第二章 クラブチーム・シェラネマーレ Ⅷ
「おい、やってみろ!」
一緒にフォワード張っているジェザは何を思ったかパスされたボールを龍介にパスするため蹴り上げた。
短いパスで相手を翻弄しながら前に進み出てゴール目前まで迫ったが、そこで長めの横パスでボールを龍介に託したのだ。
龍介は必死になってボールを受けようとしたが、相手が黙っているわけもない。しかも皆龍介より大柄なのだ。力や高さで競えば勝てない。
ボールが落下してきて、それを相手が跳躍し頭で受けようとするが。龍介は無理に飛ばなかった。
ボールは相手の頭に当たって味方にパスされようとしたが、そのパスの軌道上に、いつの間にか龍介が駆け込んで胸で受けた、落下させた。
ボールは地面に落ちる寸前で、左足で強く蹴られた。シュートだ。
相手選手の間をすり抜けるように飛び、ゴールに迫ったが。キーパーが上手く右拳で弾き飛ばした。
「くそ!」
いけると思ったが、いけなくて龍介は歯噛みした。
拳でパンチングされたボールは滑るように転がったが、その先にいつの間にかジェザがいて、強烈な右足のシュートを見舞った。
キーパーも体勢を立て直して腕を伸ばすが、その指先をかすめるようにボールは飛んでゆき。ネットを揺らした。
「そこまで!」
監督のレガインがミニゲームを止めた。
シェラーンお嬢様は、
「へえ」
と、少しは感心したように頷いた。
集まった選手に、レガインが今夜の試合でどのような展開をするかや、課題などを話し。
「それでは、今日の練習は終わる。解散! また定刻に来るように!」
という号令で、選手たちは引き上げてゆく。
リョンジェは愛想よく龍介のそばにいてくれるが、ジェザや他の選手はやや厳しいまなざしで距離を置いていた。
「いい感じだったじゃないか、この調子で行けば点取れるかもしれないぜ」
「そうだね。がんばるよ」
龍介は何か胸につっかえるものを覚えつつも、当たり障りのない返事をし。
魔法の力によってシャワーも完備されているのでシャワーを浴び。それから控室で着替えて。リョンジェに「またあとで」と挨拶し、ガルドネに付き添われてコロッセオの外に出たら。
黒い屋根付きの豪華な馬車があり。その窓からシェラーンお嬢様が顔を出した。
「今夜の試合まで、私の屋敷で過ごすといいわ」
などと言い。
「ええ?」
これには龍介は面食らった。彼女は何を考えているのだろう。
「シェラーンお嬢様、気まぐれで選手をおもちゃにされては困ります」
「変なことを言わないで! クラブチームのオーナーとして新加入選手を歓迎し、激励をしたいのよ」
「ええ!?」
今このお嬢様は何と言った? クラブチームのオーナーだって!?