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 薄暗い部屋だった。

 小さな窓枠に縁取られた外の景色が、暗いからかもしれない。

 部屋の隅に、たった一つの手燭が置かれており、その光が少女の姿を浮かび上がらせている。少女は粗末な木張りの床に倒れていた。


 たしかに見えているのに、手が届かない。

 伸ばした手が、愛しい少女に届かない。


 リオネルの胸は、哀しみと絶望と無力感に支配された。

 ああ、この手は、なにも守ることができない――――。


 身体の底からこみあげてくるなにかに、叫び声をあげそうになったときだった。

 どこかから声が聞こえた。

 リ……ネ……。

 この声は……。


「リオ……ル! リオネル!」


 深い泉の底から、強い力で水面へ引っぱられるように、青年の意識は急速に覚醒した。瞳に映ったのは、薄明るい室内。そして、よく見知った赤毛の男。

 衣類が身体に張りつく不快な感覚がある。多量の汗をかいていたようだ。

 脳裏に、夢の残像がこびりついて消えない。


 リオネルは、昨夜の出来事をはっきりと覚えていた。

 あれが、すべて夢であってくれたら――。


「アベル――」


 両手で顔を覆うリオネルに、ベルトランは気遣わしげに声をかける。


「大丈夫か。うなされて、おまえは何度もアベルの名を呼んでいた」

「アベルは」


 リオネルの声はわずかにかすれていた。


 みなまで聞かずとも、ベルトランには分かる。この青年がまっさきに知りたいことが何であるかを。

 けれど、その答えはけっして彼が切望しているものではなかった。


「戻っていない」


 だから、短く答える。このような報告をしなければならないほうも、聞くほうも、辛いことだった。


 アベルが戻っていないことを知ったリオネルは、顔を覆っていた手を握りしめて拳をつくる。そして、


「アベルを――助けに行く」


 と口にするやいなや、寝台から出ようとした。


「リオネル」

「おれの身はどうなってもいい、死んだってかまわない。アベルを助けに行く」

「リオネル!」


 ベルトランの強い語調には、諭すような響きがある。

 愛する相手を助けに行きたい青年は、叫ぶように言葉をぶつけた。


「アベルがどうなってもいいのか! 今このとき、この瞬間にも、彼女の身になにが起こっているか……!」

「おれだって、おまえと同じ気持ちだ! だが――」


 ベルトランは唇を噛む。


「ディルクが言っていたように、アベルが戻ってきたとき、おまえがいなかったら、あの子はどうやって生きていくんだ。おまえを主と仰ぐ騎士や家臣は、おまえの身になにかあればどうすればいい? 今、おまえがすべきことは、あの子を信じて待つことじゃないのか」


 リオネルは寝台に座って頭を抱えている。

 けれど、それ以上動こうとしないのは、ベルトランに諭されずとも自分には、もはやなにもできないことを知っていたからである。


 むやみに山に入っても危険なだけだと、会議の場で発言したのは自分だ。

 アベルを助けに行くことがいかに無謀であるかを、だれよりも理解しているのは、この青年自身だった。

 自ら死ににいくようなものである。


 死んでもかまわない。もしアベルを救えるなら。

 だが、このまま山に入れば、彼女を救う道を見つける以前に、命を失うだろう。

 それに、ベルトランが言ったとおり、己の身にはベルリオーズ家を背負っていく重い責任がのしかかっている。そのことを、リオネルは生まれたときから身にしみて理解していた。


