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お久しぶりです。ようやく新作が出来ました!

私は生まれたときから両親の実験体(モルモット)だった。

喋ることも許されず反抗することもできない。

すべての知能は機械で強制的に入れられた。

彼らの命令でたくさんの実験体を殺した。

痛かった。

辛かった。

泣きたかった。

逃げたかった。

死にたかった。


でも彼らはそんなことを許さなかった。

いつまで続くのだろうか…このまま私は一生彼らの実験台なのだろうか。


私に与えられている部屋は他の実験体よりも豪華だ、豪華と言ってもベットと本棚があるだけ…でも本を読む事ができるのは嬉しい、今も物語を読んでいるが誰かが部屋に入ってきた。


「実験の時間よ、来なさい」


この人は私の母らしいが本で読んだ自分の子供に与える愛など全くもって与えられていないが。

見知った廊下を歩いてゆく、時々私と同じ実験体たちとすれ違う…その表情は様々だ。嘆き悲しむ顔、怒りに満ちた顔、絶望に染まった顔…皆自分たちと同じ人間に実験台として扱われている。

ここは研究室で白衣を着ているのは全員この研究室にいる研究者…研究室はここの他にも存在していて、実験体たちは子供の頃に攫われてきたり拾われたりと様々。


「ここに寝て」


母の言うとおりにベットへ横になる、様々な機械が取り付けられ最後は頭に何かを付けられた…この機械は知っている、彼女たちの実験内容に関わる機械だ。その後母はすぐ部屋から出た、そして数分後に実験は始まった。


「…ッ!ぁッ」


全身に刺すような痛み、頭が割れてしまいそうなほど…何か強い力が入り込んでくる。

数秒間これが続き機械が外される…彼らの実験はこの世に存在している能力を人間に埋め込む、そして兵器を作ろうとしているのだ。


「終わりよ、着いて来なさい」

「…」


返事はしない…いや、出来ないのだ。話をしていた記憶はあるのだが…実験なのか、ただ声をだすことを忘れただけなのか…今ではもう覚えていない。自分が何歳なのかも分からない、それなりに生きているというのは分かる程度だ。

体が痛い…フラつきそうになるのを堪えて足を動かす、たとえ倒れても起こされ自分で歩かせるのだ…この人は一応私の母のはずだが親愛なんてものは少しぐらい感じられても良いような気がする。父親は完璧に実験体としか見ていないが母親は…少なからず情はあるらしい。時折何かを思うような目で見てくる、ただそれだけ。


「これからいつものようにやってもらうわ」


いつもというのは他の実験体に向かって先程取り込まれた能力を使い、どの勢力なのかを調べ上げることだ。向こうの実験体も防御する能力の実験をしているわけなのだが…大体の実験体は私の放つ能力に防御が追いつかず死んでいく。どうやら私の元ある魔力のようなものが大きいらしい、だから私は他の実験体より待遇が良いのだ。


「今回やるのは闇の力よ、主に影を使って相手を攻撃しなさい」

「こちらの準備完了しました」

「分かったわ…ではいつも通り、最大限の力で」


声が出ない代わりに私は頷く、彼女はもう一人の研究者と隣の部屋にいる監査室に入っていった。その姿を見て私は今回最初で最後に見る実験体を見た、私と同い年くらいの女の子…私は自身の姿を鏡でしか見たことがないのだが…そんな彼女の表情は怯えている。私以外の実験体は皆この建物の隣にある収容所にいて実験になるとここへ連れて行かれる、収容所では4人部屋になっており会話が禁止されているわけではない。だからだろうか、どうやら一人だけここに住んでいる私のことを悪魔とか死神とか呼んでいるらしいのだ…ちなみにこれは母親から聞いた話である。


「ッ…ひッ…」


彼女も私の事を聞かされているのだろうな、攻撃能力でも防御能力でも人を殺せる悪魔と死神とかね。怯えている彼女は震える体を必死に動かし防御を張る、私はそれを見ながら右手を彼女の方へ伸ばし自分の影を鋭く彼女へと飛ばす…影は床から宙へと動き、防御を壊して彼女の胸を貫いた。倒れる彼女を素早く影を抜き操ってゆっくりと倒していった、私が近寄りその表情を見ると恐怖と絶望が合わさったような顔をしていた…即死のため開いたままの目を閉じておいた。

