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僕がなりたい主人公  作者: 白瑠璃
6/8

再開

 「良奴君。柊君。久しぶり!」

呆然とする俺たち二人にミコトは笑顔で挨拶をした。

「ミコト・・・なのか?生き返ったのか?」

根賀は戸惑いながらミコトに声をかけた。

「生き返った訳じゃないと思う。私も良く分かんなくて柊君が危ないって思ったら二人の前に居たの。それに、何となく感じるんだけどあまり長い時間は存在できないみたい。」

「生き返った訳じゃなく存在の力だけが顕現した?でも・・・なぜ顕現出来たんだ?」

ミコトの返答を聞いた根賀は一人考え事をするかのように独り言を呟き始めた。

「あの、ミコトさん・・・」

声をかけるタイミングを見計らっていた俺は意を決してミコトさんに声をかける。

「ん?どうしたの柊君?そんなに険しい顔をして。」

俺はミコトさんに向かって勢いよく頭を下げた。

「あの時は本当にごめんなさい!僕の自分勝手な行動でミコトさんの命を奪ってしまって・・・もちろん謝って済むことじゃないとわかってます。でも・・・!」

俺は顔を上げた瞬間見えたミコトさんの顔はとても険しい顔をしていた。それはそうだろう、自分が死んだ原因が目の前にいるのだ怒らないわけがない。

「柊君。」

「はい。」

俺は凄い恨み節を言われるのだろうと思い身構えた。その瞬間俺はミコトさんに抱きしめられた。

「あの時私は言ったでしょう。気にしないでって。私が柊君を助けたくて助けたんだから。それを君が気にする必要が無いんだよ。むしろ私のためを思うなら気にしないでこれからを生きてくれれば嬉しいなぁ。それに、あの時君が逃げなかったのはきっと運命だったんだよ。その証拠に私の因子は君に取り込まれた。つまり君の主人公としての力があの時あの場所に君を連れてきたんだよ。だから君は悪くないんだよ。」

ミコトさんは俺に怒りをぶつけるどころか俺のことを気遣うように言った。

「ミコトさん・・・。ありがとうございます。俺ずっとあの時自分が逃げていたらって・・・逃げなくってももっと他にうまいやり方があったんじゃないかって・・・そうすれば今頃ミコトさんは生きていてってずっと考えていて・・・。」

俺はミコトさんの温かい声に耐えられずに泣きじゃくりながら懺悔するように話していく。

「うん。確かにそんな未来もあったかもしれないね。でもね私は後悔なんてしてないよ。一人の命を守れたんだもん。主人公としては良い終わり方だと思わない?」

ミコトはそう笑いながら言った。

「むしろ謝らなければならないのは私の方。君には一般人として普通に生きて欲しいって言ったのに私の因子があなたに宿ったことで一般人とは言えなくなっちゃった・・・。でも安心して!主人公でも学園ラブコメの主人公になればいいんだよ!そうすれば学校生活は普通に送れるはずだし好きな人と結ばれるかもしれないし!・・・勿論普通に生活とはいかないけども、一番一般人に近い生活ができると思うの・・・。・・・ごめん。」

ミコトは先程とは打って変わって沈んでいた。

「何を言っているんですか!ミコトさんが居なければ僕はここには居なかった!ミコトさんに感謝こそしても、謝られることなんて何もない!・・・それにあの時僕は言ったでしょう?僕は主人公に憧れていたって。」

勿論俺はミコトさんを生き返らせた後はミコトさんの願い通り一般人として過ごすつもりだ。自分が主人公に憧れていたせいでミコトさんは死んだのだ。主人公になりたい等とは二度と思うことは無いだろう。だが、ミコトさんをこれ以上傷つけないように今だけはまだ主人公に憧れているように振舞うことにした。

「そっか・・・。ありがとう。」

俺の振る舞いに気付いたのかどうか分からないが、ミコトさんは一言だけ返事をするとそれ以上追及してくることは無かった。

「良奴君!」

ミコトは会話を打ち切ると一人考え事をしていた根賀を呼んだ。

「あ?あぁ。どうしたミコト?」

根賀は一度考えることを中止してミコトに向き直った。

「良奴君にお願いがあるの。良いかな?」

「おう。何でも聞いてやる。どんとこい!」

根賀はミコトのお願いに食い気味に反応した。

「本当!?ありがとう!じゃあこれから先、柊君を守ってあげて。ね。」

ミコトは胸の前で手を合わせ根賀にお願いした。

「はぁ?俺が?こいつを?いやいや無理無理無理絶対やだね!」

ミコトのお願いを聞いた瞬間手のひらを返す。

「えぇー?今お願いを何でも来てくれるって言ったじゃない。良奴君のうーそーつーきー。」

根賀の返答を予想していたのかからかう様に根賀を問い詰める。

「でも、こんなこと頼めるのは良奴君位しか居ないんだよ・・・。ユリは自分で抱え込んで無理しちゃうし、ほかの子たちは皆自分勝手だしね。だから良奴君にしかこんなこと頼めないんだ・・・。ね。お願い!」

「その言い方はずるいだろうがよ・・・」

根賀は小声で吐き捨てるように呟いた。

「あぁっ!分かったよ!そいつは俺が何があっても守ってやる!だから安心しろ!」

根賀はヤケクソ気味にそう言った。

「ふふっ。ありがとう。良奴君はやっぱり優しいねぇ。」

良奴をからかう様にミコトは微笑む。

「・・・そろそろ限界かな?」

ミコトがそう呟くとミコトの体が徐々に薄くなっていく。

「ミコト・・・!」

「ミコトさん!」

「そう悲しそうな顔しないでよ。私はもう死んでるんだよ。ここに今存在できたこと事態が奇跡なんだから。また話せたことを喜ばなくちゃ!それに別れるときは悲しい顔より笑った顔の方が嬉しいなぁ。」

ミコトはちょっと困ったような顔をしながらも最後には笑顔で言った。

「二人とも!ちゃんと私の分まで長生きするんだよ。ユリの事よろしくね!」

「ミコトさんに二度も救ってもらったこの命・・・絶対に無駄にしません!本当にありがとうございました!」

俺はミコトさんに向かって勢いよく頭を下げた。

「ミコト・・・。まぁ安心しろよ。ユリ達は俺がしっかり面倒を見てやる。ついでに、こいつの事もな・・・。だから安心して眠ってろ。」

根賀は少し悩んだそぶりがあったが最後には先程まで一度も見せなかった笑顔で答えた。

「うん、ありがと。それじゃあ二人とも元気でね!」

二人の回答に満足したのかミコトはそういうと消えかけていた体が急に光ったと思うと小さな球状になり俺の中に戻っていった。

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