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リオネルの婚約者候補が登場します。アベルとリオネルの絆が揺らぐことはありませんが、苦手な方がいらっしゃいましたら、以降スルーしてくださいm(_ _)m
たった一筋の光さえ入らない、暗闇が支配している。
まるで、代々王家の死者たちが住まう冥府へ、迷いこんだようだった。かすかな物音さえ聞こえてこない。気が狂いそうなほどの、闇と静寂だった。
「くそ……っ」
若者が身じろぎをしつつ呟く。手足を縄で縛られ、渾身の力をこめても、床の埃が少し移動するほどしか身体は動かせなかった。
猿轡は噛まされていないが、ここでどれだけ叫んでも、だれの耳にも届かないだろう。
こんな場所に、いったいだれが足を踏み入れるというのか。
若者は、無駄な体力を使うのをやめた。
昨日から何も食べていない。しかし空腹で死ぬよりも、この異様な空間のなかで発狂するほうが先であるように思われた。
最も堅固な独房を除いて、王宮の監獄には少なくとも小さな窓がある。ここは監獄よりもひどい。
心なしか空気も薄く、意識も薄れていくような気がした。
若者は小さな声で、なにかの歌を口ずさみだした。
正気を保つためである。
しかし、とてもうまいとは表現しがたい歌声だったので、それは堂々たる棺に眠るシャルム王家の歴代王族から、失笑を誘うようだった。
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夜も深まっていくころ、一人の若い女性が、物憂げに長椅子に身をもたせかけた。
胸元が広く開いた、赤紫色のドレスは色鮮やかで優美である。結いあげた亜麻色の髪には宝石のちりばめられた髪留めが飾られ、盛夏の木の葉のような青緑色の瞳は大きく、ふっくらとした唇は赤い実をかじったような色と輝きだ。
歳は十七歳。まだ少し残る幼さと、大人になりつつある色気がせめぎあい、魅惑的な美しさを醸し出していた。
剣を持たず、労働もしない手は白く、細く、傷一つない。その指先を動かして、女は侍女の一人を手招きした。
「ライラ、人払いを」
「かしこまりました」
ライラと呼ばれた侍女は、豪奢な室内の窓側と壁側に控えていた三人の侍女を、部屋から下がらせる。
ライラは侍女といっても他の者とは違い、貴族の淑女のような身なりをしており、身分が高いことがうかがえる。
室内の家具やカーテンは、全て桃色で統一されており、大きな二つの窓のあいだにある飾り棚には、あふれんばかりの花を活けた花瓶が置かれていた。装飾の細やかな鏡台もあり、一目で女性のためとわかる部屋だ。
侍女らが退出すると、部屋の主は大きなため息をつく。彼女は父親の書斎から戻ってきたばかりだった。
「フェリシエ様、なにかお飲物をお持ちいたしましょうか?」
「いいわ、お父様の部屋で飲んできたから」
フェリシエと呼ばれた若い女は、円卓に置かれた花瓶の花を一輪、手にとり口元に持っていった。その薄紅色の花弁に口づけするように、フェリシエは目を閉じる。
「ライラ……あの方が、ようやくお戻りになるわ」
「はい、存じております」
父親から聞いたばかりの話を、ライラはすでに知っていたが、そのことにフェリシエが驚いた様子はなかった。
「そう、知っているのね。ようやくよ。一年前にお戻りになるはずだったのに」
「はい」
ライラは深くうなずく。
「このときをずっと待っていたわ。……どのようにおなりになったかしら。早くお会いしたいわ」
「お嬢様、本当によかったですね」
「でも、ライラ。さきほどお父様は、あの方に会いに行く日取りについても、わたくしたちの今後のことについても、なにもおっしゃらなかったの。戻られたら、なにか進展があると思っていたのに……なにか気になるわ」
