恋愛遍歴0m
人と人とのつながりには
形がない定義もない。
明確な答えもない。
だから、不安になってしまう。
つまらない人と思われていないだろうか。
嫌われていないだろうか。
いつか、愛想つかされるのではないか。
どうすれば、人を信じられるの?
私は小さい頃から人の顔色をうかがってきた
本音と建前を明確に分けて、本音は覆い隠していた。
友達と話す時は、大抵聞き手にまわって
その人の望むような返しをした。
自分自身をさらけ出すという事ができないのだ。
友達にも
「たまには、実久も話題をふってよ」
と、話しを振られても、
戸惑う事しかできず、何も言えなかった。
高校に進学すると、周りは知らない人ばかりで、
新たに人間関係を作らなくてはいけなかった。
しかし、今まで、
積極的に人と話しかけるという事を
今までしてこなかった私には
とても、困難なことだった。
5月に入ると
もう、大抵の人は
仲良しグループが決まっていた。
だけど、私は未だに誰とも打ち解けていなかった。
そんなある日。
廊下を歩いてると、
「佐藤さん、ちょっとまって!」
と、呼び止められた。
声を掛けてきた子は
同じクラスの・・・
まだ、名前も覚えてない子。
「えっと、何?」
「うん、あのさ、佐藤さんっていつも一人でいるでしょう?
だから、うちらのグループに入らない?」
名前はまだ、覚えてなかったけど、
その子の事とその子の連れの子は知っていた。
おとなしく、地味目な感じの人たち。
私と似たタイプだったので、
その申し出が嬉しかった。
「うん・・・ありがとう」
「いいよいいよ。じゃあ、よろしくね」
「私のことはトモって呼んで。
私もミクって呼ぶね」
グループに入っても、
相変わらず、聞き手にまわって
友達に同調していた。
部活やテレビ、恋愛の話し、
いろんな話題が飛び交ってる。
年頃の女の子達はやっぱり
恋愛話しに花を咲かす。
トモと連れのケイは
どちらも彼氏がいたから
その話し中心だった。
二人の話しに耳を傾けて聞いてると、
「ミクも彼氏とか作ったらいいじゃん」
「そうそう、そして、ミクの恋バナも聞きたいな」
いきなり、私の方に話題がいった。
「え、でも、好きになるって気持ちがわからないよ」
「えー!!だって、もう高校生だよ。
初恋はとっくに済んでるもんじゃない!?」
二人に凄まれて、
一瞬、たじろぐが、
思い切って私の考えを言う。
「だって、そういう気持ちが分からないんだもの。
好きってどういう事なの?
どんな状態になったら恋したってことになるの?
よく分からないよ」
「うーん、だから、
気がついたらその人のことを考えてるとか
もっと、自分を知って欲しいとか
そういうのが恋かな?」
トモはちょっと変な顔してこたえてくれたが、
ケイが
「えー、私の場合ほとんど一目ぼれだよ!
もう、出会った瞬間好きになるの」
「ケイはじっくり好きになったことがないからでしょう」
「だったら、トモは考えすぎて何も言えなくて
誰かに取られちゃってるじゃん。
恋は瞬発力だよ」
「えっと・・・二人の話し聞いても
ちょっとよく分からないかな・・・」
「私たちだって
ミクみたいに恋したことがないっての分からないよ」
「ってか天然記念物じゃない?
この年で恋したことないのってー」
「そういえばミクって男の子と話さないよね
もしかして、男性恐怖症とか?」
トモが突っ込んで聞いてくる。
「うーん、私の場合
男女関係なく話しをするのも苦手だからさ」
「あー、そうだね。私が話しかけるまでミク一人だったし、
今も、うちら以外とはぎくしゃくしゃべるもんねー」
キーンコーンカーンコーン・・・
予鈴がなった。
そこで、この話しは終わった。
正直、ホッとした。
これ以上突っ込まれたら、かなりキツイ。
前よりは平気になったけど、自分のことを話すのは苦手だ。
それに、いたい言葉だけど、本当の事だ。
私は限られた人の中でしか、しゃべれない。
トモとケイとだってここまで打ち解けるのに
かなりの時間を要したんだから。