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参点五本目 解決披露宴

「えー、本日は『連続ビル倒壊事件』の解決記者会見を始めます。今回の事件は無事犯人逮捕に至ることができました。昨日有罪判決も出ました。解決にはこちらの、糸玉異能力探偵事務所の有田川由良さんと有田川美浜さんのご協力いただきました。詳しくは配布した冊子をご参照ください。では、質疑応答に移ります。挙手していただきますと、こちらでご指名いたしますので、所属・氏名の後、ご質問をしていただきますよう、ご協力をお願いいたします。では、早速そちらの青いネクタイの女性から」

「はい。██新聞の嶋田です。まずは事件解決おめでとうございます。では、質問です。今回の事件、犯人は魁氏であると多くのメディアが報道していました。しかし捜査を続けられたのはどうしてですか」

「えー、個人情報になるので詳しくはお話できませんが………あ、すみません、双子で分かりにくいですよね、向かって右の私が姉の由良、向かって左の彼女が妹の美浜です。さて、脱線しましたが、先程の理由はS氏の身近な人から依頼があったからです。そもそも、我々は探偵ですので、依頼がなければ、人が死のうが、海が割れようが、動きません」

「なるほど。ところで、真犯人逮捕の経緯を教えてください」

「あ、それは配布資料の42ページに…」

「いいですよ、お話しましょう。まず聞きこみ調査を実施したのですが、難航しました。テレビも新聞も雑誌もラジオもどこもかしこも『S氏の犯行だと、警察関係者への取材で判明した』などと報道していただいたおかげで。先入観というのは恐ろしいものでしてね、S氏の悪い印象だとか、前科の噂だとか、そんなものばかりでしたよ。そこで今度は、事件現場を見て回ったのですが、そこでもあなたがたの報道のおかげで、『もう解決した事件をなぜ調査しているのか』と言って、なかなか見せていただけませんでした。承諾してくれた会社は2社だけでしたよ。途中で調査協力いただけなかったら、解決には漕ぎ着けていなかったでしょう。彼の建設会社に落ち度がなかったかの検証に、同行させていただきましてね。全部見て回って、手口がビルの基礎を溶かすという、完全にヴィーナスのものでした。この時点でキードの文字は『溶』か『熱』辺りだと予想できました。そういえば後から知ったのですが、S氏が所持していたキードは『溶』だったらしいのであなたがたの報道もハズレではないですね!」

「………そうですか。」

「しかし問題は溶かし方でした。最後に見たビルは保存状態が良く、詳しく調べられたのです。すると犯人はビルが崩れるのに必要最低限だけ溶かしていたことが分かりました。これは、前述の彼に確認しましたし確かですよ。これで建築に関してはトーシロのS氏は除外されます。残念でしたね!もう少し調べればすぐ分かったことだったでしょうけどね!」

「………………はぁ、はい」

「ここで皆さんお気付きでしょうけど、調査協力をしていただいた彼、ここまで同行してもらえました。つまり、今回倒されたビルには、S氏の以前務めていた会社の系列店が入っている以外に、もうひとつ共通点があったわけですね。後は、まだひとつだけ条件に当てはまるビルが残っていたのでそこに張り込んで、現行犯で捕獲しました。最後にキードを使われそうだったので、こちらも対抗して使用しました」

「なるほど、それで犯人は誰だったんですか」

「知りませんよ。それこそ資料に書いてあるでしょう。私は、次の現場を予想して、そこに立てこもり、現行犯で捕獲しただけです」

「えぇ………、もう少し推理とかないんですか」

「その推理でS氏とその親しい人の生活をめちゃくちゃにした後でしょうが。まだ言いますか」

「そ、それは、そうかもしれませんが」

「そうですよ。あなた方メディアは民意代表みたいな顔して、状況証拠にすらならない要素で人を叩き、挙句真犯人が出てきたら平気な顔して良かったなぞとほざき、謝罪のひとつもしない。だけどメディアだけじゃないですよ。たまに謝罪文掲載したりしますからね。でも、まだ謝罪する人は居ますよね。適当なコメント吐いてたタレントだとか、コメンテーターとかいうよくわかんない職業を傘に着て、なんだかんだと無責任なことを駄弁る人。手前の影響力に見合う責任を取りなさいな。あなた方は推定無罪って言葉を知らないんですか。だから私は、自供も取れて正式な証拠も出て、有罪判決が出るまで待ったんですから。しっかりまるっと謝罪してもらいますからね。聞いてますか生放送してるスタジオの皆さん。それとももう生中継は切られてるんですかねぇ?!」

「お姉ちゃん、もうこの辺でいいでしょ。言いたいことは言ったし。それじゃあ、他の質問が無かったらお開きにしますけど………あ、無さそうですね。なーんだ反論のひとつも無いんですか。せっかく反論されても答えられるように色々考えたり、資料揃えたりしてきたのに。全くの無駄でしたね。まぁ、いいですよ。ではまた」

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