第四章 キックオフ! Ⅴ
コーナーキックの機会を得た。
敵味方ゴール手前に集まり、リョンジェがボールを蹴り上げる。
ボールは弧を描いてゴール前に集まった選手たちめがけて落ちてくる。背の高いギャロンが跳躍し、頭に当ててヘッドシュートを打った。
ボールはゴール手前に落ち、すかさずゴールキーパーが抱きかかえるようにしてボールを捕まえた。
「くそ!」
ギャロンは舌打ちしながら後ろに下がった。他の選手たちも同じように後ろに下がって守備に回る。
「攻撃と守備の切り替えのメリハリをつけろ!」
と、ジェザは前から後ろの選手たちにハッパをかける。
ゴールキーパーは遠くへボールを蹴り上げるかと思いきや、近くにいた左側のディフェンダーにパスしたが。そのディフェンダーは斜め方向に向かって、思いっきりボールを蹴り上げた。
その先には相手のミッドフィルダーの選手が自軍選手を追い越して前に進み出て、それにパスがつながった。
しかもまたフォワードの選手はさらに前に進み出ている。オフサイドにはならない。すでにゴール前に戻っている選手がいてゴールを守ろうと身構えている。
「やばいぞ!」
ルーオンは、シュートが来る! と身構えた。
ボールはミッドフィルダーから丁寧に、芝を滑るようにパスされた。その先に自軍選手もいたがその足先をかすめるようにボールは過ぎて、フォワードにパスはつながり。
フォワードは受け取ると同時に、シュートを放った。
ルーオンは腕を伸ばしてボールを弾き出そうとするが、拳に当たったと思ったボールはその拳の上を滑るように抜けてゆき。
ネットに突き刺すように揺らし、芝に落ちた。
「うおおおー!」
というどよめきがコロッセオを包み込んだ。ヴァゼッラは得意げに「よし!」と叫び。シェラーンは頭を抱えた。
ヴァゼッラの選手たちは得点の喜びをあらわにして、互いに抱き合ったりしている。
コーナーキックからシュートまであっという間で、気が付けば相手に点を取られた、という感じだった。
「やられた、前に出されていたんだ」
相手選手が前に出た間隙を突いて相手ゴールに迫ることをカウンターというが、そのカウンターを決められてしまった。
そこで、
ぴーーーー!
という長い笛の音が鳴る。
前半終了の合図だ。
龍介をはじめシェラネマーレの選手たちは茫然として、ピッチを後にして奥に引っ込んでゆく。観客席のシェラネマーレを応援するサポーターたちから、
「BOO、BOO!」
というブーイングが聞こえ。それまでオレの世界から取り入れているのかと、ちょっと呆れた気分になった。
第四章終わり 次章に続く




