第十四章 そして運命は決した……! XIV
シェラーンのもとにも警備兵が来て、すぐにバジョカ大王のもとへゆくよううながされて。
「それじゃあね」
とテンシャンとローセスと手を振り合って、ゴール裏観客席を離れようとする。
その時、
「ファセーラ―!」
と、シェラネマーレのサポーターたちは相手クラブの名を叫んだ。それに呼応して、
「シェラーネマーレー!」
と、向こうからもこちらの名を叫ぶ声が届いた。
(コール交換……)
互いの健闘を讃え合って、互いのクラブ名を呼び合っているのだ。落ち込んでいたファセーラのサポーターたちも、結果を潔く受け入れ、コール交換に応じ。
数度、互いの名をコールし合って。シェラーンも足を止めて、コールした。
龍介といえば、今自分がここにいるのが信じられない思いだった。
必死だった。ただただ必死だった。
試合が終わるとともに、歓喜を爆発させるよりも、魂が抜けたように、ぼーっと突っ立てしまい。
リョンジェから、
「おい」
と肩をたたかれて、そこでようやく魂が戻ったような感じだった。
「ほんとに無我夢中だったんだな」
「う、うん。なんか夢みたい」
「夢じゃねーよ」
「列に並んでください」
審判にうながされて選手たちはベンチ前に集まり、審判を挟んで横一列に並んだ。
ベンチのカージェンたちは笑顔で目を潤ませていた。
バジョカ大王はミシェロとシェラーンをともないピッチに降りて。選手たちと相対する。
大王の御前ということで選手たちは跪こうとして。龍介はそれに驚き慌てて続こうとするが。
「よい。健闘した選手たちを跪かせたとあっては、むしろ名折れになる」
と、立つよううながし。皆背筋を伸ばした。
相変わらずの威厳に龍介は緊張したが。シェラーンを見て、思わず笑顔になり。シェラーンも龍介を見て笑顔になったが。バジョカ大王のおそばということで、すぐに引き締まった顔に戻った。
いつの間にかガルドネも大王の少し後ろに控えていた。
「双方よく戦った。勝利の喜び、敗北の失意。それぞれ思うところもあるであろう。いずれにせよ最後まで戦い抜いたことは、人生の財産となる。この試合で戦えたことを、誇りに思うがよい」
「ありがとうございます!」
選手たちは一礼をし、大王に感謝の意を伝えた。
(勝ったんだ、オレたち勝ったんだ……!)
バジョカ大王を前にし。コロッセオもこの時ばかりは厳粛な雰囲気の静寂に包まれて。その中に身を置いて、龍介は勝ったという実感を感じ始めていた。