ここでいつも来るはずの人達が来ない、何故だろうと思った瞬間扉が開き母親がやってきた…だが彼女の表情は険しい、どうしたのだろうか。


「…?」

「今、研究所の門から機密組織が侵入してこちらに向かっているという連絡が来たわ。彼らの狙いは研究所の制圧…違法実験を行っていることがバレたのね。恐らく所長やこの研究所の上の人間は殺されるわ、私もね」


母はこの研究所でも上位の人間だったのか。


「あなた達実験体は保護されるわ」


母の耳に付けている機械から争っている音が聞こえる、もうここの中心は制圧されるだろう。


「夫も…あなたのお父さんも殺されているわね。だから私も行かなくては…最後にこれを渡すわ」


そう言って母は私に何処かの鍵を受け取った…母はこれから殺されに行くのだろう。


「実の娘を実験の材料にさせた私達を憎みなさい」


そう言って母は死んだあの子と私を残して去っていった…ここにいてもいつかは制圧されるのだからと自分の部屋へと押しを進めた。今思えばここにある本はすべて母が置いていった物だ…母は部屋を出る時泣いていた気がする、それにしてもこの鍵は何処の鍵なのだろう小さなキーホルダーが付いた鍵…何故私に託したのだろう。

廊下が騒がしくなってきた、もうすぐここにも来るだろう。実験体は保護されると言っていたが私は殺されてもいいと思う、私が生きているのを見て他の実験体はどう思うのだろうか…共に過ごしてきた人達は情があるはずだ、きっと私を恨んでいるのだろうな。

そう思った時扉が開かれた。扉の方を見ると入ってきたのは若い男の人だった、私とはそんなに歳が離れていないと思う彼は驚いた表情をしていた。


『夕陽?』

「…子供を発見した、恐らく実験として使われていた子だ」

『んじゃあこっちに連れてきてくれ』

「分かった」

「制圧完了しました!」

「ご苦労」


私は静かに彼を見ていた、彼も同じく私を見ていたが私に手を差し伸べた。


「行こう」


この手を取ったら私はどうなるのだろうか…本当に保護されるのか殺されるのか、でも私を見る彼の目はどこか安心される。だから私は彼の手を取った、もう片手で鍵をしっかりと握って。

彼に手を引かれたどり着いた場所は職員室だ、ここで研究者達は個人個人の仕事をいていたのか…母の机もあるかもしれない。


「お、来たか」

「お疲れ様夕陽、その子ね?」

「ああ」


彼は夕陽(ゆうひ)というのか。


「こんにちは、言葉は分かる?」


頷く。


「自分の名前は分かる?」


名前?そういえば名前なんてもの私にはあるのだろうか。


「…名前、知らないの?」


頷くしかない、事実だし。


「そう…ところでその手に持っているのは何かしら、鍵?」


何処の鍵なのか、母もあの後どうなったのか分からない…私が机を見ていたら女の人があるき出した。


「この鍵はロッカーの鍵みたいね、この鍵の形は…この机の引き出しに使えるみたい」

「でもこの机全部にあるぜ?」

「この鍵は誰から貰ったの?」


母から…でもどうやって伝えれば良いのだろうか。


「声が出せないならこの紙に書くと良い、字は書けるか?」


夕陽という人に言われ私は頷き、紙に文字を書いていく。


”さっき、女の人から”


「女性?」


”自分も殺されるって言ってた、あと夫と所長も。たぶんその人上層部”


