第41話 行方不明事件その一
「依頼?」
ユウトがギルツの方を見て、聞き返す。
ギルツはギルドを後にしてからユウトと合流していた。理由は勿論ジェイクからの依頼を受けたことを話すためだ。
「あぁ、勝手に決めちまって悪いんだが」
「いや、それは別に良いんだけど。俺が今万全じゃないのは分かってるよな?」
「勿論だ。今回は戦闘メインじゃなくて、聞き込みや捜査中心だ」
「それなら良いけど。で、どんな依頼だ?」
「ここ一月くらいで、六人の娼婦が行方不明になっているらしい。その捜査だ」
「それって国の管轄じゃないか」
ギルツがジェイクにしたのと同じ反応だ。それをどこか面白く思いながら、しかし、顔には出さないように気をつける。人が居なくなっている話をしているのに笑いながらというのは不謹慎だろう。
「そうだ。だが手が足りない事もあってギルドに依頼が来たらしい」
「なるほどね。今から行くのか?」
「あぁ、そのつもりだ」
「分かった。剣くらいは持っていこう」
そう言ってユウトが腰に剣を下げた。
いつもの様に右側に下げようとして、今は刀が無いことを思い出して左側に変える。
改めて刀が無いという事実に僅かな心細さを感じることに内心驚いた。
――それだけ、白光に頼っていたってことか……
知らなかったとはいえ、自分の魔力が原因の一端となって砕けてしまった愛刀を思い出す。しかし、いつまでもそんなことは言っていられない。
気を取り直してギルツに声をかける、
「行こう。案内頼んだ」
「おう」
ギルツの案内で王都の一角に向かうと、そこには娼館が幾つも建っていた。まだ昼間で営業時間外ということもあり、人通りは少ないが、独特の雰囲気のある場所だった。ギルツは迷うことなく、その場にある中で一際大きな店の中に入った。
ユウトはギルツの後について店内に入ると、身なりの小綺麗な男性が掃除をしていたのが見えた。男は入ってきたユウト達に気付いて声をかける。
「お客様御来店ありがとうございます。ですが、申し訳ありません。まだ営業時間では――」
見事な営業スマイルを浮かべた後、申し訳無さそうな顔をする男にギルツが手を前に出してそれを留める。
「いや、客じゃない。ギルドから依頼を受けた冒険者なんだが」
「あぁ、貴方が。それでしたら――」
男がそこまで言ったところで、店の奥から女性が出てきた。
そこにいたのは、鮮やかな紅色の髪を後頭部の高い位置で一つにまとめて垂らした妙齢の女性だった。
「いらっしゃいませ。ギルツさん」
「ローザさんか。話は聞いてるだろ? 客じゃないぜ」
「ふふ、そうでしたわね。依頼を受けて頂きありがとうございます」
ローザと呼ばれた女性がやんわりと腰を折る。その仕草は洗練されており、高度な教育を受けた令嬢のようだった。
「世話になってるからな。恩返しだ」
「――と、ジェイクさんに言われたのですか?」
「良くわかっていらっしゃる」
「本当に仲が良い師弟でいらっしゃいますね」
「それは本気でやめてくれ」
ギルツが嫌そうな顔をすると、寒気を感じたように身を震わせて言った。
ジェイクのことは尊敬してはいるが、仲が良いと言われると全身がむず痒くなる。
それを知ってかローザが楽しそうにクスクスと笑っていると、ギルツの後ろにいたユウトに目を留めた。
「あら? そちらの方はもしかして……」
「ああ、噂は聞いてるだろ? 相棒のユウトだ」
「はい。まだお若いのにとても優秀な冒険者だと。お会いできて光栄ですわ、ユウト様。私はローザと申します」
そう言ってニッコリと微笑む。
少女のようなあどけなさを残しながらもどこか色香を感じさせる魅力的な笑顔だった。それを向けられ、ユウトが顔を赤くして、「どうも」と小さく答えた。
その様子をギルツが不思議に思って尋ねる。
