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僕がなりたい主人公  作者: 白瑠璃
7/8

協力

 ミコトが消えた後暫く二人で黄昏れていたが下校のチャイムが鳴ったのを合図にそれぞれが無言で帰宅した。


 次の日昨日と同じように自分の席で国広と話をしていた。

ガラっ

教室の扉が開き、そちらに目を向けると根賀が登校してきたようだった。根賀はこっちを見るとこちらに向かってきた。

「おい、大河!あいつこっちに向かってきてるぞ!昨日呼び出されてただろ?大丈夫なのか?」

昨日は結局一言も話すことは無かったがまだ俺を殺そうとでもしているのだろうか?俺は少し身構えた。

そんな俺たち二人の様子をクラスメイト達は静かに見守っていた。

「よう。」

最初に声を掛けたのは根賀だった。

「・・・昨日は・・・・悪かった。」

「え?あ・・・あぁうん。」

根賀の思いがけない言葉に俺は曖昧な返事をしてしまう。

「もうお前にちょっかいを掛けるつもりはない。それでなんだが、今日お前の家に行っても良いか?」

「!?」

今こいつはなんて言った?俺の家に来る?昨日俺を殺そうとしたこいつが?

「・・・」

ふと根賀を見ると不安そうな顔でこちらを見つめていた。

「確かに昨日お前にあんなことをしたんだ。俺を信じてくれなんて口が裂けても言えねぇ。だが、俺はミコトにお前を守るように頼まれたんだ。だから、俺を信じなくなくていい、だけど、俺にお前を託したミコトを信じて欲しい。頼む・・・!」

流石に命の恩人であるミコトさんの名前を使われたら折れるしかない。それに冷静になって根賀を観察すると昨日と違って敵意を一切感じなくなっている。根賀を信頼できるかは置いておいてミコトさんが信用していた人物だ、多分・・・きっと・・・おそらく・・・問題ないだろう。

「分かった。だが俺はお前を信じられない。ミコトさんの言葉を信じるだけだ。」

「あぁ。それで十分だ。」

根賀はそう言うと、ふと笑った。

「それで、なんで急に俺の家に?」

「お前のこれからについてだ。」


 退屈な授業も終わり今は俺の家に根賀とユリが集合していた。

「久しぶりね、根賀さん。姉が亡くなって以来ね。まさかこいつと同じ高校に編入してくるなんて思わなかったわ。まぁどうでもいいけど。」

「俺も色々と忙しくてな。まぁでもお前にわざわざ報告する義務はないだろう?」

・・・気まずい。どうやらこの二人は相性が良くないようで顔を合わせた瞬間からずっと睨みあっている。

「まぁまぁ二人ともお茶でも飲んで一回落ち着けって・・・な?ていうかユリちゃんは何でここにいるの?」

そうユリは別に会う約束をしていたわけではない。むしろ前に説明しに家に乗り込んできたとき以降連絡もなかったのだ。それが俺が家に帰ってきたらすでに家の中にユリが居たのだ。根賀と顔を合わせた瞬間険悪な雰囲気になってしまったため聞き逃してしまっていた。

「ユリで良いわ。ちゃん付けは嫌いなの。ここにいた理由はゴタゴタが落ち着いて時間が取れたから一度情報交換をしておこうと思ってね。それを踏まえて今後の事を考えようかと。なんか余計なのがついてきてるけど・・・」

「余計なのがついてきて悪かったな。俺から言わせればお前の方が余計なんだがな。」

ユリの最後の一言によりまた険悪な状態に戻りかけてきた。

「ま・・・まぁまぁ二人とも俺のこれからの事についてみたいだし、まずは三人で情報の交換をしようぜ!な!」

俺はこれ以上険悪にならないように次の話題へと切り替える。

「そうね。こんな奴に構っていても時間の無駄だしね。さっさとやりましょう。」

「そうだな。その意見には珍しく俺も同意見だ。」

両者は俺の意見に同意しながらもお互いに牽制していく。

「んじゃあまずはユリからお願いして良いか?」

俺はもう仲裁をするより早く終わらせた方が良いような気がして二人をスルーして進めることにした。

「えぇ分かったわ。私からの報告は三つよ。まずは私は明日からあなた達が通う高校に編入することになったわ。」

「へ?」

いきなりの情報に俺は変な声を漏らした。根賀は興味がないのか反応することは無かった。

「なんで編入?」

俺は素直に気になったことを聞いてみることにした。

「同じ学校にいた方が連携とか取りやすいでしょ。あんたはこれから主人公として行動するんだから、いつどんなことが起きてもおかしくはない、だから不測の事態に対応できるようにするためよ。」

