第十四章 そして運命は決した……! Ⅲ
前半はファセーラからのキックではじまったので、後半はシェラネマーレからのキックではじめられる。
龍介はセンターのボールのそばに立ち。
ぴー、と審判は笛を鳴らして、
「はじめッ!」
と、声を大にして後半開始を宣言した。
試合開始とともに、シェラネマーレの選手たちは一斉に駆け出し、龍介は軽く蹴ってギャロンにパスして、自分も前へと駆けた。
「いけー!」
「がんばれー!」
「勝つのよ! 絶対に勝つのよ!」
テンシャンにローセス、シェラーンは声を張り上げて声援を送る。
「来てる、こっちに来てる!」
席割りをして、声を出しチャントを歌うコアなサポーターはゴール裏に配置されたわけだが。後半は選手がこっちに向かってくる。それを見て、サポーターは大興奮だった。
「ちょっと見づらいけど、後半はいいな!」
相手サポーターとも向き合う形になるので、いい感じで対峙して睨み合って、いい感じの試合感や緊張感を覚えて。
それは、
「癖になりそう」
と、シェラーンにすら言わしめるほどだった。
シェラネマーレの選手たちは前に進み、右サイドのミッドフィルダー、リジルにパスし。そこから相手守備に紛れ込むようにゴール手前に駆けた龍介に蹴り上げるようにパスを回す。
高めの角度をつけて放たれたボールは弧を描いて落下してゆき。
相手ディフェンダーと龍介は競り合いながら跳躍しボールを奪い合った。
背丈は相手が勝っており、ボールは取られてしまったが。互いに身を寄せ合うほどにくっついていて。足が浮いているさなか、勝てないと悟った龍介は肩で相手を少し押した。
その甲斐あって、相手はやや体勢を崩してうまくヘディングができず。頭はボールに触れたものの、滑るように離れて落下した。
そこへすかさずジェザが駆けてシュートを放とうとする。フォザンもボールを取ろうと急いで身を乗り出す。
が、すんでの差でジェザの足が触れるのが早く、勢いよく蹴りを食らわしたが。フォザンの真正面。
膝が崩れた姿勢ながら、胸に飛び込んだボールを抱きしめるように受け止めて、うまく防いだ。
「くそ、惜しかった!」
ジェザは悔しそうにつぶやくも。フォザンがボールを受け止めようとする直前、まさに阿吽の呼吸でファセーラのフィールドプレーヤーたちは一斉に前に向かって駆け進んだ。
後半開始間もなく目の前で攻防戦が繰り広げられて、シェラネマーレのサポーターたちは、幸先の良さを覚えて。
大旗を振り、チャントを歌い、声をからして声援を送る。
コロッセオは熱狂の渦に飲み込まれているかのようだった。
(相変わらず、すごい雰囲気だ)
夢にまで見たことなのだが、いざ実際にいてみれば、それは肝を締め付ける緊張感もともなったが。それは必要なことだと自分に言い聞かせた。