第四章 キックオフ! Ⅱ
「来い!」
金髪碧眼の黄色のユニフォームのゴールキーパー、ルーオンは身構える。オフサイドを告げる笛はない。打ち放たれたシュートはディフェンダーの足の間を縫うように飛び。
ルーオンは跳躍して腕を伸ばし、ボールを捕らえようとするが。分厚い手袋の指先をかすめるようにボールは飛んでゆき。
ネットを揺らした。
ひときわ高い喚声が轟いた。
ルーオンは悔しまぎれにボールを蹴り飛ばし。シュートを決めた相手選手は腕を上げて仲間たちと得点を喜ぶ。
龍介のもとにボールが転がり、センターに置いた。
「よし、よくやった」
ヴァゼッラは得意そうな顔をし頷き、シェラーンに笑顔を向けた。
「なんの、まだこれからですわ」
「私が誇る選手たちに、かの異世界のフォワードはどこまで立ち向かえるであろう。興味を持って見ておりますよ」
シェラーンは真剣なまなざしのままヴァゼッラに頷きを返し、ピッチに目を向けた。
試合は再開される。観客席のピエロDJは、
「さあーヴァゼッラが1点取って、追加点を取るか、それとも取り返されるか。こいつは楽しみだあー」
と、まくしたてるように言い。観客たちもやんやの喝采を送り試合を楽しんでいる。
が、特にシェラネマーレを応援している者たちは必死に声を出して声援を送っていた。
「なんの、まだ1点だ」
「2点、取って取れないことはないだろう!」
10人の選手たちは、押したり押されたりの一進一退。ゴールキーパーが大声を出してフィールドプレイヤーにどうするべきか声をかけるコーチングをする。
一番後ろにいるキーパーは試合展開を読めやすい位置にあり、その声は時として神の声とも言われる。
「寄せが甘い、またやられるぞ!」
ルーオンは大きな声を選手たちにぶつける。
一進一退気味だったのが、徐々に押されている。リョンジェをはじめとするディフェンダーも防いでいるが、どうにかボールを奪取してもパスがうまくつながらず、前に出ようとしてもセンターラインのあたりで獲られて押される場面が多くなってきた。
リョンジェと反対側、最後列の一番左についているウォーラという選手が相手の圧力を避けるために、やむなくバックパスを出してボールをルーオンにつなげた。
ボールを抱えたルーオンは、鋭い目つきでピッチを睨んだ。
「ヴァゼッラの連中はからみつくようにオレたちの進路をふさぐな。生半可なことじゃシュートも打てねえ」
相手は最前線のラインを上げて圧力をかけてくる。その圧力をかわして前に出なければいけない。




