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僕がなりたい主人公  作者: 白瑠璃
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運命の日

 あの出来事から一週間が過ぎた。僕はその間家から一度も出ずに引きこもっていた。彼女を殺してしまったという事実を受け入れられなかった。幸い主人公に憧れていた僕は一人暮らしのために実家から遠い場所の高校を受けた為僕に構う人が家に居ないのは不幸中の幸いであった。今日も一日ベットで布団の中に籠り自責の念に駆られ後悔する日常を送ろうとしていた。

「ちょっと、あんた!起きなさい!」

・・・どうやら幻聴まで聞こえるようになってきたみたいだ。誰も居ないはずの家で自分以外の少女のような声が聞こえる。

「おーい。寝てんの?」

布団越しに誰かに指で突かれる様な感触があった。幻聴ならともかく、実際に触れられるような感触があるのは流石にあり得ない。本当に誰かが部屋の中にいるのだろう。こちらに話しかけてくるということは強盗や泥棒といった類ではない。少なくともこちらに敵意は無いと見ていいだろう。まぁ強盗であろうが何だろうが、もうどうでもいい。

「い・い・か・げ・ん・に・・・起きなさいよぉおおぉぉぉぉ!」

「がっ・・・!」

おそらく少女であろう声の主が声を荒げるとベットの上で布団にくるまっていた僕を勢いよく蹴り飛ばした。

「いった・・・」

「目は覚めたかしら?」

「一体何が・・・?」

布団から叩き出された僕は現状を確認しようと僕を蹴り飛ばした少女に目を向けた。

「えっ?」

そこにいたのは一週間前僕を助けて死んだはずの神崎ミコトと瓜二つの少女だった。

「何よ?何度も呼び掛けたのに起きなかった、あんたが悪いのよ。」

僕が呆然としていると何か勘違いしたのか少女はそう言った。

「神崎さん・・・?」

「私はミコトじゃないわ。神崎ミコトの妹、神崎ユリよ。」

僕は目の前の光景が信じられずに彼女の名前を呼ぶと、少女はこちらを睨みつけながら否定した。

ミコトさんの妹・・・それが本当なら僕を恨んでいるはずだ。

「僕にミコトさんの復讐をしに来たのか?」

「当たり前でしょ!あなたは姉の仇なんだから!」

と、彼女は僕を責め立てる。彼女は僕を許すことは無いだろう。だが僕はそれを受け入れなければならない。それがミコトを殺してしまった僕が背負っておかなくてはならない十字架である。

「あなたを殺しに来たの・・・と、言いたいんだけど、あなたは姉が命がけで守った人、そんな人を殺したら姉の命が無駄だったことになるわ。」

「僕を・・・許すというのか?」

「はぁ?許すわけないでしょ!あなたは生きてその命、寿命で尽きるまで生きることで姉に償いなさい!」

彼女は僕の目をしっかりと見つめそう伝える。

「だから・・・いつまでも家に引きこもってないで、ちゃんと過ごしなさい!それが姉があなたを助けた意味になるのよ!姉の死を・・・無駄にするんじゃないわよ!」

!?確かに彼女は別れ際に僕に前を向いて生きるように言っていた。今の僕の行動は命を懸けて守ってくれた彼女を裏切っていることになる。僕は自分のことばかり考えて・・・あのときミコトを死なせてしまった時と何も変わらないじゃないか!

「まぁ、あんたを生かす理由は他にもあるんだけどね。」

「えっ?他の理由?」

彼女はそう前置きを作ると僕に告げた。

「そう、あんたには姉が持っていた主人公の因子・・・その欠片が宿っているわ。」

「主人公の因子?欠片?一体何のこと?」

僕は初めて聞く言葉に首をかしげる。

「分からなくて当然よ。普通に生きていれば一生かかわることのない言葉なんだから。安心して。ちゃんと一から説明するから。」

「分かった。とりあえず長くなりそうだしお茶でも持ってくるよ。

僕は頷くと彼女をソファーに腰掛けるよう伝えお茶を取りに行った。

「お待たせ。」

お茶を持って部屋に戻ってくると彼女はソファーに姿勢よく座っていた。

「ありがとう。それじゃあ説明を始めましょうか。」

彼女はお茶を受け取り僕が向かい側に腰を掛けたのを確認すると話し始めた。

「まず、この世界は一般人、通称モブとそれ以外に分けられるわ。モブというのは主人公や悪役などに属さず、どんな行動を取ろうと世界に影響を与えない存在・・・殆どの人たちはこれに属するわ。そして重要なのはここから、主人公や悪役、それに脇役等呼ばれる人たちのことよ。まずは主人公について説明するわ。主人公というのはその人物等が歩む人生が世界や個人に大きな影響を及ぼすものを指すわ。まぁよく小説やらアニメとかで主人公の周りに事件やら普通では起きにくいイベント等が多いでしょ?そんな感じよ。要するに存在するだけで良くも悪くも影響を与える存在・・・それが主人公。私の姉も主人公だったわ。次は悪役についてね、悪役は世界や個人に対し敵であることを義務付けられた存在、基本的には何かに強い恨みや憎しみを抱いた存在がなりやすいわ。一部の例外を除けば私たち主人公サイドの敵ね。最後に脇役についてね。これは簡単よ、主人公や悪役に関わった存在の大半は脇役になるわ。まぁ同じ脇役でも主人公や悪役との距離でランクは変わるわ。とりあえず簡単に説明するとこんな感じね。ここまでで何か質問はあるかしら?」

凄い簡単にまとめてくれたのだろう。思ったより説明が短くて驚いた。とりあえず疑問に思ったことを聞いていこうと思う。

「取り合えずいくつか聞きたいことがあります。まず、さっき主人公等について説明した時に存在や人物等って言っていたけど、人以外がなることもあるの?」

そう質問すると彼女は驚愕した表情を浮かべた。

「意外としっかり話を聞いていたのね・・・。話が長いから流し聞きしているのかと思っていたわ。ごめんなさい。」

なんとも失礼なことを思われていたようだ。

「流石に自分に関係あるなんて言われたら真剣に聞くよ。それで、どうなの?」

「そうね。あなたの予想通り猫や犬などの動物、生きているものにはその資格があるわ。一部の人たちは無機物もなるのでは無いかっていう人もいるけど確認されてない以上憶測の域は出ないわ。」

成程、犬猫は予想していたが無機物も確認されてないだけで可能性はあるということか。

「そうなんだ。分かった。次は悪役で一部例外があると言っていたがそれはどういう意味なの?」

「それは簡単よ、悪役が主人公サイドに寝返るパターンよ。よくあるでしょ?最初は敵だったけど何度も対立しているうちにいつの間にか友情が芽生えて最終的に一緒に真の敵に立ち向かう・・・的な感じのが。」

僕は一部違和感を覚え質問をする。

「それなら、主人公が闇落ちした場合も悪役になるってこと?」

「それは違うわ。主人公が闇落ちした場合はダークヒーローになるだけ。主人公はであることに変わりはないわ。あとは何かあるかしら?」

「いや、大丈夫だよ。あまり一気に聞いても覚えきれないだろうし・・・。」

「そう、じゃあ本題のあなたに宿った主人公の因子の欠片について話しましょうか。」

彼女は一気に話して疲れたのかお茶を飲み一息つき、また話し始めた。

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