初イベント?
次の日、俺は普通に学校に登校していた。なんでも主人公になるためには何をしたらいいと聞いたところ普通に過ごしていればそういったイベントが勝手に起こるらしい。ということでイベントが起こるまでは普通に過ごすことにしたのだ。
高校の校門をくぐり、自分の教室へと入る。
「よぉー大河!一週間も休んでどうしたんだよ。電話しても出ないし心配したんだぞ!」
そう声をかけてきたのは親友の寺井国広だった。
「あぁ。悪いちょっといろいろあってな。でも俺はもう大丈夫だから。」
返事を返した俺に対して国広は驚いたような顔をした。
「おい。どうしたんだよ、今まで自分のことは僕って言ってただろ?それに言葉遣いもそんな感じじゃなかっただろ?どっちかって言ったら自分に自信がない感じの頼りない感じのしゃべり方だったのに・・・。」
そう、俺は少しでも主人公感を出すためにまずは言葉遣いと一人称を変えることから始めた。こんなことで効果があるかわからないが、とりあえず思いついた事からやっていこうと思ったのだ。
「ちょっと思うところがあってな・・・。やっぱり変かな?」
国広にミコトさんたちの事を話しても信じて貰えないだろうし俺はあやふやに答えることにした。
「まぁ今までそんなイメージが大河になかったからなぁ。遅めの高校デビューってやつ?まぁ俺ら二年生だけど。良いんじゃないか?前より明るく見えるしな。」
国光はそう笑いながら言った。
国光とたわいない話をしながら教室に入る。
「おはよー。」
俺は教室に入ると同時に教室にいる全員に聞こえるくらいの声で挨拶をした。
「えっ?今の柊?急になにしたのイメチェン?」
俺が挨拶をしたことにクラスメイトが驚くのは当然だろう。俺は今まで一度も自分から挨拶をしたことがないのだから。クラスメイトからしたら一週間前までロクに会話もしなかった陰キャが久しぶりに登校してきたと思ったらキャラが変わっているのだ。戸惑わない方がおかしいだろう。その証拠にさっきまでキャラが変わった俺に順応していた国光でさえもクラスメイト全員に挨拶をするとは思っていなかったようで口をあんぐり開けて驚愕していた。
だが俺はそのような反応になるだろうと予想していたので特に動揺もせずに自分の席へと座った。
国光も少し固まっていたがふと動き出すと席に荷物を置きこちらに向かってきた。
「おいおい!本当にどうした!?言葉遣いや一人称が変わったのはまだ良いとしてお前がクラスメイトに挨拶とかおかしすぎるだろ!?一体何があったらそこまでキャラが変わるんだよ!」
国光はよほど衝撃的だったのか俺を問い詰めるように捲し立てた。
「いや、ちょっとね。詳しいことは話せないけど、このままじゃダメだって思ってね。」
俺がそういうと国光はあきらめたように一つ息を吐いた。
「はぁ・・・。まぁ話したくないんだったら無理には聞かないけどさ、ただ俺たちは親友だからな。本当に苦しい時なんかは相談してくれよ・・・。」
「うん。ありがとう。俺も国光が親友でよかった。何かあったら相談するよ。」
「おう。」
本当に国光はいいやつだ。顔立ちがよくて、コミュニケーションも得意でクラスの皆に好かれている、俺とは正反対に位置する存在だ。いまだに何故国光が俺とつるんでくれているのか分からない。ただ俺が国光が居てくれたことで救われていた。
国光と他愛ない会話をしているとホームルームのチャイムが鳴った。
国光がまた後でなと自分の席に戻ると同時に先生が入ってきた。
「皆さんおはようございます。今日はホームルームの前に皆さんに大切なお知らせがあります。なんと、急ですがこのクラスに転校生が来ることになりました!」
担任の佐藤先生がそう告げるとクラスは一気に盛り上がった。
「先生!男の子ですか?女の子ですか?それとも男の娘ですか?」
「馬鹿野郎!女の子に決まってるだろうが!いや・・・でも男の娘も有りか・・・?」
「えぇーイケメンの男が良いなぁ。このクラスイケメン殆ど居ないし。」
「おい女子ぃ!今失礼なこと言わなかったか!?」
クラスが転校生の話題で盛り上がっているころ俺は考え事をしていた。
俺が学校に復帰した日に急な転校生?・・・これはもしかして主人公へのイベントなのでは?となるとこの転校生は・・・ユリか!
「はーい。じゃあ皆さんお待ちかねの転校生の登場です。入ってきてー!」
ガラガラッ
教室のドアが開き現れたのは
「キャー!イケメンじゃん!まじカッコいい!」
「イケメン・・・だと・・・。俺たちの女の子や男の娘との楽しい青春は・・・?」
そう現れたのはユリでは無く見た目が不良のように目つきが鋭い男であった。
あれ?誰だ?ユリじゃない?じゃあこれはたまたまなのか?
「じゃあ転校生君に自己紹介をしてもらいましょう。どうぞ!」
「根賀良奴だ。」
・・・・・・
根賀は自分の名前を告げるともう用は済んだとばかりに黙った。
「えぇっと根賀君は恥ずかしがり屋なのかな?でももうちょっと頑張ってみようか?例えば趣味とか、これからやりたいこととか・・・何かないかな?」
佐藤先生が根賀に尋ねた。
「やりたいことか・・・。それならある。むしろその為に俺はここに来たのだから。」
根賀はそういうと俺のもとに歩いてきた。そして俺の目をまっすぐ見つめると俺に告げた。
「柊大河。俺と神崎ミコトの存在をかけて勝負しろ。」