 自分を主として仰ぐ家臣の上に立ち、領地と領民を守らなければならない。己の感情を優先することは、ベルリオーズ家の嫡男として生まれたものとして、無責任な行動である。

 しかしそれは、十八歳のこの青年にとって、かぎりなく厳しく、残酷な現実だった。


「ベルトラン」


 赤毛の男の名を呼ぶ声は、力ないものだった。


「なんだ」


 窓際のカーテンからもれる光が、明るさを増していく。

 夜半には月を陰らせていた雲が流れ、朝の陽射しがラロシュ邸を包む。


 けれど、そのあたたかい日差しとは対照的に、この寝室にいる二人の若者の胸のうちは、暗澹たる思いで満たされていた。


「夢を見たんだ」

「夢?」

「アベルに……手が届かないんだ」

「……リオネル。すまない」


 ベルトランは苦しげな声音で謝罪を口にする。

 愛する娘を救いにいこうとするリオネルを、力ずくで止めたのは他でもない自分だった。そしてまた今も、この青年に領主たる責任を求め、この場所に縛りつけている。


 リオネルは、ベルトランの謝罪に対してはなにも答えず、魂をちぎるようにもう一度アベルの名をつぶやいた。


 ベルトランは沈痛な面持ちで、青年の肩に手を置く。


「……リオネル」

「――――気が……狂いそうだ、ベルトラン。頭が、どうにかなってしまいそうだ」


 両手に顔をうずめてうつむくリオネルの声が、虚しく床に落ちた。

 なぜ、こんなことになってしまったのか。今更ながら、疑惑と後悔が頭の片隅をよぎる。なぜ、アベルは囮になどなったのか。


「アベルが囮になった経緯が知りたい」


 なにが彼女に、そうさせたのか。アベルをこんな目にあわせたのは、だれなのか――。

 そう言うリオネルの声音は、すでに平静さを取り戻していた。

 顔を下に向けていたので、ベルトランには、彼がどのような表情でそれを口にしたのかわからない。


「ああ、ディルクに、ラロシュ侯爵を連れてくるよう伝えてある。侯爵からすべて聞けるだろう」

「ウスターシュ殿は」

「――今は、あいつに会わないほうがいい。これからどうするかは、話を聞いたあとだ」


 ベルトランはあえてラロシュ侯爵ひとりを、リオネルの寝室に呼んで説明させるのがよいと考えたのだ。

 今、リオネルに、ウスターシュを会わせることがよいことだとは到底思えない。二人が会えば、互いに感情的にぶつかりあうことになるだろう。それは、セドリックやシャルル、その他の諸侯においても同様の可能性がある。


 ベルトランがラロシュ侯爵を選んだのは、直感である。

 ラロシュ侯爵が主体的に、今回のウスターシュの計画に加わったとは思えない。だからこそ、ラロシュ侯爵に対してリオネルは激しい感情を抱くことはないのではないか。

 それに、温和で、頭のよい侯爵なら、すべての経緯を客観的に説明することができるのではないか。そう考えたのだ。




 ディルクに連れられて、ラロシュ侯爵がリオネルの寝室を訪れたのは、その後まもなくのことだった。二人と共に、レオンとマチアスも同席する。

 クロードは、ベルリオーズ家とアベラール家の騎士に昨夜の経緯を説明してまわっていて不在だ。


 四人が寝室に入ったとき、室内には刺すような空気が流れていた。

 カーテンは開かれていて、春の朝の日差しが室内にはあふれているのに、窓枠に寄りかかっている青年が放つ気は、冷たい刃のようだった。


 幼馴染みのディルクでさえもが気圧されたのだから、レオンやラロシュ侯爵にとっては、実際に肌が痛むほどだったかもしれない。


 背後から白い光に包まれた青年の表情は、逆光になって見えなかった。


「リオネル様、この度の一件、誠に申しわけございませんでした」


 入室してすぐに、ラロシュ侯爵は深々と頭を下げて謝罪した。そのわずかに震えた声は、それが心からのものであることを現している。


 けれど窓辺に佇む青年はなにも答えない。

 その沈黙が、この部屋にいるだれにとっても重かった。


 椅子に座るようベルトランからうながされたが、ラロシュ侯爵はそれを謝絶する。リオネルが立っているのに、自分が座れるはずがない。

 ブリアン子爵の容体をディルクに問われ、受けた傷が思ったより浅く、先刻、意識を取り戻して少し話すことができたことを侯爵は告げた。

 それから彼は自ら本題を切りだした。


「私が知っている昨夜の出来事を、すべてお話しします」


 ラロシュ侯爵はディルクの隣に立ったまま、瞼を伏せ、ゆっくりと話しはじめた。

 自分とブリアン子爵が、夜中にウスターシュに呼び出されて、秘密裏に囮の作戦を進めると打ち明けられたこと。そのときにはすでに、セドリック、シャルル、グヴィド子爵、クヴルール男爵など、多数の諸侯らが作戦に同意していたこと。そして、自分たち二人もそれに同意したこと。

 アベルを呼びだしたのはそのあとだった。


「皆でアベルを説得しました」

「アベルはすぐに承知しましたか」


 ディルクに問われると、侯爵は「いいえ」と答えてからしばし沈黙する。

 皆が彼の言葉の続きを待っていた。


「リオネル様の命令なくして、引き受けることはできないと言い、囮になることを拒絶していました」


 リオネルの考えがすなわち己の考えである、と。


「それを、言いくるめました」

「――アベルになにを言ったのですか」


 ずっと黙っていたリオネルが、そのときはじめて口を開いた。

 堅く冷ややかな声音だった。


「……質問を重ねたのです。貴方のことを引きあいに出しました。リオネル様やベルリオーズ家を守ることができるのが、自分しかいないとしたらどうするか、己一人が犠牲になれば彼らを救うことができるとすればどうするかと問い、最終的に貴方の命礼に背いても行動する、そう答えさせるように導きました」

