救世主を祝福
ある日、ある場所で、ある男が旅に出た。家の蔵から適当に見繕ったガラクタを持って。
----
一週間後、その男はある家を訪ねた。
その家の主人も旅支度をすると、家の蔵から適当に見繕ったガラクタを持って一緒に旅に出た。
----
二週間後、二人はある家を訪ねた。
その家の主人も旅支度をすると、家の蔵から適当に見繕ったガラクタを持って一緒に旅に出た。
----
旅の途中、二番目に旅に出た男が切り出した。
「前の時から何年経っているんだっけ?」
三番目に旅に出た男が答える。
「親父たちが旅の後でさいころを振ったら、18って出たらしいな」
最初に旅に出た男が後を続ける。
「それ以後で、祖父か父親が亡くなってから3年。今回は、その18年の2年後に俺の祖父が亡くなったが。だから23年かな」
話を切り出した男がまた訊ねる。
「これ、俺たちで何代目なんだろ?」
最初に旅に出た男が答える。
「さぁ、爺さんの爺さんの爺さんからとか聞いているけど。実際はどうなんだか」
----
三週間後のある夜、最初に旅に出た男が切り出した。
「そろそろこの辺りでいいだろ。明日、最初に出くわした村でいいじゃないか」
他の二人も同意する。
二番目に旅に出た男が袋からさいころを2つ取り出して言った。
「それなら、何軒めの家かを決めておこう」
そしてさいころを振った。
----
翌日、三人はある村に着いた。
「一軒め、二軒め…」
そしてある家の前に立ち止まる。
「なぁ、うまやから赤ん坊の泣き声が聞こえるんだが。この場合、うまやも一軒に数えるのか?」
「まぁ、それでいいんじゃないかな」
----
三人は裾を払い、身なりを多少整えてから厩に入っていった。
最初に旅に出た男が言った。
「星を読みやって参りました。この幼子こそ王となるお方。お祝いの品をお受け取りください。我が家に伝わる宝物です」
大仰にかしずくと、ガラクタを差し出した。
二番目に旅に出た男が言った。
「まばゆく光る星に導かれてやって参りました。この幼子こそ神に祝福された御子。どうかお受け取りください」
大仰にかしずくと、ガラクタを差し出した。
三番目に旅に出た男が言った。
「東方よりやって参りました。この幼子こそ、豊かな知恵を持って人々を救われる。どうかお受け取りください」
大仰にかしずくと、ガラクタを差し出した。
三人は赤ん坊に祝福の言葉をかけると、静かに立ち去っていった。
----
帰り道の途中、三番目に旅に出た男が疑問を口にした。
「なぁ、教わっていたとおりにやったけど、これ、何の意味があるの?」
最初に旅に出た男が答えた。
「さぁ?」
二番目に旅に出た男が疑問を口にした。
「『まばゆく光る星』って何? 太陽? 適当に西へ行けっていうことしか聞いてないけど」
最初に旅に出た男が答えた。
「さぁ?」
----
私の家の蔵から古い、だが保存状態は良いパピルスが見つかった。その書き出しはこうだった。
「三家の約束として記録は残さない事になっているが、何の意味があるのかと問われると、やはり気になる。そこで今回に限り、記憶を頼りに書き残しておく」
締めくくりはこうだった。
「その30年後ほどに、西方で何か騒ぎがおきたらしい。とはいえ、よくある話だ。それで思い出したが、祖父が『旅から20余年が楽しいのじゃ』と言ったことがある。祖父が言ったことと関係があるのだろうか?」
そして最後に200年前の、ある年月日が書いてあった。
「なんのこっちゃ?」
思わず呟くと、燃やす物のゴミ箱に投げ込んだ。