「ってどうしたんだユウト。初対面の相手には礼儀正しいお前らしくない」
ユウトは一部の相手を除き、基本的に礼儀正しい。特に初対面の相手にはきちんとした態度を取る。
そのユウトにしては、ローザに対する態度は明らかに礼儀を欠いている。
ローザはユウトの嫌いなタイプと言うわけでも無い。仮にそうであっても、友好的な態度を取っている相手に一方的に礼儀を欠く態度を取るのはユウトらしくなかった。
「いや、その……」
ギルツに指摘され、ユウトが言葉を濁す。しかし、このままではローザに失礼だと思い、言い辛そうにしながらも答える。
「ローザさんには当たり前のことなんだろうけど、目のやり場に困ると言うか……」
ユウトがそう言うと、ギルツの視線がローザに向かい、ローザ自身も自分の体に視線を向ける。それと同時に納得したような表情になった。
ローザの格好はとても扇情的なものだった。露出が激しい訳では無いのだが、中が透けるのではないかと思うほど薄い。そのため身体の線が良く分かり、スタイルの良いローザが着ると、下手に露出が多いだけの服よりも余程扇情的に見える。
何よりローザ自身が持つ色気のようなものが、その衣装と合わさって強烈な魅力を放っていた。
そこまで女性に免疫があるわけでもなく、しかもここまで強烈な大人の色香を持つ女性に会ったことも無いユウトは、薄着のローザを直視できなかった。
ユウトとは逆に、それを慣れた様に平然と見ていたギルツがユウトの言葉に同意を示す。
「あぁ、気恥ずかしくてローザさんを直視できないって訳だ。確かにローザさんの色香は王都一だからなぁ」
「とてもお強いと聞いていたので、てっきり怖い方なのかと思っていたのですけれど。ふふ、可愛いらしい方ですのね」
「嬢ちゃんときもそうだったが、案外純情だな相棒。こうしていると年相応に見えるぜ」
ギルツが未だローザを直視できないユウトをからかうように笑う。
――ギルツなんぞにここまで馬鹿にされるなんて……
そんなことを内心思いながら、何度かローザを真っ直ぐ見ようと試みる。しかし、その度に薄い服を持ち上げる豊かな胸や女性らしい腰などについ目が引かれ、そんな自分にハッとして顔を赤くして目を逸らす。
その様子を見ていたギルツが何かを思いつく。
「まぁ、やっぱり気になるよな、男だし。何ならローザさんに男にして貰ったらどうだ? 少しは慣れるんじゃないか?」
「あら? こんなに可愛らしい方がお客様になって頂けるのでしたら、女性のことを沢山お教え致しますわ」
良い事を言ったとばかりに満足げな顔をするギルツ。
ローザも満更では無いどころか、乗り気になったようにユウトに流し目を向ける。その表情は先程までの楚々とした可愛らしさは鳴りを潜め、男を惑わせる娼婦の顔だった。
薄着に包まれたローザの美しく豊満な体つきに唾を飲む。そして、自分に向けられる色気が前面に押し出されたローザの妖艶な表情に、それも悪くないかもしれないと次第に心惹かれていく。
その瞬間――背筋が凍りつくような衝撃に見舞われる。
そのほぼ同時刻、アルシール南西部にある小さな村で、一人の少女が何かを感じ取った。
台所で料理を作るその少女に、隣で調理を手伝っていた小さな女の子が躊躇いながら声をかける。
「お、お姉ちゃん……?」
「エイミィ? どうかした?」
「う、ううん。何でも、無い」
エイミィが怯えたようにふるふると首を振る。
「そう」と小さく言ってエリスは調理に戻るが、その後姿には何かオーラのようなものを感じさせた。
それを影から見ていた二人の男の子が、震えながらヒソヒソと言葉を交わす。
「エリスねーちゃん、今凄い顔してなかったか?」
「……うん。笑ってるのに目が笑って無かったよ……」
「やっぱユウトにーちゃんかなぁ……」
「多分そうだと思うよ。ユウト兄も大変だね……」