「…確かに上層部の人間は全員捕獲、所長と副所長は死亡したわ。捕獲者の中に女性が一人いたわね」

「ああ、そうなると彼女がこの鍵を渡したってわけだ」

「上層部の部屋はこことは別の部屋になるはずよ…行ける?」


女の人が渡しに目線を合わせるように話してくれた、私はもちろん大丈夫だから頷く。


「そういえば摩耶(まや)、この子どうするんだ?実験に使われていた奴らは皆保護してもう移動しただろ?」

「そうなのだけど…彼女、他の人と違う気がするのよね。それに見なさい圭佑(けいすけ)、珍しく夕陽に懐いているし夕陽が抱っこしているのよ?」

「おお…」

「…なんだよ」

「いや、すごいと思ってな」


いつの間にか私は夕陽に抱っこされていたのだろうか…それにこれは彼にしては珍しいことのようだ、私も初めて抱っこされた。


「着いたわ、ここよ」


部屋に入ると先程の部屋より少し豪華だった、夕陽に降ろしてもらって母の机を探す。上層部に女性は彼女だけなのですぐに見つかった、母の机にある鍵の付いた引き出しを見つけ鍵を差し込んで回すと引き出しが開いた。


「これ…すべて貴方に関する情報よ」


摩耶の言葉通り中に入っていたのは全て私についての情報だった。生年月日や生まれた時の体重の他に父と母の名前も書いてあった、そして何より…。


葉山陽和(はやまひより)、これが貴方の名前ね?…これ、生まれた時の写真じゃない」


写真には生まれたばかりの赤ん坊を幸せそうに見つめる父と母の姿が写っていた。でも…なんだろう、母が赤ん坊を見つめる目が少し悲しそうに思える…もしかしたら私は生まれる前から実験体になることが決まっていたのだろう、そして母はこの先の未来を見据えていたんだ。


「この男、殺された副所長じゃねえか」

「やはりそうね、この女性も捕まった上層部の人だわ。陽和ちゃんのご両親はこの研究所の職員で、生まれたときから実験体として使われていたんだわ…なんてことを…実の娘なのに」


ここにいた他の実験体は皆攫われて来たり孤児の者が多いらしい、ここの他に研究所はたくさんあり摩耶達もたくさんの人を見てきたが実の娘を実験体として扱っていたのは私が初めてだそうだ。


「…この生年月日、陽和は16歳なのか」

「は?マジ?」

「16歳になるわね…どう見ても10歳ぐらいなのに。夕陽の一つ下になるのね」


私16歳なのか…鏡で見た自分は幼いからもっと下だと思ってた、夕陽も17歳とは思えないのは大人びて見えるからか。


「あとこれ…今までの実験内容だわ、これは戻ってからボスと相談ね」

「だな」

「声がでないのは元からか?」

「声は出せるみたい」


ってことは単に声の出し方を忘れただけなのか。


「とりあえずこの子を連れて戻った方がいいわね」

「んじゃ俺言ってくるわ」


圭佑が部屋を出て摩耶が書類を大切に持ち出す。


「流石にその服では風邪引くわね」

「そうだな」


摩耶たちは制服みたいな服装をしていた。夕陽は着ていたジェケットを私の肩に掛けまた抱っこした…ちなみに私は血の付いた白いワンピースしか着ていない、長袖なのだが生地が薄い。

初めて外に出たのだがたくさんの人がいた、夕陽によると皆仲間らしい。本の絵でしか見たことのなかった車に乗って移動する、外は暗くて夜だった。私は一つ絶対に聞きたくて手に持っていた紙にペンを走らせた。


”捕まった人達はどうなるの?”


「捕まった奴らには情報を吐いてもらう、最終的には人を見て処分が決まる」


”殺されるの?”


「大体そうだな」


母もそうなるのか。


「陽和はお母さんに会いたい?」


摩耶の言葉に私は頷く、母に伝えたい事があるから…伝えないと行けない事があるから。


「そう、分かったわ。そのように手配しておく」

「良いのかよ」

「この子の母親よ?本人の希望もあるのだし、ボスにも言っておくわ」


車が止まった、どうやら到着したらしい。車から降りてその建物を見ると驚愕した…西洋のお話に出てくるような館だった。


「無表情ながらに驚愕ってのが分かるな」

「そうでしょうね」

「陽和」


呼ばれて夕陽を見る。


「行こう」


伸ばされた手を握り歩き出した。


ここから始まる、私の第二の人生。




誤字・脱字がありましたらお知らせください。

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