第十四章 そして運命は決した……! Ⅴ
二十歳そこそこで龍介とそう変わらない。才能あふれる若手である。
1部トップリーグのクラブは常に良い選手を探し求めているから、ダライオスを見つけて引っ張り上げていてもおかしくなさそうだが。
「ファセーラに来てから才能が開花して、2部優勝の原動力になったのでしょうね」
選手の才能はいつどこで開花するかわからない。1部のクラブが見つけ損ねた才能を下部クラブが見つけて育てることも、サッカー、ひいてはスポーツの世界ではよくあることだった。
2部のクラブは1部に比べて体制面で引けを取る。ドラグンとアルカドは現状を受け入れながら、選手の育成に全力を注いでその持てる才能が開花するようにつとめたことは、想像に難くない。
オーナーのミシェロの、選手たちを見る目も、鋭くも暖かみがあった。
シェラネマーレのディフェンダー陣も急ぎ引き返してゴールを守ろうとする。幸いボールの動きを見て素早く判断して引き返したので、コバクスやニッケと対峙し身構えることはできた。
ボールは右フォワードのニッケにパスされたが、また他の選手にパスされる。コバクスは相手ディフェンダーの中に紛れ込むようにゴール手前に位置する。
その間にダライオスも駆けつけた。ザンジャたちミッドフィルダーの選手も戻った。
「前半よりいい動きをしているな」
ドラグンはひとりごちた。前半で後れを取り気味だった反省からだろう。
「ん?」
見れば、センターラインにあの異世界人選手が残っているではないか。もうひとりのフォワードは守備に加わって、こちらとボールを巡って駆け回っているというのに。
「攻撃専門に切り替えたんでしょう。なかなか思い切ったことをしますね」
アルカドはそう言い、ドラグンは頷いた。
(みんな、頼みます!)
龍介はセンターライン付近で相手ディフェンダーと並んで、ゴール手前の攻防戦を眺めて。いつボールが来てもよいように身構えていた。
ボールはふわりと浮かせるような蹴りでゴール手前まで来たコバクスにパスされようとしたが、リョンジェはコバクスと並んで跳躍し。どうにか相手に勝って頭でボールを弾き返した。
その先にジョンスがいるが、すかさずダライオスが飛び込む。そこにサニョンが張り付き、ボールの奪い合いを演じる。
リョンジェとコバクスが着地した時には、ジョンスが胸で受け、そのまま回転して足元に落として、トゥーシェンにパスしようとするが。そこにもすかさずダライオスが飛び込み、ボールを分捕ってしまった。
「くそ、なんて影の薄い!」
気を付けているつもりなのだが、どうにもダライオスを防ぎきることができず、ボールを取られてしまう。