「……女の人って怖いな」
「……そうだね」
目の前に居ない相手に起こった何かを察する女性の勘。その鋭さに幼くとも同じ男として恐怖を禁じえなかった。
子供ながらに女性の怖さを知ったカールとテリーは、エリスに聞かれないよう怯えながらお互い気をつけようと誓い合った。
更に同時刻、大森林のとあるエルフの村。その近くで爆音が轟いた。
「ちょっ、ソフィア様!? 魔力込め過ぎ――」
悲鳴が上がる。
しばらく前に異形の魔物に襲われ甚大な被害を受けたエルフの村は、再建に向かっていた。それと同時にソフィアが持ち帰った始原の花のおかげで毒が抜け、回復したエルフの戦士達は二度と同じようなことがないよう前にもまして訓練に励んでいた。
ソフィアは元の才能の高さに加え、ユウト達との旅の経験を得て、今では村で最強の戦士であるディオスに負けない程に成長していた。そのこともあって、ソティスに禁止されていた訓練にも参加することが出来るようになっていた。
しかし――
「今日のソフィア様、気合入ってるって言うか……」
「八つ当たりしてるような……」
普段は比較的大人しく、ついさっきまではそれらしい様子が全く無かったはずのソフィアが急にやる気満々――最早殺る気満々といって良い惨状を引き起こしている。
それを少し遠くから呆然と見ていた二人の戦士が現実逃避するように言葉を交わす。
その間にも他のエルフたちが止めようと頑張っているが、止まる様子の無い無慈悲な魔術が周囲の戦士達を屍に変えている。
「いや、まぁ。死んではいないみたいだけど」
「確かに、ピクピクと動いてるな。ところで――」
「いつ終わるんだ、これ」と続けようとした戦士の言葉は、ついぞ音になることは無かった。
ソフィアの放った魔術が戦士の口を開かせる前に二人の近くに着弾した。
場面は王都に戻る。
「お、おいユウト? 大丈夫か? 何か凄い震えてるぞっ!?」
「だ、大丈夫だ。まだ多分殺されはしないはずだ」
「誰にっ!?」
どこか遠くを見つめ、声を震わせるユウトにギルツのツッコミが入る。
ユウトが感じた恐怖は、風竜を目にしたときのそれを遥かに上回る。そのあまりの怯えように、ギルツまで巻き込まれたように戦慄を覚える。
「あの……お二人とも大丈夫ですか?」
置いてけぼりになったローザが様子のおかしい二人に声をかける。
ローザに先程までの誘惑するような雰囲気が無くなったおかげか、少しするとユウトの震えは止まった。
「は、はい。何とか……とりあえず、依頼の話を」
しかし、一度体に染み付いた恐怖はそうは拭えない。再びあの恐怖を感じれば心が挫けてしまう、それどころか命に関わるかもしれない。
そう判断したユウトが、本来の用件に話を戻す。
「あ、はい。一番最初に居なくなった子は――」
ローザがユウトに促されて事情を話し始める。
一番最初に居なくなった娘は約一ヶ月前、二人目はその十日程後に姿を消し、、その後三人目、四人目と回を追うごとに行方をくらます間隔が短くなっており、最後に消えたのは二日前だった。
最初の娘が居なくなった時は単に逃げ出したのだろうと考えられた。少なくなったとはいえ、逃げ出す者が皆無というわけではない。そのような様子は無かったが、自分の内に溜め込んでいたのだろうと。
しかし、二人目、三人目と続いたところで、幾らなんでもこう何度も続くのはおかしいと考えるようになった。
娼館を使用する者は存外多い。庶民は勿論だが、兵士や文官、中には貴族も居る。
娼婦達はその伝手を利用し、本当にただ逃げ出しただけなのか、何か事件が起こっているのかを調べて貰うよう働きかけた。
その狙いは予想以上に上手くいき、兵士達が動き出すのにそう時間はかからなかった。
