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第一章 異世界に呼ばれて Ⅹ

 隊列は城の前の広場にて集合し、横数十列、整然と隊列を組んで止まった。

 龍介の馬車は隊列の中に入らず、騎乗のバジョカ大王とともに、開け放たれた城の扉をくぐり抜けてゆく。


 日も暮れて暗いが、魔法によって灯された光が闇を払い、視界をクリアにしてくれる。

「どうぞ」

 馬車の駐車場としたところで停まり、降りて城内を案内される。バジョカ大王は馬を小姓に預けて、さっさと行ってしまった。


(すげえなあ……)

 何かにつけていちいち驚く自分に呆れつつも、どうにも驚かされるから仕方ない。城内の石造りの廊下、ところどころに掛けられた魔法の光の燭台。すれ違う人々の貴族然とした豪華さに優雅さ。何もかもに驚かされる。


 やがて、物々しい護衛の兵士、親衛隊が控える、広い王の間に至った。

 石のブロックの床の上に、扉から王座までの中央を走るように赤いカーペットが敷かれている。高い天井には豪奢なシャンデリアが、魔法の力によって煌々と光っている。


 臣下の貴族たちや魔導士がカーペットを挟むように並んで、一段高いところで、いつの間にか王座に腰掛けるバジョカ大王がいた。

 ガルドネの導きで王座のバジョカ大王の前までゆくと、

「紹介しよう、サッカー選手の源田龍介君だ」

「我々はあなたを歓迎いたします」

 Tシャツにジーパン姿で立ちすくむ龍介に、豪奢な服装の貴族や、地味なマントフード姿ながら威厳ある魔導士たちがうやうやしく一礼をして。


 龍介も思わず、

「ありがとうございます」

 と、ぺこりと礼を返した。


「彼の面倒は主に大魔導士のガルドネが見るが、仲良くしてやってくれよ」

「かしこまりました。ご活躍を期待しています」

「は、はい」

「早速明日の試合に出てもらう。部屋を用意してあるので、そこでゆっくり休んで明日に備えてくれ」

「え、明日からですか」


 思わず素っ頓狂な声を上げてしまったが、バジョカ大王は平然と、

「そうだ、そのために召喚したのだ」

 と、言い放った。


(なんて無茶ぶり)

 だが逆らうことのできない威厳を禁じえず、「わかりました」と見えない力によって返事をさせられてしまった。

「ではガルドネ、案内してやってくれ」

「わかりました。……来なさい」

 うやうやしく一礼をして王の間を辞して廊下を歩く、


「心配するな、召喚されたのはお前だけではない」

「他にもいると?」 

「そうだ。昔、野球で召喚した者は、ロー、ロー……、チロー……。名はなんといったか忘れたが、今はアメリカで活躍している」

「え?」


「他に、みう、みう……、カ、ズ……。うむ、年のせいか名前をまた忘れてしまったが……、お前と同じサッカーの選手で、ダンスも踊る男じゃった。50を過ぎても現役を続けておるのは予想外じゃった。あれはよい選手じゃった」

「はあーマジかよ!」

 予想外のことを話されて言葉もない。突っ込む気も起きない。


第一章終わり 次章に続く

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