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第四章 キックオフ! Ⅳ

「すごい!」

 シェラーンも手を叩いて大喜びだった。異世界から来た新人は、初試合で初得点を決めたのだ。

(ふん! 大魔導士にすがっただけはあるわけだな)

 ヴァゼッラはしかめっ面でピッチを眺めている。


 弱いクラブチームは特例として、大魔導士の慈悲にすがり異世界よりいい選手を補強できる。

(昔別のところにいた……。マール、マール、ネ、ネイ……。ああ、名前を思い出せん。そいつも凄い奴だったが)

 ともあれ、先制されても同点に追いつく展開に、コロッセオは沸いた。スタジアムDJピエロも唾を飛ばしてまくしたてる。


「いい感じだ。ここから逆転するぞ!」

 再開までの間、ピッチ脇の置かれた瓶のドリンクで喉を潤し水分を補給する。

 ジェザは仲間たちにハッパをかけて、自身の頬を叩いて気合を注入する。

 以後、勢いづいたシェラネマーレだが。ヴァゼッラもそう簡単にやられるわけにはいかない、今度は堅い守備を見せて龍介たちの前身を阻む。


 監督のレガインとヘッドコーチのドドパはベンチで黙って試合を見ていたが、レガインは立ち上がりピッチに向かって何やら叫んでいる。

 選手たちに支持をしているようだ。が、コロッセオの喚声大きく、なかなかに聞こえづらい。


 それでも近くにいた選手、一番後ろの列の左側、ウォーラには聞こえて。他の選手に監督の言葉を伝える。

「ボールを持たされるな!」

 という言葉が伝言ゲームのように選手たちに伝えられていったものの、その言葉の意味を咄嗟には測りかねた。


(ボールを持たされるな?)

 龍介にも聞こえた。そこから、はっとしたことがあった。リョンジェも気付いたようだ。

「陽動作戦に乗せられるなー!」

 点を取り返されたことでヴァゼッラの選手たちは用心深くなったと同時に、相手の様子をしばらく見るようになったようだ。


「いい感じで前に出ても、いいところで取り返されちまうな」

 ジェザも忸怩たる気持ちをもってつぶやく。

「攻めろ! 遠くからでもシュートを打てー!」

 レガインは叫んだ。


 こまかにパスをつなぎながら前進し、相手のペナルティエリア近くで龍介にボールが回ってきた。だがそのころにはゴール前はしっかり守られている。だが躊躇なくシュートを放った。


 ボールは勢いをつけて相手選手の間をすり抜けゴールに迫ったが、相手ゴールキーパーに拳で弾かれてしまい、ゴールの上を飛び越しそのままラインの外に出た。

 相手が触って、ゴールラインの外に出た。審判が右ラインの角、三角の旗のポールを旗で刺した。

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