第一章 異世界に呼ばれて Ⅸ
それからしばらく進み、日が暮れたので野営して。翌朝出発し、都に着いたのはその日の夕方だった。
「うわあ」
龍介は思わず唸った。
中世ヨーロッパでファンタジーな感じのする都市だったが、木造の家屋もあるが石造りの頑丈そうな建物も、それも3階建ての背の高い建物も多い。
自分の暮らす現実世界の地方都市と同じ規模だろうか。
ふと気付いたが、気候は暑すぎず寒すぎずで丁度良い。季節はと尋ねたら秋だと答えられた。
「異世界にも四季はあるんだ」
「ここをなんだと思ってたんじゃ」
やや不機嫌そうにガルドネは言う。
「でも……」
都市は賑やかだった。龍介は驚きながらも、感心もしていた。
「大王さまのおなーりー」
と小姓や臣下たちが声を張り上げて、隊列の先を行き道を開けさせるが。よほど人気があるのか、人々は笑顔で道を開けて、
「バジョカ大王万歳!」
と、もろ手を挙げて大王への忠誠を喜んで示していた。
バジョカ大王は馬上、威風も堂々と右手を挙げて笑顔で民衆の歓呼の声に応えていた。
馬車から顔を出して、賑わいを見て。なるほどここマーレ王国はバジョカ大王の国であることを実感する。
「ここがマーレ王国の都、マーレじゃ」
「国の名前と首都の名前が一緒なんですね」
「そうじゃ。ここから王国の歴史が始まった」
「歴史ですか……」
「左様、偉大なる先人たちあって今がある。」
「そうですね、僕たちは先人の築いたものの上に乗せてもらっているんですね」
「そうじゃ、そのことを忘れてはいかん」
魔導士らしい(?)説教じみた話ではあったが、読書をしたおかげで話にはどうにかついていけ、改めて監督に感謝した。
もしついていけないようだったら、馬鹿にされていたんだろうか。
「スポーツやってる奴って、体力だけの馬鹿なんだろう?」
そんな悪口を言われたこともあって、悔しい思いをしたこともあったっけ。それだけでなく、
「スポーツやってたら勉強なんかしなくていいんだ!」
と、その悪口通り学ぶことをせず道を踏み外す奴もいて、怒るやら悲しいやら寂しいやら、ということもあったっけ。
ともあれ、都について。その様子を馬車から珍しそうに眺めていた。
しばらくして、龍介は「うわあ……」と唸った。
視界の先に、巨大建築物が現れた。それは自分の世界で見慣れたスタジアム状の建物だった。そして、なんとそのすぐ横に、某ネズミランドにありそうなお城まであった。
(この世界は、古代ローマと中世ヨーロッパがごちゃまぜになってるんだなあ)
まだまだ歴史に疎い龍介もそれくらいはわかったが。なんとも遊園地じみた世界であるようにも感じれられた。
しかし魔法があるとはいえ、こんな、もろ昔の世界であのような石造りの巨大な建物があるのを見せられれば、異世界に飛ばされた衝撃と相まって、心臓を強く打たれるような驚きを禁じ得なかった。