンジェとジェザは運ばれたウントンをすすりながら、あーだこーだと言っていたが、最終的にこのことは黙っておこうという事になった。


 そんなことがあるとは知らないシェラーンと龍介も、どこかの店に入った。

「……あ」

「あらら……」

 そこは、リョンジェとジェザの入ったウントン屋で。鉢合わせをしてしまった。

 四人視線をかわし、気まずそうな笑顔を見せる。


「こんにちはお嬢さま、こんなところで会うなんて珍しいですねえ」

 幸いにというべきか、リョンジェとジェザはウントンを食べ終わって席を立っている時だった。そこに他の客がすぐに座る。


 ぎこちない笑顔でリョンジェとジェザはふたりに挨拶し、そそくさと店を出てゆき。それを同じようにぎこちない笑顔で見送った。

「いやね、あのふたり誤解しちゃって」

「そうだね、街を案内してもらってるだけなのに」

「まあ、下手に言いふらすこともないでしょうけれど。もし言いふらすことがあれば、クビよ」

(怖ッ!)

 龍介はシェラーンに威厳の炎を見た。


「ここのお店は、ゆでたウントンにとき卵をかけたのが美味しいのよ」

「そうなんだ、じゃあそれを……」

 席に着き、メニューを頼んで。しばらくして運ばれてきたとき卵かけウントンを目にして。

(とき卵をかけたうどん……、釜玉うどんだ。この世界にもあるんだ)

 同じようなものがあるんだなあ、と思いながら「いただきます」と麺をすすった。


 パスタのようにフォークとスプーンでだが。コシととき卵のまろやかさが合わさって美味しい。

(この世界も、悪くないかも)

 ふと、そんなことを考えた。


 市場から慌てて逃げるように市街地に出て、しばらく歩くうちに空腹を覚えてウントン屋に入ったわけだが。

 ウントンを食べ終わってお腹も気持ちも落ち着いて、しばしくつろぐ。

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