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第六章 マーレの休日 Ⅱ

「何か持ってきますわ」

 そう言うと小走りに部屋を去り、しばらくして盆に乗った食事を持ってきた。

「冷めてますけどね。お嬢さまが作ったとっておきのお料理ですわ。召し上がれ」

 そう言いながら部屋の机の上に置くと、「では」と部屋を去ってゆく。


 薄布がかけられている。とってみれば、陶器の皿にサラダとハムをパンで挟んだ、サンドイッチが3つ乗っていた。

 どれも大きめのサンドイッチで、これなら試合後に食っても十分腹を満たせるだろう。


「ああ、そうそう。お嬢さまは龍介さんのことをとても褒めてましたわよ」

 言い忘れていたのかドア越しに召使いさんが言い。去ってゆく。

 龍介はサンドイッチを手にとって、すぐには食べず、しばらく眺めていた。

 再び腹が「ぐう」と鳴り。我慢せずに食べた。


(うめえ)

 食べながら、味を噛みしめながら、

(こうして世話をしてくれる人がいるって、有り難いなあ……)

 と、しみじみと感じた。


 地域リーグを戦うために知らない街に引っ越して、そこで地元の人やサポーターの世話になったが。おかげで異郷にあって寂しい思いをせずに済んだ。

 それは当たり前のことではなく、”有り難い”ことなんだと、感謝し、痛感するのであった。


 ことに今自分は異世界にいる。訳も分からないうちにそこでサッカーをすることになって。「ままよ」と試合に臨んで、最後で力尽きぶっ倒れる有様だった。

「情けない」

 とも思うが。そこで助けてくれる人がいることが、どれだけありがたいか。


 食べ終わって、ひと息つくと。改めて、と言うかのように、

「ふわあ」

 と、あくびが出て、睡魔が起こり。

 灯りを消し。ベッドで横になって、眠りについた。


 目覚めれば、窓のカーテン越しに陽光が差し込んで部屋はほのかに明るかった。

 朝が来たのだ。

 起き上がって背伸びをして。

 部屋の隅に置かれている服に着替えた。


 さすがにこの世界の服だった。見た目はポロシャツにチノパンぽく、綿製でそれなりにしっかりした作りだ。靴下も靴もあり、靴は革製品で、シンプルながらこれもいい作りだった。


(ポロシャツ……。やっぱり貴族の屋敷だからドレスコードがあるのかな?)

 場所が場所だけに、服は襟付きのものが好まれるのだろう。最初来たときはTシャツにジーパンだったが。やはり、それよりもポロシャツにチノパンといった落ち着いた服装が好まれるのだろう。

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