しかし、大した成果が出ず、娼婦が一人また一人と行方を晦ましていくため、娼婦達が次は自分ではないかと怖がるようになってしまった。遂には客を取ることさえ拒むようになったため、一刻も早い解決をとギルドにも依頼を出した。
大方の成り行きを聞き終わると、ギルツはジェイクから聞いた話と照らし合わせて、間違いないと頷いた。
「ギルド長から聞いたとおりだな」
「ちなみに、居なくなった人の共通点とか外見的に似ているところとか、そういうのはありますか?」
ローザの話には、解決につながりそうな情報は見つけられなかった。そこで、何か取っ掛かりにならないかと、聞いてみる。
ローザは少しだけ考える仕草をしてから、淀みなく答え始める。
「……そうですわね。全員成人したばかりの若い娘で、ようやく教育が終わってこれからお客様の前に立てるようになったところなのです。敢えて申し上げるのなら、若い娘で、まだお客様を取っていない、というところは共通しております」
「若い娘、ね。……居なくなる前に様子がおかしかったとかは無かったのか?」
「他の娼館の娘も居るのでそちらは聞いた限りになりますが、直前に様子のおかしかった娘や少なくとも嫌がっていることを表に出していた娘は居りませんでした」
若く、客を取っていない娘ということなら、直前になって怖気づいたという可能性はある。しかし、短期間の間に人数が多すぎることや、娘達の様子を聞く限りやはりその可能性は低い。
「そうか……ユウト、他に聞きたいことはあるか?」
「いや、今のところは特に」
「わかった。それじゃローザさん。俺達は捜査に向かうんで、これで」
そう言ってギルツが軽く頭を下げると、ローザも微笑んでそれに倣う。
「はい。何か進展がありましたらお教え下さい」
「あぁ、ギルド長にも報告するから、そっちから連絡が行くだろう」
「分かりました。ユウト様、気が変わられましたらいつでもいらっしゃって下さい。僭越ながら私が御相手させて頂きますわ」
そう言ってローザが笑う。
からかっているように見えるが、どこか色気を感じさせる。本気かどうか判断し難い笑顔だった。
ギルツも笑ってローザに続く。
「良かったじゃないかユウト。ローザさんは王都でも一番人気で相手して貰うのも難しいんだ。そんな人に誘って貰えるなんて、相手して貰えない奴らが聞いたら涙を流して羨ましがられるぜ」
大の男が何人も涙を流して群がってくる様子を一瞬想像し、そのあまりの気持ち悪さに顔を歪ませる。
「気持ち悪い光景を思い浮かべそうなことを言うな。それと――」
寒気を感じて、ブルブルと身体を震わせる。
「俺の命が危なくなるから滅多なことを言うな」
その声には紛うことない本心が篭められていた。
娼館を後にした二人は、次に兵士の詰め所に向かった。
ギルドから話がいっているとはいえ、依頼を受けた冒険者として顔を見せておく必要があると思ったのと、今までの捜査で掴んだ情報などを聞いておきたかったからだ。
詰め所には今回の事件の捜査を指揮しているドーガという兵士長が居り、ユウト達はドーガと顔を合わせてから詰め所を出た。
その頃には丁度昼時になっていたため、食事をすることにした二人は大通りにある店に入った。
ギルツが勧める店の一つで、店外にも設置されたテーブルは天気が良い日には風が気持ち良く、食事が済んだ後もゆっくりとお茶が出来る雰囲気の良い店だった。
しかし、その一角に陣取る二人組み――特にその一方が、店の雰囲気をぶち壊しにしていた。
「おいユウト。いい加減機嫌直せよ」
「あ゛ぁ?」
「俺に凄んでどうするよ。いや、気持ちは分かるんだがな」
ユウトの機嫌の悪さが限界を突破していた。
それもこれも二人が詰め所で会ったドーガと言う男の態度に原因があった。
兵士と冒険者の仲は悪いというのはユウトも聞いている。
ユウトは未だあまり兵士や騎士との接点が無い。初めて王都に来た際に捕まった時、数人に会っただけだった。
