第五章 セカンドハーフ Ⅷ
思わずにっこり笑ってしまった。
「わかりました」
即答した。
他は、ジェザにリョンジェ、リジル、ジョンス。そして龍介。この5人でPKに臨むことになった。
「キッカーはゴール前に来てください」
副審に促されて、5人のキッカーとゴールキーパーのルーオンに、ヴァゼッラの選手たちがゴール前に集まった。
まずはヴァゼッラが先攻、ルーオンがゴール前で身構える。
「PK開始!」
審判は言い。ヴァゼッラの一番手の選手がボールを蹴った。
ボールは勢いよく右サイドを飛び、ゴール右端のネットを揺らした。ルーオンも軌道を読んでいたが、指先わずか届かず。
「くそ」
舌打ちしながらボールを蹴り出す。
PK、ペナルティーキックというだけあって、至近距離から1対1でシュートを打たれるのはゴールキーパーにってまさペナルティーだった。
ザフォロは不敵な笑みを浮かべて「よし」と仲間と手をたたき合う。
「まかせろ」
一番手はディフェンダーのジョンスだった。ぱっと見風紀委員長をしていそうな好青年風の男だが、その目は真剣そのものだった。3失点は守備を司るディフェンダーとして悔しい事、その悔しさをPKにぶつけた。
ボールを蹴る直前、一瞬動きを止めてから、思い切り蹴った。そのフェイント作戦が効いて、相手のゴールキーパーはボールは左方向に飛んだのと反対の右方向に飛んでしまい。得点を許してしまった。
「よっしゃ」
ジョンスはにこやかに龍介たちと手をたたき合った。
それから、順番は周り。4回戦まですべてボールはネットを揺らした。
最後の5番手はザフォロと龍介。まずザフォロが蹴る。
「龍介……」
シェラーンは手を握り合わせて、祈りながら龍介を見つめた。
バジョカ大王とガルドネも真剣なまなざしを送っている。
ザフォロが蹴った。ボールはなんとルーオンの真正面。
「来い!」
身構えてボールを受けた。が、しかし……!
ボールの勢いは思った以上に強く。真正面で受けたにもかかわらず、思わずよろけてしまい。あろうことか、膝が折れてそのまま後ろに尻もちをついてしまった。
ボールは手から弾き飛んで、頭上のネットを揺らした。
大喚声が轟いて。ピエロDJは無邪気に「すげえすげえ」と囃し立て。ヴァゼッラ側の観客、サポーターは立ち上がって5回すべての得点を喜んだ。
「ううー、プレッシャーかかるなあ~」
喉がひりひりし、はらわたが煮えそうな、ひどい緊張感に襲われた。




