魔王と俺
サンフォール国、ダマド領。
非常に小さな田舎だが、昔はそこそこ栄えていたそうで、神殿や王族の城もある。既に廃墟と化しているが。
俺は暇だったので、暇潰しにその廃墟を荒らしてやろうと思い立った。
暇だったというより、今日の学科は体術系が多く、体術が苦手な俺は模擬戦闘で皆の前で無様な姿を晒したくないだけだった。
体術か、魔法、どちらかが得意だったらいいんだ。いずれ卒業し、この世界に蔓延る魔物を殲滅すると決めているんだ。だから、いいんだ。サボっても。
幸い魔法は得意で、校門の結界をなんとか誤魔化し(あと一歩のところでうっかり隠蔽魔法を解いてしまい、警護獣に少し追われたが何とか巻くことができ)、神殿に着いた。
幼いころから、ここには獰猛なモンスターが居るだの即死魔法トラップがあるなど聞かされてきたが…。
そんな獰猛なモンスターが表に出てきた話もないし、いてももう数百年だ。餓死してるだろう。
それに、即死魔法トラップがあってもなんとかなるだろう。俺は魔法が得意だが、その中でも特に逃げ、回避、解除の魔法が得意だし、隠し玉だってある。
気力は充分。いざ、中へ!
神殿は地上4階で、この国の神であるアラントゥスを崇めていたそうだ。
そのアラントゥスは普段は人の姿をしているが、有事の際は姿形を変化させ、
恐ろしい人馬の姿になり槍を振るいすべての魔物を殲滅したという。
が、中には手に負えず、神殿の地下深くに封印した魔物もいるとかいないとか。
そう、俺の目的はその魔物に会いその力を奪うことだ。万が一失敗しても…どうにかなるだろう。例え解放してしまったとしても、サンフォール国の兵隊は世界でも上位の強さを誇るんだ。
10分ほど、1階を調べてみた。
教科書に載っていた通りの装飾。壁画。構図。
かすかに残る魔力を感じ取った。
毎日神に祈りを捧げ、国の安泰を願っていたようだ。まぁ、その願いもむなしく、昔ここら一体は戦場となり焼き尽くされ、帝都を移すハメになったようだが。
さて、ここからだ。まずは地下に続く道を探そう。
調べた限り分かりやすい入り口は無かった。
となれば…魔力あるものだけが入れる専用の扉か…?
しかしそういった類は探すのに苦労する。なんせ、そのものの魔力が鍵になっており、必要だからだ。
物理的には真下なんだ。俺は、無理やり床を貫通し地下に行くことにした。
お目当ての地下だ。と、落ちた場所が悪かった。吹き抜けている。地上と同じくらいの高さ、地下があるぞ。
このまま落ちるものか。咄嗟に俺は風魔法で浮きつつ、ゆっくりと下降した。
そして無事に着地した。
床ではない別の硬さを足裏に感じた。
やはり地下は暗い。灯明魔法で辺りを照らし、足元を見る。
不規則にならんだ…あぁ、鱗のような…教科書には載っていない、模様だ。
背筋が凍った。まさか。いや、本当にいるなんて。
心のどこかで、地下がなかったり、地下があっても何も無かった、というのを期待していたようだ。
後悔した。逃げよう。ここから、すぐに、今すぐ!
凄まじく凶悪な魔力。そのままだと…耐えられず死ぬかもしれない。
風魔法で急速に飛び上がり、地上を目指した。が、心が乱れており灯明魔法は消え距離感が掴めず天井にぶつかってしまった。
最悪だ。痛い。落ちて…起こしてしまったら殺されるだろう。
せめて…まずは衝撃を和らげて…!
再び風魔法を使い、意識が続く限りゆっくりと下降した。
そして、意識が途絶えてしまった。
気がつくと、神殿の入り口にいた。
体はまだ痛い。様々な違和感もあるし、こりごりだ。
久々に怖い思いをした。もうここには近づくまい。
日も暮れかけている。早く家に帰ろう。
歩みを進めた時、声がした。
「外へ出してくれてありがとよ。」
あぁこの声は…だだ漏れの凶悪な魔力も感じる。
「アラントゥスに恨みがあってな。情報収集のため、暫くお主に付き合わせてもらうぞ。」
激しい後悔とほんの少しの安堵。
「あ、あの、すみません、起こしてしまって。アラントゥスなら、もうここにはいませんよ。ですので、はやく、はやく、東にある帝都へど、どうぞ。」
「アラントゥスは私と相討ちしたはずだ。もっとも、私は若干の肉体が残っており数百年かけて再生したがな」
「奴はどうかわからん。それに、数百年だ。世界の様子を見てから仕掛けるとしよう。」
「私は…お主らの言葉でいう、魔物…の王である」
大変なことになった。殲滅したいはずの魔物の王を目覚めさせてしまった。
それも、神を殺しこの世界を手中に治める気だ。
俺は何も考えられなくなった。




