第二章 クラブチーム・シェラネマーレ Ⅱ
いい雰囲気だった。
「バジョカ大王は身分による分け隔てをなくそうとつとめられている」
「はあ」
言われてみれば、昔は厳しい身分制度があり、一緒に食事をとるなど考えられなかった。が、この世界は昔の中世っぽいのに、先進的なところがある。おかげで龍介も過ごしやすい。
「うん、けっこう美味しいな」
ソーセージを口に運んで舌鼓を打つ。
そんな時に「ここにおられましたか」と小姓の少年が来たと思えば、
「お食事後、コロッセオにと」
「あいわかった」
小姓はうやうやしく一礼するとその場を辞した。
「携帯電話とかないんですか?」
「そうじゃのう、お前さんの世界のものすべてを再現できるわけではないのだ」
「はあ……」
魔法も万能ではないということか。自分のスマホは圏外表示になり、ついに充電も切れてしまって使い物にならない。
「だが、悪いようにはせぬ。大王の言われる通り、サッカーに励んでくれまいか」
「はい……」
気は進まないが、他に頼る先はなく。ガルドネの言うとおりにするしかなかった。
朝食を終えて、ガルドネに案内されて城を出て、コロッセオに行った。
朝日が都市マーレを照らし出す。
城と隣接するようにコロッセオはあり、少し歩けば門番の兵士が、
「どうぞ」
とうやうやしく一礼をして中に入れてくれる。
(この人すごく偉いんだ)
この世界や人の事を知らないために実感はなかなか湧かないが、ガルドネは相当偉い立場ということに薄々気づいてきた。そういえば大魔導士なんだっけ。
石造りのごつい感じのコロッセオの中はやはり石々してごつい感じだった。そこに屈強な兵士が立って警備の任に着いているのだから、よけいにごつい感じが増す。
「ここで、剣闘士が戦うんですか」
「そうだ。しかし、剣は刃びきのもので、命のやり取りはもうせぬ」
「そ、そっすか」
「それに今は剣闘士と並びスポーツも人気がある」
「はあ」
ものの考えはほんとうによく進んでいるようだった。そこから、異世界からスポーツを取り入れるようになったわけか。
やがて緑眩しいピッチが見えて。そこではユニフォーム姿のサッカー選手たちがボールを蹴り、監督やコーチの指導のもと練習に励んでいた。
龍介はそれを見て安堵するよりも突き刺すような緊張を覚えた。