「リオネル様のご婚約者は、貴女様以外ありえません。焦る必要はございませんよ」
落ち着かない様子のフェリシエに対して、ライラは言い聞かせるように言った。フェリシエは、大きな瞳をライラに向ける。
「あなたがリオネル様のご帰館を知っていたということは、あなたの従兄弟からなにか連絡があったのでしょう?」
「はい、昨夜、従兄弟から手紙が届きました」
「まあ、やはり」
フェリシエの表情が、瞬時に明るくなる。
フェリシエはライラから、王都サン・オーヴァンでのリオネルの様子を全て聞いていた。
ライラの従兄弟はリオネルの従者ジュストであり、ジュストが王都のベルリオーズ家別邸の使用人を通じて情報や噂話を収集し、知らせてくれていたのだ。
ジュストは、将来リオネルの妻になるであろうフェリシエに、リオネルの近況を伝えることをためらわない。この四年間、フェリシエにとって、ライラの従兄弟から届く手紙について聞くときだけが、リオネルの存在を感じられるときだった。
「それで? 手紙にはなんと?」
「リオネル様は、ベルトラン様と、アベルという少年とともに、今月中にはベルリオーズ領にお戻りになると」
「アベル……やはり、その子がいっしょなのね」
フェリシエは途端に表情を曇らせ、不満げに呟く。
「最近、あなたの従兄弟からの手紙にはその名前ばかりだわ。それで、その子の身元はわかったのかしら」
「はい。それが、本人が語ったところによると、アベルはもともとローブルグ王国の騎士の家系だったそうです。それが、かつての戦争の混乱によって我が国で暮らすようになったとか。それ以上詳しいことは語らないそうです」
「ローブルグ王国の騎士……ふうん。でも、サン・オーヴァンではただの平民だったのでしょう?」
「おそらく」
「街に落ちていたのでしょう?」
フェリシエは、まるで街に転がる石ころのように言った。
「ある日突然、リオネル様が抱きかかえるように、かの少年を街から連れて戻られたそうです。しかも、弟の赤ん坊も共に」
「赤ん坊なんて……」
顔をしかめたフェリシエは、両手を翻す仕種をした。
「わからないわ、どうしてそのような者をリオネル様が気にかけ、そばにおいておかれるのか。手紙によれば、リオネル様はアベルのことをひどく気にとめていらっしゃるというわ。なぜかしら」
「そこまでは、わたくしにも……ジュストにも」
フェリシエは指のあいだに挟んだ花を、落ち着きなく揺する。
「王宮から一週間ごとに、別邸に戻るようになったというし」
「はい、信じがたいことですが」
「その子のために、王宮を無断で数日間、不在にされたとか」
「はい」
「王宮での生活が一年延長になったのも、その後だわ」
「そのことに、アベルという少年と関係があるのでしたら、重大なことでございます」
「……そうね、本当に関係があれば……もしそうだとすれば、彼はいったいなんなのかしら」
「その少年、リオネル様のおそばに相応しいのでしょうか」
ライラは瞳に剣呑な光をにじませた。
フェリシエは、ちらりとライラに視線を向けてから、口をつぐむ。
ジュストの手紙には、アベルの身なりや容貌について、「貴族の子弟のように、上品で美しい少年」であるらしいとあった。フェリシエはその形容を聞き、余計におもしろくない。
フェリシエがリオネルに会ったのは四年前、リオネルが王宮に赴く直前のことだった。それが、最初で最後だったが、フェリシエは一目でリオネルに心を奪われた。
前王の孫であり、正統な王家の血を引くというだけでも魅力的だが、リオネルは物腰が柔らかく、優しげで、深い紫色の瞳が印象的な美しい少年だった。フェリシエは彼を目にしたときの胸の高鳴りを忘れられない。それは、世界が色を変えた瞬間だった。自分は、この人に出会うために生まれてきたのだと確信した。
