N 前兆は既に過ぎて
目を開ける。部室の風景が目に飛び込んでくる。いつの間に眠っていたのだろうか。
「…あれ?」
ふとユリエたちの方を見ると、ユリエが薄く、透けて見えた。だが、すぐに元の姿に戻る。気のせい…なのだろうか。
「どうかされました?」
サユリが口元に笑みを浮かべて聞いてきた。となりではユリエが伺うような表情でこちらを向いている。そういえば、ユリエの碧眼がいつもより暗いような気がする。
「え? いや、なんか、一瞬ユリエが薄く見えたんだ」
「…見間違い」
「そうですよ。ユリエが薄く見えるなんてことないですよ。疲れてるんじゃないですか?」
サユリが少しビクってした気がする。
「そんなことはないと思うんだが…」
「…寝て…、それでユメ(・・)を見ればいいと思う」
ユリエが少したどたどしく言う。
「そうですよ。明日は文化祭なんですよね? 疲れていては楽しめないですよ」
サユリが少し慌てるように言う。
「そうかな?」
一理あるような気もする。
「そうです。それに、今日は完全下校時間とかは無いはずでしたよね」
「あぁ、確かにそうだな」
「でしたら、ゆっくりお休みください」
こいつらがここまで言うのも気になるが、思考がうまく働かない。本当に疲労しているのかもしれない。なので、俺は再び机に突っ伏す。
「…ユメを見ていた方が楽しいと思う」
「そうですね。それに、明日はいろいろすることがあるでしょうから…」
眠りに就く直前、二人が何かを呟いた気がした。
「……やっと捕らえた」
「…でも、まだ邪魔なのがいるはず」
「……時間の問題、すぐに見つかる」




