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新大陸…

ザー……ザザー……


「ぅん……」

(なんの…音…だろ…、なんか頬が…ざらざらして…痛い?………って⁈)


「はっ‼」


瞬時に覚醒。


すぐに上体を起こすと、軽いめまいに襲われ、グッとこらえる。


薄っすらと目を開けて、改めて状況を確認する。


地面は粒が小さい白い砂。聞こえているのは波が打ち寄せる音だった。


「香奈美っ⁈」


最後までずっと掴んでいた手を見て、周りを見る。


すぐ横にうつ伏せで倒れていた。


「香奈美っ‼」


ホッとしたのもつかの間、さらに鼓動が跳ねる。


慌てて、しかし震える手でゆっくり肩を揺する。すると、


「うぅん…」


(良かった、生きてる…)


一気に脱力し、再び寝転がる。


大分頭が覚めてきて、状況を整理する。


(昨日?おそらく昨日の夜に船から投げ出されて、香奈美の手を掴んで、それから波がかかってきて………

そこからもう覚えてないな。

というか、よく生きてたよな。

しかも2人とも。

血の力か、かなり運が良かったのか………)


「…祐?」


どうやら、香奈美も気づいたようだ。


「大丈夫?痛いとことかない?」

「うん…、大丈夫みたい…祐は?」

「俺も大丈夫みたい」


思わず苦笑してしまう。九死に一生とはこのことだろうに、全く実感がない。


「ここどこ?」

「分からない」


2人で周りを見渡すが、眺めるだけで何もできないでしばらくそうしていた。




ずっと座っていてもしょうがないので、とりあえず海岸沿いに手を掴んで歩いていく。


海の反対側はすぐ森だ。森しかない。




俺たちには幸運の女神がついているのか、すぐに川を見つけた。


(もし女神がついてるなら、船から落としはしないでしょ……)


自分の思いつきに自分でつっこんでしまった。


でも、幸運なことは間違いない。


これで飲み水を確保できるし、身体を洗える。ずっと身体がベタベタしていたので、これは嬉しい。



「ちょっと、あまりこっちみないでよ?」

「分かってるって。俺、少し周りみてくるよ」

「……べつに、祐なら……のに……」

「ん?なんて?」

「なんでない‼祐の馬鹿‼」


(なんで怒られるの……?でも、やっといつもの香奈美らしくなって良かった)




身体と着ていた服を川の水で流し、服はある程度干して乾かし、また着る。


喉も潤い、ひと休憩すると、


キュルルゥゥ…


と、可愛らしい音。


隣を見ると、真っ赤な顔の香奈美。


「お腹空いたね」


この距離で聞かなかったフリをするのもどうかと思ったので声をかけたが、


「……うん」

「可愛いい音だったね」

「……うるさい」


横腹をつねられた。




そして、森に入り木の実を探す。


「でも、良かった」

「ん、何が?」


香奈美が後ろから話しかける。


「祐と2人で良かったっていったの。だって、普通ならこんな状況、考えられないもん。1人だったら確実に泣いてたよ。

でも、不思議と祐と一緒だと安心するんだ。なんとかなるだろって思えちゃう」


「俺も同じ。香奈美とならなんでもできる気がする。実はちょっと楽しかったりするんだ。やっぱ、変かな?」


「変だと思う……けど、私も同じだからいいんじゃない?」


思わず笑ってしまった。香奈美もつられて笑う。


香奈美も同じ気持ちだったこと、そして、香奈美にとって自分は安心させることができる存在なのだと分かって、嬉しかった。





そうやって浮かれていたからかもしれない。


草をかき分けていたら、折れた木に手をぶつけてしまった。


「痛っ⁈」

「大丈夫⁈」


声に反応して、香奈美がすぐに駆け寄ってくる。


よく見ると、指から少し血が出ている。


「もう、薬も何もないんだから気をつけてよね」


そう言いながら、香奈美は手を掴んで自分の口に持っていき、ためらいなく


パクッ


「えっ⁈」

「だって、薬も何もないんだからしょうがないでしょ?」


と言いながら、また指をくわえ直して、舌で舐める。


祐武は、ありがたいやら、嬉しいやら、恥ずかしいやらで混乱中。


と、いきなり香奈美が輝きだした。


文字通り、香奈美から光が溢れているのである。


「香奈美っ⁈」

「えっ?え?え?」


香奈美自身も何が起こっているのか分かっていない。


どうすることもできずに、ただ眺めるしかできない。


すると、黒かった髪がだんだん白くなっていく。


(俺の鬼化の時と一緒?)


完全に香奈美の髪は透きとおるような白髪、いや、銀色に近い髪になった。しかも瞳の色も薄紫色に変わっていた。

極め付けは、なんと背中から一対の翼が生えていた。


「………香奈美?」

「………私、どうなったの?」


今にも泣きそうな顔で聞いてくる。


歩み寄って、軽く抱きしめる。


「大丈夫。何も心配することないよ」

「………うん」


しばらく、そうしていた。






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