熱心な王弟派の父親は、娘のフェリシエをリオネルと婚約させたがっていたが、その日からフェリシエは父親の意向とは関係なく、その少年の妻となることを決めた。そう――決めたのだ。なにが起ころうと、だれに何を言われようとも、リオネルの妻となり、彼を自分だけのものにしたい。
婚約は正式には決まっていない。四年前に会ったのも、婚約者としてではなく、父親が二人をたんに引き合わせただけだった。その後の二年間で、父親であるエルヴィユ侯爵はベルリオーズ公爵の説得に励み、他の婚約者候補を出し抜き、リオネルが王宮から戻ったら婚約するという流れにまでこぎつけた。それを知ったときは、フェリシエは父親の胸に飛び込み、涙を流して喜んだ。
しかしどうしたことか、徐々にこの話はエルヴィユ家やベルリオーズ家のあいだで話題に上がらなくなり、最近では本当に婚約が実現するのか不安を覚えるほどだ。ちょうどそのころ手紙のなかに頻繁に出てくるようになったのが、アベルという少年の名だった。
まさか彼が原因だとは考えにくいが、そもそも平民の分際でリオネルのそばにいて、リオネルの関心を集めている少年の存在そのものが、フェリシエにとっては気に入らない。
「お父様は、リオネル様がお戻りになるというのに、婚約の話も、会いに行くという話さえ口にされなかったわ」
よほど不満なのか、フェリシエは先ほどと同様の内容を口にした。
「もしかして、お父様以外に婚約の約束をとりつけた人がいるのかしら……」
リオネルは王家の血筋もさることながら、シャルム屈指の大領主ベルリオーズ家の嫡男である。それだけでも幾多の縁談が舞い込むというのに、近頃になって、リオネルの姿を王宮の周辺で見かけた令嬢が騒ぎはじめているらしい。フェリシエの潜在的な敵は数知れない。
フェリシエの脳裏に、嫌な予感がよぎる。王族と関わりのある令嬢がリオネルに興味を持てば、その政治力をもってフェリシエとの婚約を阻止できるかもしれない、と。
「念のため、ジュストにそのあたりの事情を詳しく調べさせましょう」
「ライラ、他の方法はないかしら?」
「他の方法?」
ライラが首を傾げると、フェリシエはどこか不満げな顔で言った。
「リオネル様に、お会いしたいわ」
「さようでございますか」
ライラは平然と答える。続いてなにか言おうと口を開いたとき、扉を叩く音がした。
フェリシエが目配せをすると、ライラはうなずき扉へ向かう。けれどライラが訪問者の名を確かめるより先に、扉は向こうから開いた。
そこには短髪の若い男が立っている。フェリシエの兄シャルルであった。
フェリシエは手に持っていた花で口元を隠して、眉を寄せた。
「お兄様、兄妹といえども、無断でお入りにならないでください」
「扉は叩いたぞ」
「返事をしていません」
「妹の部屋に入るのに、許可が必要なのか?」
「……それで、なにか御用ですの?」
フェリシエは面倒くさそうに尋ねる。
「用がなければ、おまえの部屋に来てはいけないのか?」
シャルルは、フェリシエの態度に渋面をつくった。
「今、とても大切な話をしていたのです」
「大切な話?」
「そうだわ、ちょうどよかったわ。お兄様にお願いがあります」
突然、思いついたように不機嫌な表情を排し、目を輝かせた妹に、シャルルはすかさず問う。
「リオネル様のことか?」
「……なぜお分かりになったのです?」
「おまえが侍女を下がらせてライラと二人でこそこそ話すことなど、リオネル様のことくらいだろう」
「そうおっしゃるなら話は早いですわ。お兄様は、あの方がお戻りになることをもちろんご存じでしょう?」
「まあ……」
シャルルはフェリシエより前に、父親からその話を聞いている。
