第十四章 そして運命は決した……! Ⅵ
龍介はセンターラインで、その攻防戦を眺めるしかなかった。
守備に加わらず攻撃に専念し、センターから下がるな、とレガインに指示、いや命令された。
リョンジェがダライオスのマークに専念したように、龍介には攻撃に専念してもらうというのだ。
「でも、ボールが来なけりゃ意味がないよ」
ダライオスはさるもの。味方をひっかきまわし、しっかりボールを奪い、そのままシュートを打ち放った。
「くそお!」
ルーオン必死の防御で拳でボールを弾き返すが、そのまま後ろへ飛んでネットの上から滑り落ちた。
コーナーキックだ。
ボールは右端のコーナーに置かれた。さすがにこれは行かなきゃと龍介も駆けようとするが、
「そのままセンターにいろ!」
とレガインの一喝が飛んだ。
「え、でも」
戸惑う。相手のディフェンダーもゴール手前に駆けつける。
それでも、ダライオスはボールを蹴るから、ゴール手前は9人対9人だ。
(だけどいいんだろうか)
ごくりと固唾を飲んで見守る。
「思い切ったことをするわね……」
シェラーンたちも固唾を飲んで見守る。
ダライオスがボールを蹴り上げた。
ボールはゴール手前で密集する選手たち目掛けて飛び、選手たちはボールを奪い合おうと押し合い圧し合いし。
コバクスとニッケにリョンジェにギャロンらが跳躍する。
ボールはギャロンの頭に触れた。
リョンジェはコバクスを、ジョンスはニッケをマークし、跳躍を妨げたのだ。それは功を奏し、ギャロンが頭でボールを弾いた。
ボールは少し離れたジェザの足元に落ち、すかさず回収してドリブルで駆けた。それを見て龍介も駆けた。
ファセーラのディフェンダーの選手たちはいち早く急いで自陣に戻ろうと駆けたので、龍介と並走するかたちとなった。
ジェザは龍介がまだ取り囲まれていないのを見て、パスを放った。
ボールは弧を描いて龍介目掛けて落ちて、右足で受け止めて、そのままドリブルで駆けた。
「むう、やるではないか」
ドラグンは呻くようにつぶやく。
シェラネマーレは全員が守備につかず、割り切って、跳躍組以外はすぐにゴールから離れて、素早く相手陣に飛び込めるように身構えていたようだった。
その甲斐あって、ジェザがセンターラインを越えると同時にミッドフィルダーの選手も一緒に越えてどころかジェザを追い越し。
翼を広げるように左右に展開してファセーラのゴールに襲い掛かった。その頃には龍介はペナルティエリア手前まで駆けていた。