第十四章 そして運命は決した……! Ⅹ
「あと一押し、もうすぐだよ!」
ファセーラのサポーターたちも、目の前の夢に向かって絶叫のような声援を送っていた。
ファセーラの選手たちも龍介を警戒しマークするのだが、それは自身も承知済みで、むしろそれを利用しておとりになり、相手を寄せ付けてジェザやリジルにロングパスを放つこともあった。
「勝つんだ、勝つんだあーー!!」
龍介の心は勝利の一点に染め上げられていた。それは両クラブの選手すべてがそうではあった。
突然召喚された異世界でよくしてもらった恩返しもあるが。この熱狂的な雰囲気と多くの人々の悲願渦巻くコロッセオの雰囲気に押しつぶされることなく、むしろ無意識に一体化してある種のトランス状態になって、貪欲に勝利を獲ろうとする気持ちが芽生えてきた。
「……ふふ、目覚めおったか」
いつの間にか魔法で空を飛び、上空からコロッセオを見下ろしているガルドネは、龍介の変化を見て微笑んで頷いた。
時間は刻々と過ぎてゆく。時計は後半40分を過ぎたことを伝える。
シェラネマーレのゴールまでファセーラの選手が迫り、ゴール手前の攻防戦が繰り広げられる。
ダライオスからニッケにパスされた、そこから強烈なシュートが放たれたが。ルーオンがセーブ、するまでもなく、リョンジェがゴール手前に飛び出してボールを弾き返した。
それは大きな弧を描いて遠くへ飛んて、センターの龍介目掛けて落ちてゆく。
「狙ったわけじゃないが、なんかいい感じで飛んだな!」
ファセーラは前掛かりになっており、龍介にはひとりしか着いていなかった。それと競り合い、肩で押し合いながらも龍介がボールを左足で受け止め、ドリブルで駆けるが。
その前に立ちはだかるのは、ダライオス。ニッケにパスしたあと、すぐ戻れるよう身構えていたようだ。
「う、いつの間に……!」
ダライオスとのマッチアップ、一対一の対決。龍介は右に行くと見せかけ左から抜けようとする。が、容赦なく右足が伸びてくる。
左足でなんとかかばい、近くにいたリジルにパスを出し、幸いつながった。ダライオスは龍介から離れボールを追いリジルに迫り。
龍介は前に向かい駆けた。
リジルはパスされてすぐに龍介にボールを浮かすようなパスで返し、それはダライオスの頭上を超えて上手く繋がって、左足で受けドリブルで駆けた。
その間にシェラネマーレの選手たちも前に進み出て、左右に展開しファセーラを包囲するようにゴールを見据えた。
龍介は駆けた、ドリブルで駆けた。相手選手が迫る。
「なんのおー!」
右に左に相手をかわし、ペナルティエリアに迫り。目の前にはゴールと、それを死守するフォザン。オフサイドはない。至近距離での一対一、龍介は狙いを定めてシュートを放った。