第六章 マーレの休日 Ⅳ
昨夜のが第17節で、次の試合は最終節の第18節。その最終節の相手が……。
「ひとつ上のギュスノーヴ、でしたっけ」
「そうよ。ギュスノーヴとは最下位争いをしているわ」
リーグのランキングはシェラネマーレが最下位の10位、ギュスノーヴは9位。勝ち点差は1点。
この試合で勝って逆転しなければ最下位確定で。下部リーグから勝ち上がったクラブと入れ替え戦を戦うことになる。
入れ替え戦はJリーグではホーム&アウェーの2試合だが(作者注・2017年度は入れ替え戦は開催されず)、ここでは1試合という。
リーグにも上下のカテゴリーがあり、シェラネマーレは1部のトップリーグに参戦している。その下には2部のセカンドリーグがあり、1部のトップリーグ入りを目指して、これも激戦が繰り広げられているという。
「負けたら入れ替え戦か……」
龍介は想像するだけでひどい緊張を覚える。
入れ替え戦は経験ないが、観戦はある。あれは、天国と地獄とが同時に混在する、カオスな試合だという印象がある。
やはり、龍介の世界風に言えば、カテゴリーカーストはあって。1部と2部では、リーグの価値は違い、世間の反応も違う。
降格したクラブはまずスポンサーと観客が減る。ということは事業収入が減る。カテゴリーが下がり、価値も下がったという、厳然たる現実を突きつけられる。
カテゴリーなんか関係ない! 今そこにあるサッカーを愛せ!
そう言う人もいるが、やはり勝負の世界と世間は厳しい、という現実がある。
ともあれ、今参戦している1部トップリーグにとどまることは、クラブチームとしてのシェラネマーレの価値を守ることでもあった。
そのために、大魔導士の魔力によって異世界から龍介を召喚するという特例措置が採られたのだ。が、シェラーンも意地を張って、後回しにしてしまったのは否めなかった。
「オレは、役に立てなかった。ごめんよ」
「何を言うの!」
シェラーンは椅子から立ち上がって龍介を見据えた。
「PKをしくじったとはいえ、あなたは慣れないこの世界で健闘したわ。自信を持ちなさい!」
「……」
威厳に圧されて龍介は何も言えなかった。が、同時に心に染み入るものを覚えた。それはどう表現してよいのかわからなかったが、悪くはなかった。
「まったくチャンスがないわけじゃない。最後まであきらめずに、戦い抜くのよ。これはオーナーとしての命令よ、いいわね、最後まで戦い抜きなさい!」
「……はい」
龍介は頷いた。
というとき、
「よいかね」
とやってきたのは、ガルドネだった。肩から鞄を下げている。




