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バイトか本業か。本業かバイトなのか。

作者: 風峰 拓哉

 深夜に、24時間営業のラーメン屋でバイトをし始めてから、5年が経っていたことに、カレンダーを眺めて気がついた。

 5年というのは客観的には長い時間だろう。5年もあれば小学校一年生のちびっ子が、小学6年生のお兄さんお姉さんに成長している。四年生の大学生なら就職や大学院に行っているかもしれない。

 時間というのは残酷なもので、その時間に例え夢がかなえられていなかったとしても、時間は無情にも経過してしまっているのだ。お金持ちも貧乏人も平等に。


 もともと演劇志望だった僕は、高校を卒業し、とある地方劇団のオーディションに合格した。“俳優”に僕は為れたのである。

 ・・・しかし、その“俳優”の職だけでは毎日の三食ですら食いっぱぐれてしまうほどの収入だ。地方在住とはいえ、月給3万円では、下手をすれば学生アルバイトよりも稼げていたいことになってしまう。

 そうして、僕は24時間ラーメンのアルバイトに入ったのだ。

 きっかけは単純だった。

 劇団時代、先輩の俳優が、「接客業は、芸を助けるぞ」と薦めていたからだった。

 接客業はお客様とスムーズなコミュニケーションが要求される。ツーと言えばカーとまでは言わないが、お客様は段々アルコールが入って、的確な指示が出来なくなることは知っておかねばならない事だろう。その中で、彼らお客様が求めているであろうサービスを“必要かつ十分”である状況で、お客様に提供するのがプロである我々の腕の見せ場である。


 お客様が何を頼みたいのか、必死に聞き出したり、選んでもらうよう食券機に移動したり。現在のバイトはきっと楽な仕事ではないだろう。だけれども、お客様にとって、もっとも心地の良いお店の環境を考える力は、私の場合、ここ5年でついたといって過言ではない。


 24時間営業のラーメン屋というのも素晴らしい仕事なのだ。


 ひょっとしたら、演技の道からラーメン屋に夢が変わってしまいそうな日が、時々あるのだ。


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