第十四章 そして運命は決した……! XV
それから、誰が始めたのか、拍手が鳴りだし。広がってゆく。
失意を禁じ得ないミシェロだったが。
「また来季頑張ろう!」
そうファセーラのサポーターたちが言うのが聞こえて、救われた気持ちになり。来季への決意を新たにするのであった。
試合は緊張感も高かった。しかし終わってみれば、激しい川の上流のような急流から広く穏やかな下流に至ったような不思議な感覚に襲われていた。
バジョカ大王の御言葉のあと、ガルドネが進み出る。
「龍介君」
「はい!」
龍介は改まって背筋を伸ばした。
「君はよく戦った。この経験を糧に、元の世界でも頑張りなさい」
「……え?」
と言うことは、つまり。
「君は使命を果たしたのだ。元の世界に帰してあげようと言うのだ」
「は、はい」
帰れる。元の世界に帰れるのだ。
突然召喚されて、戸惑いながらもこの異世界でのサッカーの試合に出て。シェラーンがオーナーをつとめるシェラネマーレ残留のために戦ったのだ。
横一列に並んでいた選手だったが、リョンジェをはじめとして、次々と龍介に握手を求めてくる。
「残念だなあ。なんならずっといてもいいのに」
「ああ、それ言われるとつらいけど。やっぱり帰ってやることがあるんで……」
ダライオスたちファセーラの選手も龍介と握手する。
「君の突破は見事だった」
「うん、まあ、でも大変だったよ。君たちも強かったから」
「……そうか。敗れたのは悔しいが、大好きなサッカーで全力を懸けられるというのは、幸せなことだな」
ダライオスは凛々しくもそう言う。その言葉にうなずき、龍介も同じ思いだった。
「……」
杖を両手で持ち、何やら呪文らしきものを唱えているガルドネ。
「あ、シェラーン!」
いつの間にかシェラーンもそばに来て、龍介に握手を求めた。
「龍介、私たちの事、忘れないでね」
「う、うん」
凛々しい男装の美少女オーナーは輝く瞳を涙で潤ませて、龍介を見つめていた。
足元が光ったと思えば。なんと小さな魔法陣が龍介の足元にできているではないか。
「元の世界でも頑張ってね……」
シェラーンは別れを惜しみながら、ゆっくりと離れてゆく。離れながら。
(龍介の世界って、どんなところなんだろう。行ってみたいな)
という、好奇心がむくむくと湧き起こって。あとでガルドネに相談してみようとか考えていた。
この章終わり エピローグに続く