第五章 セカンドハーフ Ⅹ
観客席ではコアサポーターたちがあれこれと会話に花を咲かせている。
手に何かの紙を持っている。それは龍介の世界で言えばA4サイズで、楔形文字のような文字で何かが書かれている。それはリーグの順位表だった。
シェラネマーレは、一番下の最下位だ。ヴァゼッラは全10クラブ中、真ん中の5位。
クラブ名の前後には、これも楔形文字のような文字だが数字が書かれている。左側は順位の数字で、右側は勝ち点の数字と得失点差の数字だった。
「第二コロッセオで試合してたギュスノーヴ、負けたってよ! 勝ち点差は1のままだ。よかったな!」
突然ピエロが絶叫した。
ピエロなだけに言い方がエラそーだったが、ピエロだからといちいち目くじらも立てない。それよりも、絶叫を聞いてサポーターたちは安堵した。
「今日の試合はいい感じだったし。次の最終節、勝って逆転だ」
「次の相手は……。あ、そうだ、ひとつ上のギュスノーヴだ」
「うちには異世界からいい奴が来たんだ。次は勝てるさ」
「……いや、そうとも限らないな」
楽観的な若いサポーターに、少し年配のサポーターが言う。
「手負いの獣となって、決死の覚悟でぶつかってくる。これも難しい試合になるぞ」
「そうかなあ。いける気もするけどなあ」
「まあ、その時にならないとわからないがな」
サポーターたちは様々な思いを抱きながらも、選手たちの健闘を称えて、コロッセオを後にした。
第五章終わり 次章に続く




