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第一章 異世界に呼ばれて Ⅳ

(オレはどうしたんだっけ?)

 なんか様子が変だ。意識も記憶ぼやけて、自分の名前すらすぐに思い出せない。そんな中で、

「起きろ!」

 という大声が耳元で叫ばれて、さらに、

「起きないとぶん殴るぞ!」

「は、はい起きます起きます!」

 龍介ははっと目を開けて、弾かれるようにして飛び起きた。


 飛び起きて、あたりをきょろきょろ見渡す。

「こ、これは……」

 ありえない風景を目の当たりにして、茫然とする。


 自分が今いるところは草原だった。広い広い、ただっぴろい草原だった。そこにいくつものテントが張られていて。それに伴いたくさんの人々の姿もあった。

 その人々の姿と言えば、昔の中世のヨーロッパ風の格好をしていて。中にはいかつい鎧姿の人まで。


「なんだこれば。オレはどうしちまったんだ?」

 確か自転車で通勤中、突然の雷が鳴って。落雷(?)の直撃を受けてびっくりしすぎて意識をなくして気絶をしてしまった。

 という風に考えはしたが、それから目を覚ましてみれば。


 なぜか中世ヨーロッパというかファンタジーというか、そんな感じの人々がたくさんいるただっぴろい草原にいるではないか。


 しかも男ばっかりで、鎧を身にまとい腰に剣を佩き。槍と斧が一緒になった武器ハルバードを引っ提げている者までいる。

 そうかと思えば、とんがり帽子にマントフードを羽織り、怪しげにくねる木の杖を持った者もいる。


 いやよく目を凝らせば、人々は様々な格好をしている。しかし男ばかりだ。しかもテントがいくつも張られて。まるで軍隊のキャンプだ。


「こやつ何者だ」

「突然空から降りて来たぞ」

「ぐっすりと、気持ちよさそうに眠りながら、空から降りてくるなど。奇っ怪千万」

「しかも何だこの服は」


 Tシャツにジーパン、スニーカー姿の龍介の姿は、このファンタジーな中世な感じの集団からは奇異に見えた。

 しかも、なんだ? ぐっすり眠りながら、空から降りて来た、だって? いったいどういうことだ?


 龍介はパニック不可避だった。

「まあ、いい。ひったてろ」

 両腕をつかまれて、連行されようとする。龍介はもう真っ青だ。


(オレはどうなってしまうんだ~?)

 Jリーガーになる夢破れながらも、地域リーグから再起を懸けて頑張っていた。そんな日々から突然吹っ飛ばされて、異世界とでも言おうか、違う世界にいる。


 夢なら覚めてほしいと思うが、どうも夢ではなさそうだ。

「これ」

 という声がする。

 その声の主は、怪しげにくねる木の杖を手にしてグレーのマントフードを羽織っている初老の男だった。

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