下
僕にはストーカーがいる。
何でストーキングされているのかはわからないけど、昨日の帰りに電柱の影に隠れながらついてきているのに気づいた。
初めは僕が気づくようにやっているのだと思ったけど、どうやら違うようだ 。
振り返って注意しようとしたら、電柱からはみ出したバッグが見えた。
あれで隠れているつもりなのだろうか。
たまに彼女の作った手料理や編み物が届く。
添えられた手紙には、「抽選で当たった」などと書かれていた。
いかにも怪しかったが、編み物は綺麗にできていたし、料理は旨かったので良しとしよう。
この時、彼女は向かいのマンションから僕を見ていた。
尾行も下手だが、彼女は盗撮も下手だ。
僕が部屋で横になっていると、窓の外で何かが光った。
どうやらカメラのフラッシュで、僕に向けられていたのですぐにわかった。
機械音痴なのか、彼女は設定の仕方が分からないようだ。
ストーカーの彼女に気づいてから1週間。
僕が女の子に道を尋ねていると、お店のガラスに映った彼女が悔しそうな顔をしていた。
その表情がとても可愛く、僕は恋をしてしまった。
それから、毎日女性に声をかけるようになった。
なるべく違う人に。
その方が悔しそうな顔をするから。
3ヶ月して電話が来た。
とある占い師を名乗っていたが、バレバレである。
必死になって説得してくるその声もいい。
今度はいつ聞けるかな。
そのうち、彼女に告白しよう。
ああ、でも……彼女のあの表情を見れるから、それはもう少しあとにしよう。
スマートフォンを出し、今週の動画をチェックする。
低い位置からの動画は彼女をしっかり捉えている。
ああ、可愛いなぁ。
僕は君を見ているよ。
ストーカーは犯罪です。
許可なくこのようなことをしないように。
でなければ、後悔しますよ。