「お会いしたいのです」
「会いたいって……だれに?」
「今の話の流れで、リオネル様以外にどなたがいらっしゃるというのですか?」
シャルルはため息をついた。
「おまえがあの方に首ったけなのは知っているが、そう気軽に会える相手ではないぞ」
「なぜですか? わたしはリオネル様の婚約者なのに」
「どういう関係であろうと、あの方はベルリオーズ家のご嫡男だ。そこらの貴族とは違う。それに、まだ我らは婚約までこぎつけていない」
「リオネル様がお戻りになった今、婚約は間近でしょう?」
「うむ……」
シャルルは思案顔になる。
「お兄様までそんな反応をなさるのね。二年ほど前までは、お父様もお兄様もあんなに積極的でしたのに」
「いや……おれも父上も、おまえをベルリオーズ家に嫁がせたいという考えは変わっていないんだが」
「では、なんだというのです?」
「うむ……」
シャルルはまたも言い淀む。フェリシエが苛々しはじめた脇で、いたって落ちついた様子のライラが口をはさんだ。
「シャルル様」
「ライラ、なんだ?」
「フェリシエ様を直接、リオネル様にお会いさせるのも、ひとつの方法ではございませんでしょうか」
シャルルはわざとらしい思案顔をやめ、ライラを訝しげに見やる。
「ひとつの方法とは?」
「リオネル様のお心は必ずや動かれるでしょう」
シャルルはライラを見つめた。彼には、この身分の高い侍女がなにを知っており、なにを考えているのか、いつも判じかねた。ライラは勘が鋭く、頭が切れる。
ライラはフェリシエより六つ、シャルルより三つ年上の二十三歳だ。もともと伯爵家の出身だったが、両親を幼いころに亡くし、爵位を彼女の叔父が継いだので行き場を失い、エルヴィユ家のフェリシエのもとに侍女として連れてこられた。それからというものライラは、狂信的といってもよいほど、フェリシエに希望を託し、熱心に仕えている。
ライラはフェリシエを大貴族ベルリオーズ公爵家に嫁がせることに、強い関心があるようだった。それは、家を奪い、ライラを追い出した叔父への当てつけのつもりなのかもしれない。そのためであれば、なにを犠牲にしてもかまわないという雰囲気さえある。
「リオネル様のお心が動かれるとは、それはどういうことですの、ライラ」
ライラの言葉に、フェリシエは敏感に反応した。
「お嬢様、わたくしは、はっきりとしたことは存じ上げません。ただ、そうではないかと」
「そうではないか、とは?」
フェリシエに視線を向けられたライラは、シャルルを見た。
その視線を追って、フェリシエはシャルルのほうを向く。
「なんですの、お兄様?」
「いや……」
フェリシエの強い視線を受けたシャルルはライラを睨んだが、ライラのほうは素知らぬ顔で視線を逸らしただけだった。
シャルルは観念したように口を開く。
「二年半ほど前、ベルリオーズ公爵様からは、おまえとの婚約について前向きなお言葉をいただいた」
「そんなことは知っています」
「……しかし、その後、考え直したいというようなことを、父上はベルリオーズ公爵様から言われたようなのだ」
フェリシエは大きく目を見開いた。
「そんな話、はじめて聞いたわ!」
立ちあがり、兄のもとまで歩みよる。
「なぜですの! 承諾をいただいていたのでしょう? 考えなおすだなんて、わたしはそんな話は一言も……」
「落ちつけ、フェリシエ」
シャルルは、詰め寄ってくる妹の腕をつかんだ。
「伝えていなかったことは、申しわけなかった。おまえがあまりにもリオネル様に熱を上げているから、言いづらかったのだ」
フェリシエはシャルルを睨みあげる。それは、兄でさえたじろぐほどの眼差しだ。
「お考えを変えられたのは、なぜなのですか」
「おれにもわからない。ただ……その、きっと大丈夫だ……?」