確かに昨日の根賀のような事もあるだろうし、近くにいた方が色々と楽だろう。

「分かった。よろしく頼む。」

「えぇ。よろしくね。セ・ン・パ・イ」

ユリは俺をからかう様に言うと微笑んだ。

「お、おう。」

俺はちょっとドキッっとして籠りがちになってしまったが何とか返事を返した。

その反応を見たユリは悪戯が成功した子供のように笑い、二つ目の情報を話し始めた。

「それで二つ目は、今日から私はここに住むことにしたから。」

「は?」

俺はユリの言ってる意味を理解できずに呆けてしまう。

「え?なんで?」

数秒後ユリが放った言葉を飲み込んだ俺は単純な疑問を口にした。

「理由はさっきと同じよ。何かあってもすぐに対応できるようにするためよ。」

「いや、それなら近くに家を借りれば良いんじゃ?」

「ここから5分以内に来れそうな場所がないか調べたけど無かったのよ。まぁ別にあんたの家は何部屋か余ってるみたいだし構わないでしょ?」

確かに俺の家は一軒家タイプの住宅を借りているので部屋には空きがある。だが

「それでも年頃の男女が一緒に住むのは問題があるでしょ?それにユリは一緒に暮らすの嫌じゃないの?」

俺は当然の問いをユリにする。

「何?あんたは命の恩人の妹に手を出すような最低な恩知らず野郎なの?違うでしょ?なら問題ないじゃない。それに私は姉の為なら何だってやるわ。あんただってそうじゃないの?」

「いや、それはそうだけど。でも二人だけっていうのは世間的にも色々と問題が・・・ねぇ。」

すると、ずっと我関せず状態だった根賀が口を開いた。

「それなら俺もここに住むことにしよう。元々俺は柊を守るための話し合いをするつもりだった。柊の家に住むならば俺としても柊を守りやすくなる。」

「え・・・えぇー」

根賀まで住むと言い出して俺はもう訳が分からなくなってきた。するとユリが根賀に噛みつき始めた。

「はぁ?なんで根賀さんまで住むことになる訳?私だけで充分なんですけど。というかもう帰って貰っても構いませんよ?」

「理由なら説明するまでもないと思うが?俺も住むことによって柊が言った世間体はルームシェアという事で問題は無くなるだろう。それにユリ、お前は主人公の因子を持っていない。サポートはできるだろうが主人公同士の問題になった場合直接介入できる俺が近くにいた方が柊も安全だと思うが?」

根賀が淡々とユリが反撃出来ないように追い詰めていく。

「くっ・・・。で・・でも根賀さんには、こいつを助ける理由が無い!むしろあなたならこいつを殺してもおかしくないでしょう!?」

ユリと根賀は長い付き合いなのだろう。ユリは根賀が昨日俺に仕掛けたことをやりそうだと言った。

「理由ならある。ミコトに柊を守ってくれと頼まれたからだ。」

「何を言ってるんです?姉に頼まれた?そんな嘘を信じるわけないじゃないですか!姉はもう居ないんですよ!?どうやって根賀さんにお願いをするっていうんですか!あなたはそんな姉を利用するような嘘をつくような人じゃないと思っていました。私はあなたが嫌いですが姉に対する思いだけは信じていたのに・・・。最低!」

これはマズい方向に進んでいる。恐らく根賀が説明をしても信じて貰えないだろう。根賀もそう思っていたのか俺にアイコンタクトで説明してくれと訴えていた。

「ユリ。」

「何です?」

ユリは俺の呼びかけに不機嫌さを隠すことなく返事をする。

「今、根賀が言ったことなんだがな、実は本当の事なんだ。」

「どういうことですか?詳しく説明してください!」

良かった。俺も嘘つき呼ばわりされる可能性もあったが話を聞いてくれるようだ。

俺は昨日根賀が編入してきてからの事をユリに話した。

「本当に・・・お姉ちゃんが・・・良かった・・・。」

昨日のことを話し終えた後ユリは涙を流して喜んでいた。普段ミコトの事を姉と呼んでいたのがお姉ちゃんと呼ぶくらいだ、おそらくお姉ちゃん呼びが素なのだろう。

「根賀さん。先程は申し訳ありませんでした。」

少し時間がたち落ち着いたユリは根賀に向かって謝罪した。

「いや、構わん。俺が逆の立場ならユリと同じ反応を取ったかもしれんからな。」

根賀はユリの謝罪を受け入れた後に一拍置き再度ユリに話しかけた。

「ユリ、お前は先程俺のミコトに対する思いを信じていると言ったな?それは俺も同じだ。ユリのミコトに対する思いが人一番強いことを知っている。普段はミコトの事で俺たちは仲たがいしているが、どうだろうか?ミコトが蘇らせるまで今までの確執を忘れて協力しないか?俺もお前もミコトを蘇らせたい気持ちは同じだ。それなら俺たちが協力することでミコトを蘇らせられる確率はかなり上がるはずだ。頼む。俺に力を貸してくれないか?」

そういって根賀はユリに頭を下げた。

「そんな言い方はずるいです・・・。」

ユリは顔を俯けたまま小声で一言呟いた後根賀に向かって勢いよく頭を下げた。

「根賀さん。私こそ変な意地を張っててごめんなさい!お姉ちゃんが急にいなくなって不安で・・・。自分勝手かもしれないけど、こちらこそ協力お願いします!」

ユリがそういった後根賀とユリは顔を見合わせ笑った。

その光景を隣で見ていた俺は、ミコトが二人の精神的な支柱に今までなっていたことに気付き、そのミコトを奪ってしまったことを再確認したことで、より一層ミコトを必ず救うと決意したのであった。

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