表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?【改訂版】  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/76

第22話 私、頷いておりました

 好きでもない王子と義務で子を成すと思っておりましたから、こうして告白される状況に憧れました。縁がないと思うからこそ、その憧れは強かったのです。兄エミリオが親友のフランカを口説いた時のセリフを思い出し、さらに身体が火照ってきました。


「……は、い」


 熱くて朦朧としながら、気づけば頷いています。


 承諾して、フランカの拍手で我に返りました。いけないわ、お父様やリオ兄様に相談せずに頷いてしまうなんて。


 撤回しようと跪いたテュフォン様に視線を戻せば、それはそれは幸せそうな満面の笑みでした。今更撤回なんてできないわ。みっともないし、何より彼を落胆させてしまうでしょう。


 一度は受けた婚約話を、直後に拒否したら泣いてしまうのではないかしら。そのくらい、彼は言葉以上の愛情を全身で示していました。


 悪い気はしませんの、だってこんなに好きって表現してくださった殿方はいませんから。婚約者がいても甘い雰囲気にならないし、なりたくもなかった。だけど……こんなに好きと言ってくださるなら、望まれてお嫁に行くのは幸せよね。


 本心では分かってますのよ。リオ兄様やフランカが一緒に暮らそうと言ってくれても、やっぱり私は邪魔な存在になってしまいます。新婚夫婦の家に小姑が同居なんておかしいんだわ。


「お、お父様。私……」


「ああ、よかった。お前を大切にしてくれる方の元へ嫁げるのだから。幸せなことだ。亡き妻も喜んでくれるだろう」


 人前なのに憚らず涙を流し、お母様のことまで持ち出して喜んでくれるお父様に、私も貰い泣きをしてしまいました。


 頬を濡らす涙に、ハンカチを探そうとして……先ほど、テュフォンに渡してしまったことに思い至る。まずいですわ、扇で隠して誤魔化せるかしら。


 探した扇はソファ前のテーブルに置かれていました。しかし先ほど骨を折ってしまった扇は、形こそ美しいけれど広げたら砕けてしまいそう。袖で拭くわけに行かず、手袋で包むように頬を隠してみる。


「ティファ、こちらを使って」


 戻ってきた伯母様の声に、大急ぎで差し出されたハンカチを受け取りました。危なかったわ、もう少しで鼻水も出てしまいそうだったのですもの。色気がなくて申し訳ないのですけれど、淑女といえど泣けば涙以外の液体も出ますわ。


 あとで新しく刺繍を施した新品をお返しすることに決め、遠慮なく鼻も涙も拭かせていただきます。侍女たちの力作の化粧もすこし落ちてしまいました。


「あら、リオ兄様がいらっしゃらないわ」


 隠して鼻を啜りながら、部屋にいたはずの兄の姿を探します。婚約者であるフランカが、取り繕うように泣き笑いの顔で答えました。


「リオ、は……貴族の方々とお話、があって。ねえ、おじさま?」


 もうすぐフランカの義父になる父ベクトルが、慌てて頷きました。相槌を打つ姿に、嘘を感じます。何か私に隠していらっしゃるわ。


「あ、ああ。そうだ、そうだったな。貴族との……」


「お父様っ、嘘をおっしゃらないで」


 ぴりっとした雰囲気を壊すように、テュフォン様の手が涙で冷えた私の頬に触れました。包むように這わされた手は温かく、うっとりと目を閉じてしまい。


「険しい顔も素敵だが、我の前では笑っておくれ。愛しき姫よ」


 口のうまい新たな婚約者に丸め込まれる形で、兄の不在が有耶無耶になりました。私に聞かせたくないお話なのですね。気遣いなのは理解しております。こういうのも悪くないですわ、口元を緩めながらひとつ息を吐きました。深呼吸で気持ちを落ち着けて。


 お父様は私に甘いから、泣きながら責めたら落ちますし。お兄様は悲しそうな顔で「私には言えないのですか、妹ですのに」と嘆いたら話してくださいます。この場で無理に聞き出す必要はありませんね。


「わかりましたわ。別に怒っておりません」


「隣に座っても?」


 礼儀正しく尋ねるテュフォン様へ、どうぞと隣を示します。この方は紳士ですけれど、己の気持ちにとても正直な方なのだわ。なんだか子供のよう、おかしくなって綻んだ口元をハンカチで覆い隠しました。


 たぶん、伯母様にはバレてしまうでしょうけれど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