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第五章 セカンドハーフ Ⅶ

「……しまった!」

 なんと伸ばした指先をボールはかすめるようにして、ボールはゴールキーパーの頭上を越えてゆくではないか。ということは……。

 ゴールキーパーが着地した時、ボールはゴールの枠の中で落下し、跳ね返ってネットを揺らした。


「うおおおおーーー!!!」


 コロッセオは叫喚した。バジョカ大王も立ち上がり、

「素晴らしい!」

 と拍手し。シェラーンはもろ手を挙げて得点を喜び。ガルドネはうんうんと頷き。龍介は他の選手たちに囲まれてもみくちゃにされる。


「オレ、オレ、やったのか!」

「そうだ、やったんだよこのやろー!」

 リョンジェやジェザたちは大喜びだ。リジルまでもが笑顔だった。ベンチではレガインとドドパたちまでもが立ち上がってもろ手を挙げて大はしゃぎ。

 観客席のサポーターたちも大はしゃぎで。

 シェラネマーレ側はとにもかくにも、歓喜歓喜の大歓喜だった。


 ぴーーー、ぴーーー、ぴーーー。


 という長い笛の音がして、試合の終了が告げられる。

 なんと龍介の最後のワンプレーで同点に追いついたのである。シェラネマーレ側は大歓喜に包まれ、ヴァゼッラ側は憮然としている。

 ヴァゼッラ自身も、大王の御前であるというのにあからさまに悔しがって。それに気づいて慌てて「ご無礼を」と詫びた。


「かまわぬ。それがサッカー、ひいてはスポーツだ」

 と、大王は返した。

 ともあれ、試合は土壇場で同点に追いつくという展開となった。


 同点の場合、龍介の世界ではリーグはそのまま引き分け、トーナメントのカップ戦は延長、それでも決着がつかなかったらPKとなるのだが。

「規則に従い、PK戦を行う」

 と審判は告げ。ピエロDJたちも、

「PKだあー!」

 と囃し立てる。


「延長なしのPKか。全国地域チャンピオンズリーグみたいだなあ」

 地域リーグの強豪が雌雄を決し、JFLへの昇格を掴み取る全国地域チャンピオンズリーグは、同点でレギュラータイムを使い切った場合、延長なしのPKで決着をつける。


 異世界、マーレ王国のサッカーもこれと同じ規則を取り入れている。という話は聞いていたけれど。

(その地域チャンピオンズリーグを、さらにJFL昇格を目指して、オレたち頑張ってたんだよなあ)

 地域リーガー1年生なので地域チャンピオンズリーグにはまだ出たことはないが、できることなら1年で卒業したいものだ。

 ついそんなことを考えてしまったが。


「さあ、誰が蹴る?」

 ベンチの前に集合し、誰がPKに出るのか。選手たちはレガインとドドパから問いかけられる。

「龍介、君には出てもらおう」

 と、ドドパは告げる。その時ふと、特別室のシェラーンの方に顔を向けた。真剣なまなざしを向けて、目が合った。

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