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序章

 そこは石造りのコロッセオ。

 季節は秋。陽光が下界を照らしながらも、夏の暑さも盛りを過ぎて、心地よい秋風がコロッセオを撫でるように吹き抜けてゆく。


 下からせり上がるような段状の観客席の観客たちは、競技場で戦う者たちに喚声を送る。


 巨大な石造りの円形状のコロッセオの中心は四角い競技場になっている。観客席の観客たちを見ればその姿は中世ヨーロッパ風で、黒テンの毛皮のダブレットやブリオー、女性の中にはドレス姿も見受けられるという人々の服装であった。


 観客の視線の先、コロッセオの中央、そこでは22人の”選手”たちが、ひとつの”ボール”を巡り、緑の芝の競技場を駆け巡っている。


 そう、それはサッカーであった。

 一方のフィールド選手のユニフォームは水色でゴールキーパーは黄色。一方のフィールド選手のユニフォームは赤でゴールキーパーは緑。


 ここマーレ王国を治めるバジョカ大王は一般の観客席とは区切られた特別席の座りやすい大王用の椅子に腰掛け、

「よしいけ!」

 と、簡素ながらもセンスの良い服装で月桂冠を頭にかけたバジョカ大王は、観客たちと同様に喚声を上げた。


 競技場、ピッチの22人の選手のひとり、源田龍介はフォワードとして試合に臨み。

「前出ろ前出ろ!」

 というディフェンダーの声に応じて、相手の選手をかわしてゴール目掛けて駆けた。


 まだあどけなさを残す19歳の龍介は、トレーニングによって引き締まったスマートな体形をし、身長170センチと平均的な日本人体系ながら素早い動きを見せた。


 そこへ、後ろからボールがパスされる。

 相手の選手がボールを奪おうと迫ってくるが、ボールを受けようと止まったと同時に相手も駆ける速度をゆるめて身を寄せて、ボールを奪おうとし。

 肩と肩が触れ、押し合いとなったが。龍介は力を逃がすように少し後ずされば、相手選手はよろけて。


 その隙にボールは落ちて、すかさず奪い取って。ボールを蹴りながら駆けるドリブルでゴールに迫り。シュートの体制をとった。

 すると、ゴールキーパーがボールを奪おうと迫ってきて。再びドリブルで駆け、迫るゴールキーパーの脇を駆け抜けてゆく。

 さっきのはフェイントだったのだ。


「しまった!」

 相手ゴールキーパーはうめきながら龍介を追い、他の相手選手ふたりゴールの前に急いで戻った。

「行けー!」

「うわーやめろー!」

 などなど、観客のどよめきが音の塊となってコロッセオを揺らすように響く。

 それすら意識できないほどの集中し、龍介は狙いを定めて、左足でシュートを打ち放った――。

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