第十四章 そして運命は決した……! Ⅷ
そこに警備兵数名が駆けつける。
「静かにせよ。場外で大声を出すことは禁じられている」
言われてサポーターたちはしぶしぶながらも、静かになった。
「それでよい。……君たちの悔い改めた気持ちは、中に伝えておこう」
「あ、ありがとうございます!」
サポーターたちは礼を言い。
警備兵がひとり中へ駆けてゆき、ゴール裏観客席の熱狂するサポーター群の中に分け入って、場外のサポーターが改心した旨、シェラーンに伝えられた。
「そう……」
シェラーンは何か言ったようで、警備兵は「わかりました」と一礼して立ち去ってゆく。
しばらくして、
「あ、お前は!」
という声がする。あのサポーターたちだった。改心したということで、コロッセオに入ることが許されたのだった。
「迷惑をかけて申し訳なかった」
彼らは前に出ずせり上がっている観客席の最上段で静かに試合を観戦すると言い、そしてその通り、暴れることなくおとなしかった。
「本当に改心したんだ。よかった」
不心得者が改心し、その通りの振る舞いを見せて。シェラーンはその様子を見て、笑顔で頷いた。テンシャンとローセスも、よかったと同じように笑顔で頷いた。
その間にも両クラブは激しい攻防戦を繰り広げて。ボールはあっちへこっちへ行ったり来たり。ゴールに入りそうで入らず、ゴールキーパーが弾き返したり、バーやポールに当たってあらぬ方角へ弾き返されたり。
点は入りそうでなかなか入らない。
「入れ替え戦だから次はないぞ、しっかり頼むぞおー!」
と叫ぶシェラネマーレのサポーター。
「ここで勝って、夢をかなえよう!」
と叫ぶファセーラのサポーター。
それらサポーターの気持ちを乗せてピッチ上で戦う選手たち。
「すごい熱気だ」
ミシェロはバジョカ大王とともに貴賓室にありながらも、試合での攻防戦はもとより、両サポーターの熱意溢れる応援に圧倒されているようだった。
(もし勝って昇格したら、来季はあなたたちの気持ちを大事に預かって闘います)
などと、そんなことを考えた。
最下位に沈み入れ替え戦を戦うことになったとはいえ、捨て鉢にならず必死に戦うこの者たちを、誰にも責める資格はない。
「昇格を目指して戦っていたのが、異世界で残留のために戦うなんて。おかしいなあ」
ふと、そんなことを龍介は一瞬考えた。
試合はまさに一進一退。
硬直状態で大きな動きはないように思えた。しかし、後半も時間が半分を過ぎて、選手たちに疲労の色が見え始める。