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第六章 マーレの休日 Ⅲ

 ともあれ。

 ドアを開けて、顔を出し、

「すいませーん」

 と言えば、召使いさんが「はいはい、ただいま」とやってくる。深夜に会ったのと別の人だ。


「お食事のご用意ができてますよ。どうぞ」

 案内されれば、ステーキをご馳走になった大広間に案内された。そこにはすでにシェラーンもいた。

「ああ、おはようございます。サンドイッチありがとうございます」

 龍介を見て、シェラーンも微笑み、

「おはよう」

 と朝の挨拶を返す。


「お口にあったかしら? そうそう、そんなにかしこまらなくても、普段通りの言葉遣いでいいわ」

「え、でも。オーナーと選手だし……」

 普通オーナーはかなりの年上で、呼び捨てにしたら大変なことになる。その感覚があるので、オーナーが同い年で、友達のような言葉遣いでいいと言われても、いいのかと戸惑う。


「あなたの緊張がほぐれたらと思っての事よ。そんなにかしこまっていたら、疲れるでしょう」

「う、うん、まあ」

 召使いさんに促されて、シェラーンと向き合うように椅子に座る。テーブルにはすでに食事が置かれている。丸いパンや、ベーコンも一緒に炒めたスクランブルエッグに、野菜サラダ。コップには牛乳が注がれる。


 メニューは簡素だが、盛り付けが丁寧で見た目もよく。起きたての胃袋に優しそうな印象を持てる朝食だった。

「あなたを待っていたわ」

「一緒に食べるつもりだったのかい?」

「そうよ、色々と話したいこともあるしね」

(話したいこと?)

 彼女は何を龍介と話すつもりなんだろうか。ここでの試合やリーグのことなら、コロッセオに向かう馬車の中で説明してもらったが……。


「おさらいよ。少なくとも毎朝こうして話し合いの場を持とうと思ってね」

「なるほど」

 龍介は身が引き締まる思いだった。

「私も貴族としての執務があるからね。朝食の時が一番確実なのよ」

「な、なるほど……」

 貴族としての執務。なかなか大変そうであるが、それを目の前の同じ19の女の子がと思うと、やっぱりシェラーンには威厳を感じるのだった。


 まず、このマーレ王国のサッカーリーグには10クラブが参加し、2回対戦の18試合が行われる。会場は城の隣のコロッセオが第1コロッセオで、他に第2、第3コロッセオ……、とコロッセオが5か所、マーレ市内にある。


 試合は90分。その90分のレギュラータイムが同点で終わると、PKで決着をつける。引き分けなしの、勝つか負けるかしかない。

 勝てば勝ち点が3点与えられる。PKで勝った場合は2点。負ければ、言うまでもなく勝ち点は与えられない。

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