ユウトを牢から出した兵士の態度が悪く、その当時は両者の仲が悪いことを知らなかったこともあって態度の悪さに腹を立てていたが、それを知った今ならあの態度も仕方が無いのかと一応納得している。
その際は冤罪だったとはいえ、ユウトは容疑者だったため丁重に扱えとも言えない。だが今回は正式な依頼を受けており、ジェイクが既に話を通してある。幾ら仲が悪いとは言え、互いに仕事だ。丁重にとまでは言わないが、最低限の礼儀は払うだろうと思っていた。
しかし、その考えは甘かった。
開口一番は「冒険者風情が何をしに来た」だ。ここはまだユウト達の事情を知らないと思えば仕方が無い。
そこで、今回の件で依頼を受けた冒険者だと説明すると「貴様等のように金に群がるしか能の無いハイエナに出来ることなど無い」と見下した目で言われた。
余りの態度にイラつきながらも我慢して協力を申し出て、今までに手に入った情報を教えて欲しいと伝えた。
すると、「金に汚い貴様等のことだ。情報を相手に売られたら敵わない」と侮蔑の目を向けられて鼻で笑われた上で拒絶された。
ユウトの顔に、もうコイツぶん殴ってやると書かれたのにいち早く気づいたギルツがユウトを引きずるようにして詰め所を後にすることになった。
「泣いて謝るまでぶん殴ってやりたかった……」
「お前なら普通に出来るだけに本当に止めてくれ。流石に問題になる」
不穏な気配を放ちながらボソッと呟いたユウトをギルツが疲れた顔で止める。
ユウトの戦闘力なら並みの騎士や兵士程度は容易に圧倒できる。
しかし、いくら腹立たしい態度を取られたからと言って殴ってしまえば、悪いのはこちらになってしまう。
そもそもジェイクがわざわざギルツ達にこの件を頼んだのは、冒険者というのは大体血の気が多く、そこで殴りかかってしまう者達ばかりだからだ。
そんな冒険者の中でもギルツは比較的温厚――と言うより兵士達の態度に慣れているため、それを知っているジェイクが選別したのだ。もっとも、ユウトがここまで怒るとはジェイクは予想しておらず、ギルツも想像していなかった。
ロアやメイアが最初ユウトに悪辣な態度を取っていた時、ユウトは表面上は怒ったりロア達に対して態度を悪くすることが無かったため、大丈夫だろうと考えていた。ユウトは確かに温厚ではあるが、誰に対しても無制限で怒らないという訳ではない。ロア達の件は、ユウト自身がロア達の態度に納得出来るだけの理由があったというだけに過ぎなかった。
もっとも、今回の場合はユウトを容易く怒らせたドーガの存在が予想外だった。ギルツもドーガほど態度が辛辣な兵士には会ったことが無い。そういう意味では、運が悪かったと言うべきかも知れない。
――あの兵士、冒険者に恨みでもあんのかな?
一般的な兵士が冒険者に抱く感情を明らかに逸脱したドーガからの敵意を思い返し、そんなことを思う。
対面には未だ不機嫌さが抜けないユウトが通行人を怯えさせている。
――これ以上は営業妨害だな……
店主が何かを言いたげな、しかし怯えが多分に含まれた視線をユウト達に向けている。
「そろそろ落ち着いてくれ。話が出来ない」
猛獣のような目をし始めていたユウトに声をかけると、不本意そうな顔をしつつもギルツの言い分に利があると判断した。それくらいの理性は残っていたらしい。
「……そうだな。これ以上言っても仕方無い」
ようやく落ち着いたユウトを見て、ギルツがホッと息をつく。いつまでもあんな調子ではまともに話し合うことも出来ない。
ユウトがドーガのことを頭から追い出したところで、ギルツが本題に入る。
「それで今回の件だが、原因は何だと思う?」
「確証は無いけど、人攫いの可能性が一番高い」
最初から聞かれるのを予想していたかのように、躊躇うことなくそう言った。




