第十四章 そして運命は決した……! Ⅶ
その前に相手ディフェンダーが立ちはだかっている。
「いけえー!」
龍介は左足で渾身のシュートを放った。
シュートの勢い強く、相手ディフェンダーは思わずよけてしまったほどだ。ボールはまっすぐ飛んでいたかに見えたが、途中でフォザンを避けるように左方向に進路を変えた。
が、フォザンは、
「なんのッ!」
と叫んで跳躍して腕を伸ばして。
両掌でボールを弾き返した。
弾き返されたボールはディフェンダーが回収したが、ジェザが咄嗟に立ちはだかる。それを避けて他の仲間にパスを回す。それをトゥーシェンが追いかける。そこから、ダライオスにパスが放たれる。
そこにはリョンジェがついて足を伸ばしてボールを奪おうとするが、素早さはダライオスが勝り、すんでの差でボールを奪われてしまった。
「ああー、ボールをダライオスに渡しちゃダメー!」
「競り合いになったら必ずダライオスが勝つね、なんてすごい選手なの!」
テンシャンとローセスは手に汗握るとばかりに拳を握りしめてゴール手前の攻防戦を眺めていた。
シェラーンは無言ながら目つきも鋭く試合を観戦していた。
「くそお、なんてすばしっこい!」
マークをしているのだが、それでもボールを奪われてしまう。
シェラネマーレの選手数名が一気に寄り集まって、包囲する。
だが一瞬の隙間を突いて、ボールを足と足の間を縫うように転がして、味方へのパスに成功する。
その鮮やかなボールさばきに、コロッセオが沸いた。
その沸く様を外から眺める目が合った。
シェラーンによって叩き出されたサポーターたちだった。彼らは警備兵が厳重に警備するコロッセオの外壁を眺めながら、地団駄を踏んでいた。
「なんでオレらがこんな思いをしなきゃいけないんだ!」
と苦々しく思っていたが。熱狂のどよめきを聞くたびに、何か心を打たれるのを禁じ得なかった。
「オレは間違っていた!」
サポーターがひとりやるせない気持ちを吐き出す。
「興奮に飲まれて我を失い、醜態をさらした己が恥ずかしい! 今までの行いを悔い改めて、また戻りたい」
外壁を眺める目には涙が浮かんでいた。
「だけど入れないのに」
と言う者があったが。
「だからなんだ。シェラネマーレを応援する気持ちに変わりはない。こうなったのは自業自得! それを受け入れて、外からでも応援するんだ!」
「シェラーネマーレー!」
声を張り上げて、中に届けとばかりに声援を送る。他の者はぽかーんとしてしまったが、しばらくして、
「シェラーネマーレー!」
と一緒に声援を送るようになっていた。