エリオ 編
ブラジルに住む少年エリオは、なかなか寝付けないでいた。それはきっと学校での授業が原因に違いなかった。
「さあ、次はエリオだ」
先生に呼ばれ、少年はしぶしぶ教壇の前に立った。
「君の夢はなんだい? ん、どうした? みんなの前で発表してみよう」
「僕、コーヒーのバリスタになりたいんだ」
すると、教室がどっと湧いた。
「エリオってばおかしー」
「お前、コーヒーアレルギーじゃんか」
エリオは顔を真っ赤にして叫ぶ。
「飲めなくったって美味しいコーヒーは作れるんだ! ブラジルのコーヒーを世界中の人に飲んで欲しいんだ!」
「だから言いたくなかったのに」
エリオの父親は、毎朝決まって、母親の煎れる珈琲を飲んでから仕事に出かける。エリオはそれを幼い頃から見ていたので興味を持つのは当然だった。
初めて飲んだ時のことはよく覚えている。本当に苦くてまずくて。でも、それを平気で飲んでいる父親が途端にカッコ良く見えたんだ。だから大好きになったんだ。なのに……。
エリオはカフェイン過敏症だということが後から分かった。コーヒーを飲むと、吐き気や頭痛に悩まされてしまうのだ。
せっかく抱いた夢は遠くなってしまったけれど、本人は諦めてなかった。
だからこそ、みんなから馬鹿にされたことが許せない。
「気晴らしにゲームしようかな」