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お嬢様視点となります。

 わたくしが転生者だと気づいたのは十歳の頃でした。


 その頃わたくしは日々悩んでおりました。というのも公爵位を賜る家の娘として生まれた以上、最低限の社交でいいと言われているとしても早々に婚約者を選ぶ必要があったのです。

 上の爵位のものから順に決まっていくのが通例で、わたくしの上は王家しかございません。そうなると王太子殿下が決まり次第すぐにでも発表しなければ他の方々のご迷惑となってしまいます。


 ですが、わたくしには好きな方がおります。寝ても覚めてもその方の事ばかりを考えます。話すたびに心が躍り、目が合うと一日浮かれて過ごしてしまいます。ですから結婚するのならその方と・・・と、ずっと思っておりました。


 しかし、公爵位が邪魔をいたします。わたくしの下に弟か妹が生まれる予定があるのですが、弟であれば外に出ることが出来ますが、妹であれば婿をとる必要が出てきます。誰でもいいとは言えません。信用でき力のある人をペルリタリアのために選ばなくてはいけませんし、そのことでほかの貴族に隙を突かれるのを防ぐために出来るだけ高位の方を選ぶ必要がございます。


 これまで、たとえばお父様とお母様の場合は、お母様が他国の末姫だったことで国内の貴族から選ぶ必要がございませんでした。おじい様の時はおばあ様のご両親にペルリタリアが持つ爵位の一つ渡して、平民だったおばあ様と結婚をいたしました。


 今回もそうしたい、とお父様にお願いしたのですが、難しい顔をされてしまいました。わたくしの想う方は孤児で、どこの方ともわかりません。お父様が認めても国を認めさせるのは難しい、というのもわかっています。わかっていますがどうしても、彼と結婚したいのです。



 ですから何とかしてこの状況を打破する方法を探さなくてはいけません。わたくしは毎日毎日考えておりました。


 そんなある日、頭の中にたくさんの情報が流れ込んでまいりました。

 以前から自分の記憶ではないものが頭のなかで再生されることがございましたが、この出来事でなるほど前世の記憶だったのかとすぐに理解いたしました。


 わたくしはこれから先に起こる未来のことも知ってしまいました。どうやらわたくしフローリシュは、少女漫画の中に出てくる悪役令嬢で、王太子殿下の愛が頂けず殿下の恋人を殺そうとしてしまうようです。


 これがわたくしの希望となりました。漫画の中のフローリシュは家族ともども追放されると漫画には描いてございました。つまり、わたくしの大事な家族と一緒に国を出られる上に、爵位を失えば誰と結婚しても咎められることはございません。


「レナト、わたくしどうも転生者みたいですわ」


 わたくしは、わたくし自身の願いを叶えるために、記憶通りの行動をとることを大切な彼に相談いたしました。

 その時の彼の驚きようといったら・・・食べてしまいたいくらい可愛らしかったのですよ。影がいるとはいえ近くで見たのがわたくしだけでよかったですわ。ほかの人に見られたら、ライバルが増えてしまいますでしょう?




 それから少々忙しい日々が始まりました。最終的には冤罪によりペルリタリア家の希望を王家が飲まざるを得ない状況を作り出す必要がありますもの。長い道のりですわ。冤罪となるように罠に引っかかってもらわないといけませんし、少々強引な手を取ることもありました。

 そうでもしないといけない理由は簡単です。わたくしが嫉妬で誰かをいじめることはあり得ませんの。ましてや王太子殿下に・・・笑ってしまいますわね。

 もちろん、わたくしの大切な彼に群がる虫はそっと退治しておりますが、彼が他の女性を見ることはありませんから、その点は安心しておりますの。


 ですが本当に王太子殿下は酷いお方でした。色に溺れやすい性質だということは知っておりましたの。わたくしは魔力を見ると方の人となりが何となくわかるのですが、王太子殿下ほど色に塗れたと表現したくなる魔力の方には会ったことがございません、しかもまだ十歳。早すぎると思いましたが、そういう性質の方もいらっしゃるのでしょう。持って生まれた個性はそれぞれですものね。

