第二章 クラブチーム・シェラネマーレ Ⅳ
「よろしくお願いします」
言いながら相手の目を見れば、鋭く、おいそれと仲良くしてもらえなさそうだと思ったが。
案の定、
「どのくらいの技術があるのか。役に立たなかったら叩き出すぞ」
と言う選手がいて、レガインが「やめんか」と諫める。
それに加えてリョンジェも、「まあまあ」となだめる。
(この人いい人だあ~)
「今晩ここで試合がある。それに備えて練習をしているのだが、君にも加わってもらおう」
ドドパが言い、例によってガルドネに案内されて選手控室に行く。そこは石造りながらもよくできていて、長椅子に机もあり、机にはバナナやリンゴなどの果物が置かれている。その机の横に大きな水瓶があり水が満々と湛えられているところがやはり昔っぽい。
棚が並べられて。そこに丁寧にたたまれた水色のユニフォームも置かれて、これが君のだと指を差される。
胸には楔形文字らしいものがプリントされていて、左胸には翼竜、フライングドラゴンの紋章。
「これは我が世界の文字でシェラネマーレと書かれている。左胸の紋章はクラブオーナー一族の紋章だ」
とガルドネは話してくれた。
背番号は7番だった。
「7番……。そこまで知ってたんですか」
「馴染みのある数字がよいじゃろう」
龍介が7を使っているのは、ラッキーセブンにひっかけた験担ぎだった。
(しかしよくできているなあ)
着替えてみれば、自分の世界のと違和感はない。
「魔法はいいであろう」
珍しくガルドネが冗談めかして言い、龍介も「そうっすね」と愛想よく応える。
ユニフォームを着てピッチに来れば、
「とりあえず蹴ってみろ」
と、ボールを渡される。
ピッチに足を踏み入れれば、思いのほかフカフカで。ボールを置いて軽くドリブルをすれば、転がりもいい。
よく手入れされた芝で、プレーもしやすそうだ。
「ほんとに異世界かよ」
言いながらも、嬉しそうだった。
やっぱり龍介はサッカーが好きだった。異世界にいる不安も、こうしてボールを蹴ることで和らいでゆく。
気が付けばリョンジェが横について、同じようにドリブルをしながら並走する。
「この世界どう?」
「どうって言われても、まだ来たばかりだから」
「馴染めばいいところだと思うよ。ガルドネのじいさんしか話し相手がいないと、つまんないだろ。なんかあったらオレにも相談していいぜ」
「じいさんとはなんだ!」
「いけね」
聞こえたようだ。リョンジェはいたずらっぽく笑ってごまかす。
「ああ、ありがとう」
気のいい青年だった。龍介は「ありがとう」と頷いて、思いのままにドリブルをする。