「なにが大丈夫ですの! 考え直すっておっしゃられたのでしょう!」
手を振り払い声を荒げるフェリシエに、シャルルは大きくため息をついた。
「……公爵様は、正しく、厳しい方だが、リオネル様にだけはお甘い。もし、公爵様がお気持ちを揺るがすことがあるとすれば、リオネル様のご意向を汲んでのことだろう」
「リオネル様が、わたくしとの婚約を避けているとでもおっしゃるの?」
「いや……そこまでは――」
フェリシエは持っていた花を二つに手折り、床に投げ捨てた。その目からは、涙が溢れ出る。
「フェリシエ……」
シャルルが呟くと、ライラがそっとフェリシエに近づきその身体を抱きしめた。
フェリシエは素直にライラに身体を寄せる。
「わたしは、リオネル様の妻となるわ、絶対に」
フェリシエは大きく開いた目で宙を見据え、唱えるように言った。
ライラが、冷静な声音で答える。
「ええ、お嬢様は、必ずベルリオーズ家の公爵夫人になられる方です。……シャルル様、もし貴方様とお父上様のお考えも同様であれば、お嬢様をなにとぞリオネル様におそばに行かせてさしあげてくださいまし」
「…………」
「お嬢様ほどの美しい女性に、心を奪われぬ者はおりませぬ」
「……ディルク殿は奪われていないようだったが」
「何年前のお話ですか、お兄様! 今の私はあのころとは違うわ」
フェリシエは、我に返って兄を睨んだ。
「そうだな、あの頃のおまえは、そばかすだらけで、ぽっちゃりしていて、垢抜けなかった」
「お兄様! それ以上おっしゃったら、その口を糸で縫い合わせますわよ! そもそもあんな男に好かれたくなんてないわ」
「ディルク殿は、リオネル様と幼馴染みだぞ」
「あんな野蛮な者とつきあってさしあげられるのは、きっと、心の優しいリオネル様だけなのです」
話の矛先を変えようとするシャルルの意図や、フェリシエの発言までをも無視して、ライラは強いまなざしをシャルルに向けた。
「エルヴィユ家の繁栄のため、この婚姻は不可欠ではございませんか?」
シャルルは両目を細めて、ライラを鬱陶しそうに見やった。
「……わかったよ。父上は、おれが説得してみよう」
「会いに行ってよいのですね?」
「父上と公爵様が了承すればな」
フェリシエは、赤い唇をほころばせる。
フェリシエは知っていた。自分が会いに行きたいと言えば、ライラが最終的には必ずどうにかしてくれることを。フェリシエの我儘は、ライラが魔法を使うようにいつも叶えてくれる。
「今すぐ行っていいのですか?」
「行けるわけないだろう。来訪の理由と、あちら側からの承諾も必要だから――年が明けてから、新年の挨拶に行くという流れが無難だろうな」
シャルルはまたもやライラにうまく言いくるめられたような気がして、腑に落ちなかった。けれどライラの言うことには、いつも不思議な説得力があった。悔しいことだが、彼女はまるで優秀な参謀のように思えてくるときさえある。
シャルルは自分がなんの用事で妹の部屋に赴いたのかさえ忘れ、いかにして父親にこの話を切り出せばいいか考えながら部屋を出ていった。
「新年……あと一ヶ月ね、待ち遠しいわ。リオネル様と直接お話しをして、ついでにアベルという子の顔も見てくるわ」
フェリシエは、窓の前に立ち、闇に染まった庭に目を向けた。
景色はほとんど見えないが、雨音が聞こえる。それは次第に強くなっているようだった。
フェリシエの後ろ姿に、ライラはささやいた。
「その折に、リオネル様のおそばからアベルを排除いたしましょう、お嬢様」
「…………」
侍女の物騒な提案に、フェリシエは返事をしない。その表情も、窓に顔を向けているので見ることはできない。
「わたくしは、どんな手段を使ってでも、お嬢様をベルリオーズ家の公爵夫人にしてさしあげます」
「……ありがとう、ライラ」