「……アベルなら、たしかにそう答えるでしょうね」


 眉をひそめたのはディルクである。


「彼は、リオネルを守るためなら、強大な敵の城に単身でも乗りこむでしょうから」

「ずいぶん卑怯な手を使ったのだな」


 今朝起きてから事情を知らされたレオンも、呆れた声を上げた。


 ラロシュ侯爵は、双眸を閉じて眉を寄せ、「申しわけございません」と再び謝罪する。それから、アベルが連れ去られるまでの経過を述べた。

 ドレスをまとったアベルが、ブリアン子爵と恋人を装って庭園を歩く。そして現れた山賊。だが、剣を捨てて逃げるはずだった子爵は、彼らに立ち向かった。そして、十人以上斬り捨てたとき、あとから追いついたひとりの山賊の剣に子爵は倒れ、アベルは連れ去られた。

 そこへリオネルとベルトランが来たのである。


 ラロシュ侯爵の説明が終わると、重苦しい沈黙の後、いくつか質問が出た。質問したのは、主にディルクである。


「山賊を追って山に入った兵士は、戻っていないのですか」

「……まだひとりも」

「兵士は何人ほどいたのでしょう」

「エルヴィユ家、ベロム家、そして我らの兵士がそれぞれ九人ずつです」


 彼らのひとりでも戻って、山賊の拠点が判明すれば、アベルを救いに行けるのである。

 しかし、ひとりも戻らぬというのは、どうしたことか。


「ブリアン子爵はなぜ当初の計画に沿わず、賊に抵抗を?」

「それは……本人から、リオネル様に話す意向のようです。怪我のうえに熱があるので今日中には難しいかと思いますが、明日になればおそらく少し話しができるでしょう」


 侯爵の口ぶりからは、すでに彼自身が子爵から話を聞いているのかどうかわからない。ディルクはじっと侯爵の表情をうかがったが、彼は瞼を伏せていて、なにも読み取ることはできなかった。


 張り付いていたディルクの視線が離れていくのを感じると、ラロシュ侯爵は瞼を上げて、窓枠に寄りかかっている青年を見た。


 朝日が眩しい。

 青年の輪郭だけが浮かびあがっていたが、目を細めれば、かすかにリオネルの秀麗な顔を見ることができた。

 声のみでは、感情を測る手がかりはほとんど与えられていなかったが、垣間見たリオネルの顔に浮かんでいたのは、濃い憂いの色だった。

 表現しがたい苦しみが、その瞳にはたたえられている。

 そのとき、ラロシュ侯爵は、友の言葉を思い出した。


 ブリアン子爵が、一刻前に目覚めたときのことである。





『気分はどうだ?』


 ラロシュ侯爵が問うと、ブリアン子爵は質問には答えず、代わりに寝台から起きあがろうとしながら言った。


『アベルは――アベルは戻っているか』

『いや、アベルも兵士も、だれも戻っていない。……エドワール、動いたら傷が開く』


 ラロシュ侯爵は、子爵の肩をそっと寝台に押しつけるようにして戻す。

 大人しく再び仰向けになった子爵は、片手で目元を抑えた。


『――なんてことだ』


 その様子を、ラロシュ侯爵はいぶかしげに見つめる。

 山賊のまえで剣を抜き、アベルを守ろうとしたことを含めて、友の言動には謎が多い。

 一夜明けて、冷静になったラロシュ侯爵の胸のうちには、計画に賛同したこと、十五歳の少年ひとりを犠牲にしたことへの後悔が湧きあがっていたが、ブリアン子爵の胸のうちは、それとはまた違ったもののように思える。


 親友の心情を見透かしたのかどうか、子爵は独り言のように言った。


『正しかったのは、マドレーヌじゃなくて、セザールだ』


 またも不可解なことを口にするので、ラロシュ侯爵は目を細める。


『なんのことだ?』


 まだわからないのかというように、子爵は双眸を閉じて眉をひそめた。


『アベルは女性だ』


 友の言葉が瞬時には吞みこめず、侯爵は大きくまばたきをする。そして、『まさか』とつぶやいた。


『私は、あれほど美しい女性をはじめて見た』

『たしかにアベルは美しいが、しかし、それだけで女性とは言えないだろう』

『私も、彼女が騎士の姿をしていたときには気がつけなかったが、ドレスをまとったときにわかったんだ。なぜわかったのか――それは、かつての私を知るおまえならわかるだろう?』

『…………』


 数多の女性を見てきたブリアン子爵なら、たしかに相手が男であるか女であるか判じることは、他の者より容易かもしれない。


『手のからませ方、歩き方……具体的に説明するのは難しいが、彼女の立ち居振る舞いのすべてが、女性のそれだった。それも、正しい教育を受けたとしか思えないほど完璧だった』


