ギルド……
シーラさん一行に同行すること1日と半日で町に着く。
ここまでの道のりの間に、この世界のことを教えてもらった。
まず、ここはアイール王国が統治している大陸。この大陸には王国の方針で様々な人種が共存しているらしい。
様々な人種がいるのはこの大陸だけで、他の4大陸は人間だけらしい。おそらくそのうちの1つが、祐武達がいた大陸だろう。
アイール王国にいるのは人だけではなく、モンスターも生息している。人はこのモンスターと戦いながら自分たちの生活区域を死守している。
王国はモンスターの討伐専門の騎士団を設立したり、国民にも討伐を推進し、討伐者には報酬金が支払われる仕組みーギルドーを作りあげた。
それにより、国民の約半数が騎士団を目指し、入れなかった者はギルドで生計をたてることになった。
また、国が斡旋しているギルドでは、民間からの依頼も受け付けている。シーラさんもギルドに護衛を依頼し、その依頼を受けた団体が護衛していたらしい。ま、役に立ったかは微妙だが……。
また、同行中にあの黒髪の少女のことも聞いた。
名前をイクサと言い、彼女は人狼という人種らしい。
シーラさんが、前の町で売られそうになっていたところを無理やり引き取ってきたらしい。彼女にも何やら事情があるらしいが、深い詮索はしなかった。
イクサとは何回か話す機会があったが、言葉が分からずに沈黙という状態だった。
「それであんた達、これからどうするんだい?」
「とりあえず、ギルドに行ってみようと思います」
「そうかい。じゃ、私も手続きあるし、一緒に行くよ」
「ありがとうございます」
「これも助けてくれたお礼だよ」
シーラさんは事あるごとにお礼だと言い祐武達に親切にしてくれた。こちらも命の恩人に、必ずお礼をしなければと強く思う。
町の中央にそのギルドの建物はあった。
シーラさんは受付とも話してくれて、完全にお任せ状態。
そして、奥の部屋に連れて来られて、幾何学模様の中心に立たされる。
(えっ?これって大丈夫なの?)
遅まきながら焦る祐武を無視して、受付の人は何やら準備を進めているようだ。
何をしているのか全く分からない。
隣をみると、やはり同じ模様の中心に香奈美が立っている。
「祐〜」
(あ、泣きそうになってる)
「####………」
受付の人が何か言った瞬間、模様が輝きだす。
すぐにその光が消えたら、
「終了しました。お疲れ様でした」
「えっ?」
「えっ?」
受付の人が祐武達の言葉を話した。
あとの説明により、あの幾何学模様は魔法陣というもので、祐武と香奈美がこの大陸で生きていくのに便利な魔法をかけてくれたらしいと分かった。
「それではヒロム様、カナミ様。このギルドの説明をさせて頂きます」
このギルドは国や町、民間からの依頼を斡旋している事業である。
この依頼を受ける者は、全員かギルドで管理される。その為に受けたのが先ほどの魔法と言うわけだ。
「ギルドカードと念じてみてください」
よく意味も分からず念じてみる。
すると、祐武の目の前に光が集まり、1枚のカードを形成した。そのカードには、
ヒロム・キトウ 16歳 ランク1
種族 人
称号 覚醒者
攻撃力 / 280
防御力 / 205
魔力 / 0
精神力 / 0
敏捷 / 210
器用 / 120
会心率 / 100%
特性 血の契約
契約者 カナミ・カラスマ
という文字が。この数値が自分の能力だと見当はつくが、高いのか低いのか分からない。
(1つ分かることは、俺には魔法の才能はないってことか………)
まさかこんなとこで限界を知るなんて。
(あと、血の契約とかとんでもないものが……)
横に目を向けると、香奈美もギルドカードを見ていた。興味が湧き、
「香奈美のギルドカード、見せてよ」
「じゃ、祐のも見せて」
「はい…」
お互いのカードを交換する。
カナミ・カラスマ 16歳 ランク1
種族 人
称号 覚醒者
攻撃力 / 80
防御力 / 75
魔力 / 295
精神力 / 255
敏捷 / 85
器用 / 125
会心率 / 30%
特性 血の奴隷
奴隷主 ヒロム・キトウ
(………香奈美に殺される!)
祐武は戦慄する。
香奈美は満面の笑みで、
「責任取ってよね、祐?」
さらに受付の人から説明を受ける。
このギルドカードは身分証にもなる。
このギルドカードに書かれているランクは受けられる依頼のランクの上限らしい。
依頼には様々な難易度の依頼があり、すべてランク付けされている。ランクの低い依頼から受注でき、依頼を数こなしていくことでランクが上がる。少しでも犠牲者を減らす国の措置だという。
それから、幾つもの主要な都市ごとにギルドは設立され、そのギルド間を一瞬で行き来できるしい。どういう仕組みか想像もできないが、やってみたい。
討伐で手に入れた物は、基本的に討伐者に所有権があり、ギルドでも買取りできるらしい。
「一通りの説明は以上です。何かご質問はありますか?」
(………全く話しについていけないんですけど)
香奈美も難しい顔をしている。
それを察したのか、
「分からないことがあれば、いつでもお越し下さい」
「…ありがとうございます」
(……あぁ、頭が痛い)