 ただ、王族に生まれたのならばそれを抑えるために心身を鍛えられるのが一番だと思うのですが、殿下はただ欲求に忠実に行動しておられました。恥ずかしい言葉をいわせようとしたり、卑猥なポーズをとらせようとしたりと、前世で言うところのエロ親父がやりそうなことばかりわたくしにさせようとするのです。


 吐き気がしましたけれど、耐えました。出来る限り穏便に済ませました。わたくしかなり頑張ったと思いますわ。

 必死に頑張らないといけない理由がありましたの。怖い展開が待っている可能性が消しきれませんでしたから。





 八年も耐えて、ようやく婚約破棄を口にしてくださった時は嬉しすぎて思わずしゃべりすぎてしまいました。だってもうすぐそこにわたくしが望んだ未来が待っていたんですもの、誰だって急ぎたくなりますでしょ?


 わたくしが恐れていた展開・・・それはヒロインの女性に悪役令嬢のわたくしの執事が恋をする展開です。漫画ではそれはそれは美しい悲恋として描かれておりましたけれど、わたくしは絶対にそれを阻止しなくてはいけませんでした。大切な大切な彼をどうしてヒロインなどに渡さなくてはいけないのでしょう?だって彼をただ消費するだけの存在ですのよ。汚いことや辛いことを全部押し付けて死んでいくのが悲恋だなんて、許せませんわ。


 ただ、彼はヒロインに心を動かされませんでした。本当にほっとしたのですが、ヒロインのほうがその事態を気に入らなかったようで、お胸が殆ど見えてしまうようなドレスを着て彼に迫った時はもう・・・本当にいじめてしまおうかと、思いました。ですが耐えました。彼はこれっぽっちも反応せず紳士的な態度でヒロインを遠ざけましたから。嬉しかったですわ。それがきっかけでヒロインの自作自演が加速したので、結果的には良かったです。結果的には、ですわよ。


 だってそういう誘惑があった日の彼は酷く落ち込んで・・・顔を真っ青にして震えているのです。気持ちが悪かったのでしょうね。それを見て早く彼を抱きしめられる立場になりたいと改めて思いました。



 だから最後はちょっと焦ってしまったのだけれど、全てがうまくいきましたわ。

 わたくしは以前からこの件が成功したら彼と結婚したいと両親と(ライネル)には話しておりました。お母様とライネルは大賛成。お父様は・・・うふふ、少しだけ寂しそうにしてらしたから、ごめんなさいって思うのですけれど、賛成してくださいましたわ。これでもう完璧・・・と言いたいところですけれど、最後の一押しが必要ですわ。


 彼はとってもモテるのです。過去に使用人の女性が彼を好きになって既成事実を作ろうとした虫もいましたわね。追い払いましたけれど、その方はペルリタリア一族の女性でしたので、山に行けば近くはないですが同じ土地に住むことになります。すでに結婚されてますけれど危険ですわ。ほかの女性が来る可能性もありますものね。


 ですからわたくし、その彼女が行ったことを真似てみようと思うのです。



 そろそろ彼がやってきますわね。湯浴みもしましたし、ジャスミンの香りも炊いています。少しセクシーな気分になるのですよ。これは前世の知識ですわ。


 寝間着としては少し心もとない可愛らしい薄手のナイトドレスを着て、見えすぎないようにカーディガンを羽織って、ほんの少しだけお化粧。チークをふわりとまるくいれて、唇をつやつやに。肌に塗る香油は控えめにいたしました。こちらの香油は重ための油が使われていますからね、口に入るとちょっと不快かなと思うのです。口に入ってしまう前提で動いている自分が恥ずかしくもありますが、もうわたくし公爵令嬢ではありませんもの。

 それに山に行けば存分にハーブやアロマの研究が出来ますから、軽めのオイルも作れるんじゃないかしら。ああ、楽しみですわね。わたくしと彼だけの香油を作ってもいいかもしれません。



 小さく足音が近づいてきましたわ。ふふ、彼がどんな反応をするか、とっても楽しみですわ。





これで本編終了となります⸜( •⌄• )⸝

おまけであと一話、明日18時投稿予定です。


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