 この国で正しい教育を受けられる者は限られている。貴族のほか、よほど裕福な商家くらいだ。自分は平民の出身だとアベルは言っていたが……。


『では、我々は十五歳の少女を囮にしてしまったのか』


 ラロシュ侯爵は半ば信じられないような思いでつぶやく。ブリアン子爵が語ったこと。それが真実なのか。


『それだけじゃない。これは私の憶測だが……リオネル殿は、あの者を愛しているのではないだろうか』

『なにを言っているんだ。リオネル様には、エルヴィル家のご令嬢が――』


 そこで、ラロシュ侯爵は言葉を止める。

 彼のなかで、なにかがつながったのだ。これですべてのつじつまがあう。


 館に到着した際、フェリシエの兄であるシャルルを未来の義兄と称したら、リオネルはとっさに『婚約していない』と発言した。

 自分の娘と息子が、二人とも瞬時に心を奪われるほど美しいアベル。

 過剰と思えるほどに、アベルを守ろうとするリオネル。

 あの穏やかで冷静なリオネルが、アベルをかばってウスターシュの拳を受け、囮の案に不快感を示して会議の席を立ち、命の危険を顧みずスーラ山に連れ去られたアベルを追いかけようとした。


 それはすべて、リオネルが彼女に想いを寄せているから――。


『……なんてことだ』


 ラロシュ侯爵は先程友人が口にしたものと、まったく同じ言葉を繰り返した。


『それが真実なら、我々は、なんてことを……』


 呆然としてから、再びブリアン子爵に視線を向けると、彼は疲れたように再び瞳を閉ざしていた。

 ひたいに手をあてると、熱が上がっている。これ以上長く話すことが、良策とは思えなかった。


 ブリアン子爵に薬酒を飲ませてから、ラロシュ侯爵はディルクらと共にリオネルの寝室を訪ねたのだ。





 リオネルは、窓枠にもたれかかったまま腕を組み、一度だけ質問を発しただけで、あとはずっと口をつぐんだままである。


 もし、子爵が語ったことが真実なら、今、この青年の胸にある苦しみはどれほどのものだろう。

 たとえば、妻や娘のマドレーヌが自分に無断で囮にされ、山賊に連れ去られたとしたら、けっしてそれを企てた者を赦さないだろう。


 もしアベルの身になにかあれば――否、たとえ無事に戻ってきたとしても――自分やブリアン子爵が、この青年から赦されることは永遠にないように思われた。


 けれど、侯爵が沈鬱な面持ちでうつむいたとき、リオネルが口にした言葉は、思いもかけないものだった。


「話してくださってありがとうございます、ラロシュ侯爵殿」


 侯爵は、はっとして顔を上げた。

 この部屋に入ってきたときに感じた空気の冷たさは、いつのまにか、ひたすら重苦しいだけの気配にとって代わっている。


「今回のことはウスターシュ殿をはじめ、多くの方々が推し進めたことであるにも関わらず、ひとりで私に説明するという重たい役回りを引き受けてくださり感謝します。ブリアン子爵殿にも、アベルを守ろうとしてくださったことを、ありがたく思うと同時に、そのことで負傷されたことを心から申しわけなく思います。どうか親しいご友人であるあの方のそばにいてさしあげてください」


 窓枠から身体を離したリオネルは、ラロシュ侯爵に向かってかすかに口角を上げて、ほほえんでさえみせたのである。


 ――この人は……。

 侯爵は、言葉にならぬほどの衝撃を受けた。

 この青年は大人だ。

 自分よりよほど成熟している。


 リオネルの心のうちはわからない。だがこの青年は、自分の感情をいったん胸の奥にしまって、ラロシュ侯爵とブリアン子爵の立場から物事を見たのだ。そうでなければ、このような言葉は出てこないだろう。

 そして彼は、ベルリオーズ家の後を継ぐ人間として、諸侯らと諍いを起こすことの愚かさを理解している。

 自分には到底できないことであるし、リオネルが背負っているものの大きさをあらためて思い知る。それと同時に、それがこの青年にとって、ひどく残酷なことであることを、ラロシュ侯爵は痛感した。


 これからなにが起ころうとも、この青年の味方になり従おうと、ラロシュ侯爵は心のなかで誓う。

 自分が王弟派だからではない。

 この青年が抱く深い苦しみのうえに咲く、強さと優しさに、感服したからである。


 深々とラロシュ侯爵が頭を下げたときだった。

 慌ただしい足音が廊下で聞こえてくると、ひとりの騎士が飛び込んできた。


「リオネル様、侯爵様! 追跡していた兵士がひとり、戻りました!」


 その言葉に、皆がはっとして全身を緊張させる。


「兵士の名は?」

「ユーグです。傷を負っていますが、命の危険はありません」

「話を聞ける状態か」


 騎士はやや渋い表情になった。


「到着してすぐに気を失ってしましたので、今しばらくは無理かと……」

「山賊にやられたのか」

「いいえ……私が見るかぎり、あれは獣による傷です」


 皆は無言で顔を見合わせた。








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