魔術
魔術――自分の持つ魔力を媒介にして世界の術式を再構築し様々な現象を引き起こす技術。
魔力の性質は個体によって違い、得意不得意や出来ないこと、傾向などが多種多様だという。勿論魔力の保有量によっても条件が色々と変わってくるということだ。
僕はどうだろうか。肉体のすべてに、魂に、存在に宿る魔力を感じ取るために意識を研ぎ澄ませる。最低限の樹木を操るために必要な意識を残して。
……掴みようのない曖昧な力を感じる。
僕という存在の隅々まで染み渡っているような。
僕自身のような、そんな力。
それだけを見ることは出来ない。
僕を創り上げているもの全てを見るように意識してみる。
すると全てのものが一つに融合していく。それは僕のはず、だけどその中に確かな力がある。いろんなものが混じり合った中にはっきりと感じ取ることが出来た。
これが僕に宿る魔力。
色はない、だが決して透明ではない。何者でもなく、でも僕だと分かる。
この魔力を世界に干渉させる。
方法は何となくだが知識として持っている、だが慎重に段階を踏まなければ予想外の被害を出してしまうかもしれない。
樹木たちと意識を繋ぎながらでは成功させる自信がない。一長一短に出来るようなものではないのだ。ましてや初めてなのだ。どうする……。
今になってみれば、あの大地と繋がる感覚や樹木たちと繋がる感覚が無意識に自分の魔力を介して魔術もどきを発動させていたものだったことが分かった。違和感がなかったのも同じ大地から芽吹いたもの同士魔力の性質が似ていたからだろう。それをうまく利用できればイケるかもしれない。
僕は自分の魔力で繋がった先の樹木に対してさらに魔力を流し込み術式に変化を加えてみる。
……成功だっ!! 樹木は一段とその大きさを増し、傷付いた部分も修復された。
形勢が変わり始めた。
こちらが傷付けば僕が治癒する。まだ魔力には余裕がある。対して向こうはじりじりと体力を削られていく。少しずつだが勝利が見えてきた。
しかし、そう簡単にはいかせてくれなかった。
魔物が最後の力を振り絞るかのような強力な光線を口から放ったのだ。そんな隠し技があるなんて。
それは一直線に僕めがけて飛んでくる。早すぎる。
……避けられないっ!!
ジュウゥゥ
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」
僕は右半身を失った。