幕間1
◇ ◇ ◇
晃仁たちに言われるまで気付かなかったなんて、凄く不覚なのだけれども、それを今言ってもしょうがない。そう思いつつ一番瘴気の濃い場所に向かったのはいいのだけれど、扉を開けた瞬間に凄まじい瘴気の塊が飛び出てきた。
「なによ、この瘴気」
「こんなところに普通の人が長くいたら大変なことになりますよ」
「というか、すでに大変なことになってないか?」
見ると部屋の奥で何人かの生徒が倒れていた。でも、
「あれは大丈夫でしょ。ただ寝てるだけみたいだし」
「そうですね。それよりも問題なのがいるはずです」
そう言いながら私と遥華は同時に同じような方向を向く。そこには、倒れている生徒の中に一人佇む少女がいた。
「…え、女の子?」
晃仁はポカンとそんなことを呟いてたけど、あの子がこの瘴気の大元なのは間違いない。
「あれ? 邪魔者が来ちゃった…」
私たちの視線が少女に向くと、彼女はそう呟きながらこちらに振り返る。黒髪と制服に碧眼が怪しく輝いていた。
「誰よ、あなた」
「人間の体を使って何をする気ですか」
そんな私と遥華の質問に少女は薄い笑みを浮かべ、
「ほんと、うるさいハエ…」
そう言いながら人差し指をこちらに向けると、少女から瘴気の塊が一気に向かってきた。
「晃仁さん、私たちの傍から離れないようにしてください」
「あ、あぁ」
「…っ」
遥華と私は急いで防護壁のような結界を張る。
「なんなの、この瘴気の濃さは」
「…」
その瘴気はとてつもなく濃く、二人で張った結界がすでにヒビだらけになっている。
「この力すごい、もっと欲しい」
濃い瘴気の向こうで少女がそう言いながら、鞭を振るうような動きをすると、濃い瘴気の中から一筋、結界に叩き落とされる。
ビシッ、バシッ。
それはあらゆる方向から振るわれ、その度に結界にはヒビが入る。
「…美樹ちゃん」
「解ってるわよ!」
結界が壊れてしまうことを心配したんだと思ったんだけど、
「ううん、そうじゃなくて」
そう言うと遥華は私に耳打ちをしてきた。
「……」
私は晃仁を横目で見て黙考した。
それしかない。
そう思えた。だけど、この結界を自分から消すのはムカつくので、最後まで頑張ってもらうことにする。
バシッ、バリッ、バキッ。
「くっ…」
「うっ…」
「うわっ」
結界が崩壊した直後、濃い瘴気が一気に私たちにぶつかり、そのまま弾き飛ばした。
「……晃…仁…」
◇ ◇ ◇