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幽霊さがし  作者: 梨鳥 
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今回は、短いです。

四月十日 晴れ

 三年生になった。

 愛子ちゃんと、また同じクラスになった。

 先生は、一年生の担任になった。

 今年も、誰も先生の魅力に気付きませんように。

 仁君とも同じクラスになったけど、少し、よそよそしい。


五月五日 晴れ

 こどもの日だから、先生と鯉のぼりを見に行った。

 大きな川の端から端まで、沢山の鯉のぼりが吊るされて風に泳いでいる。

 気持ちよさそうで、羨ましかった。

 先生の腕に腕を絡めて、ずっと見ていた。

 来年の今頃は、私はもう高校生じゃ無い。

 あんな風に気持ちよさそうに泳げるかしら?

 横に先生はいるかしら?

「来年も見ましょうね」と約束をしたかったけれど、怖くて出来なかった。


五月十日・曇り

 愛子ちゃんに先生の話をしたくない。

 でも、愛子ちゃんは私の友達でいたがってる。

 私だってそう。だから、先生の話をもうしたくない。

 でも、私達は友達でいたがって、結局、先生の話をする。

 それから結局、変な空気になって、最後に愛子ちゃんがパッと笑って「真愛、頑張ってね!」

 愛子ちゃん、大好き。


五月十二日・雨

 昨日、放課後仁君と初めて喧嘩をした。

 先生の授業の時に、とても態度が悪いから。注意してやったんだ。

 仁君は怒って、「お前の顔なんか見たくない! 同じクラスなんて最悪だ!」と言った。

 仁君はまるっきり子供!!

 でも、拗ねてズル休みした私も、子供。

 今日は購買で、菓子パンが半額の日だったのに。

 仁君のばか!


 五時。

 今、愛子ちゃんが菓子パンを持って家に来てくれた。

 不思議なの。

 一日部屋にこもっていたから、ちょっと窓を開けようと思ったの。

 朝から閉めっぱなしのカーテンを開けたら、外で愛子ちゃんがちょうど、こちらを見上げていた。

 愛子ちゃんもビックリした顔をして、私達はロミオとジュリエットみたいに見詰め合って、笑った。

 菓子パンは、私の好きなカスタードチョコのパン。

 愛子ちゃんは、私の事なんでもわかっているんだ。



 私は、日記を縋る様に読み返していた。

 どうしたら良いのか、全く頭が働かなかった。

 スマートフォンがポツポツと鳴っている。

 「その場」にいた子達の、「その時」の状況の詳しい報告や、清水君とまだ連絡が取れない、とか、先生やご両親が警察に行ったらしいよ、とか。

 私はもちろん彼が心配だったけれど、それよりも相羽君が心配でしょうがなかった。

 相羽君は、ヘラヘラ笑って無抵抗だったという。

 どうして?

 頭から血を流して、気を失うまで、どうして?

 私は、考えない様にしていた事を、日記から目を離した途端に考えてしまう。

―――全部私のせい。

―――私なんかがいなければ。

真愛ちゃん、私はあなたの気持ちが世界で一番わかる。

今日は雪の日じゃない。

でも、カーテンを開いたら、全部真っ白だと良いのに。

夕焼けが、真新しい住宅街を茜色に染めている。

冬の夕焼けは、どうしてこんなにも鮮やかなの。

ふと、視線を感じて下を見た。

母親くらいの女の人が、立っていた。


―――日本人形みたいに目鼻立ちが薄っすらしていたけれど、私はその人を、可愛いと思った。


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