第十四章 そして運命は決した……! XIII
ダライオスも疲労困憊で動きが鈍っているのは否めないが、それでも最後まで戦い切ろうと駆け抜けようとする。
「いかんッ!」
ゴールはゴールキーパー不在でがら空きだ。
フォザンは急いで戻ろうとするが。龍介はセンターラインを越えたところで、左足で思いっきりボールを蹴り上げた。
ボールは高く飛んで、無人のゴールに迫り。手前で落ちて、そこから跳ね返って、右のバーに当たって、あさっての方向へ跳ね返って落ちて、ころころと転がってゆく。
それをフォザンやダライオスたちは必死の思いで取りにゆくが。
ぴー、ぴーー、ぴーーー。
という長い笛の音がして、
「やめッ!」
と、審判は試合の終了を告げた。
「わあああああーーーーーー!!!」
という、歓喜と失意の双方の気持ちがこもった絶叫がコロッセオを包み込んで揺らした。
終わった、終わったのだ。
入れ替え戦は終わった。
1対0、シェラネマーレは勝利し残留を決めたのだ。
ファセーラの選手たちはがっくりと膝を折って崩れ落ち。
コバクスとニッケはもちろん、あの怜悧なダライオスですら人目もはばからずに泣いていた。
その肩にシェラネマーレの選手たちは優しく触れる。
言葉はなかった。今の彼らには言葉は意味がなかった。
この激闘の末に、運命が決したということだけがあった。
ドラグンとアルカドは、レガインとドドパと握手をかわす。
「まだまだ力不足でした」
「いやいや。薄氷を踏む思いだったよ」
互いに健闘を讃え合って笑みをかわした。
「やったあーやったよおー!」
「勝ったんだ、残留したんだ!」
「よかった、よかった!」
テンシャンとローセス、シェラーンは抱き合って勝利の喜びを爆発させていた。
大旗は上下して揺らめき。サポーターたちはもろ手を挙げて、歓喜した。
それに対するファセーラ側は、
「負けたの……」
「あと一歩、あと一歩のところで……」
と、試合終了の笛の音と同時に選手たちが崩れ落ちるのとともに、立っていた者はベンチに崩れ落ち、天を仰ぐ者、手で顔を覆い涙する者と様々に敗北の失意に襲われるのを禁じ得なかった。
「ゆくか」
バジョカ大王は試合が終了すると頷き、魂が消えかけるのをどうにか堪えるミシェロとともに貴賓室を出た。
試合後のセレモニーで選手たちの健闘を讃えるのだ。