表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋い焦がれる愉快犯  作者: 水無月旬
4/7

小さな世界の色恋

公園で待ち合わせをした一尺八寸、彼を待っていた人物に一尺八寸は自分のたどり着いた結論を明かす。


 俺は薄暗い中歩いて目的の公園まで歩いていた。


 公園に着くと先程電話で呼んだ人物が立っていた。公園では明かりがついていた。


 その人物は俺に気が付いたらしくて、何か話しかけてきていた。俺には何も聞こえなかったので、ほぼ無視した形になっていた。


 俺は遠慮せず近くにあった青いベンチに座ると、その人物もそれに合わせて座った。


 俺はここに来て何を話したらいいか急にわからなくなってしまった。しかし、一つの結論が頭の中で右往左往している。


 相手側は少し疑問に思っているようだ、俺の浮かない顔をしているのを見て、何かを悟っているようにも思えた。あえてその人物は何も言ってこない。


 俺が言わないと。そう俺は思ったのだろう。


「今日の事件について話がある。もちろん爆破予告についてだ。」


 相手の顔色は変わらなかった。どうせそのことだろうと思っていたに違いない。


「今日の中で、色々と不思議に思うことがあった。結構些細な事でも、頭の中で何か引っかかるものがあったんだ。」


 俺は、さっきたどり着いた内容を反芻していく。


「まず、今日、その爆弾魔の愉快犯が学校関係者ではないかという結論が出た。学校関係者というのは、生徒、先生、その他の従業員とする。そして俺はまず、教師という線で疑ってみた。しかしこれは違うのではないかという結論を俺は出した。なぜなら、結局は教師が騒動を起こす動機がないからだ。動機を考えようと思えばいくらでも考えられた。例えば、今日は元々弦楽部の演奏会があった、弦楽部は名前とは裏腹、活動内容は軽音部だ。軽音部というのはどの学校でもそうなのだが、学校側に非常に批判を買いやすい。だからそれを台無しにしようとした。という案が出るのだが、これはやはりおかしい。弦楽部の演奏会会場は学校の講堂で行われる。だったら爆弾設置場所を北校舎にするのはおかしい。結局は、場所の指定がなぜ北校舎になっているのかという点で教師はなしになった。」


 相手は、何も反応をしなかった。


「次に学校の従業員だ、これは簡単だ、彼らにも動機がない。もし学校側に恨みを持っているならば、本物の爆弾を仕掛けるだろうしな。そして最後は本校、桐原東高校の生徒ということになる。これにはいくつか空想的な推理になってしまう。根拠は薄いが聞いてくれ。」


 相手は頷くだけだった。


「まず、その掲示板への書き込み時間に問題がある。掲示板に書き込まれた時刻は午後1時12分だった。しかし、午後1時12分というなら、一般生徒は5時間目の授業を受けている時間だ。これでは生徒は書き込むことは出来ない。というのが一般論だ。しかし、授業中だからと言って、決して掲示板に書き込めないなんてことはない。授業中にばれずに携帯から書き込むことは可能だ。これが生徒が掲示板に書き込むのにアリバイがないことを裏付ける。そして次に掲示板の書き込みの理由についてだ。おそらく、犯人の目的は演奏会に関係するものだったと俺は思っている。」


 俺は一方的に話していた。もう結構長いこと話しているので喉の渇きを覚えてきたが、今はあいにく飲む飲み物も、それを買いに行っている時間はない。


「軽音楽部はさっき言った通り、学校の教師側からは忌み嫌われやすい存在だ。しかし、どうだろう、生徒から見てみれば軽音部というのは好かれやすい存在だと思う。だから、そんな生徒が演奏会を台無しにするとは思えない。しかし、俺が演奏会が目的だと考えたのは、犯行予告の時間だ。犯人はこう語っている。」


『爆破予定は午後4時半~6時半の間。』


「と言っている。その上今日の演奏会の時刻は午後4時半~6時半。どう見たって出来過ぎている。だから、可能性として生徒の確率が一番高い。」


 言っているうちに、だんだんと確信に迫っていた。ここからが問題だ。


「次に、その犯人を割り出していく。まず性格から、俺は女で間違いないと思う。なぜなら、これは書き込みに書いてある。」


『桐原東高校の北校舎内に爆弾を仕掛けました。爆破予定は午後4時半~6時半の間。探しても無駄です、絶対に見つからないでしょう。』


「ここには直接的に書かれていないが、文面にヒントがあった。これはどういう風に書かれている?」


「丁寧語。」一言、答えた。


「そう丁寧語。これはおかしい文だった。今から犯行をするのになぜ丁寧語なのか。これは書き手が女性だったからだ。普通男性ならこう書く。」


『桐原東高校の北校舎に爆弾を仕掛けた。爆破予定は午後4時半~六時半の間。探しても無駄だ、絶対に見つからない。』


「と、こうなる。よって犯人は女だ。そして、もうその犯人を俺は突き止めた。」


 相手の顔色を確かめるように窺った。


東雲秋桜(しののめあいか)だ。武瑠(たける)、それが俺が出した答えだ。」



「驚いたね、なぜそんなこと言うんだい?教えてくれよ。」


 さっきまで黙っていた武瑠が急に質問をしてきた。


 とぼけたように言っていた。


「俺がそう思った理由は、彼女が吹奏楽に入っているということ、そして来週に実習が入っているということ。」


「それがどういう関係があるんだい?」武瑠はそう聞いた。


「関係は十分にある。まず今日が金曜日であったということ。そして東雲は吹奏楽に入っていた。俺が思うに彼女は武瑠の演奏会を見に行きたい、思っていたのかもしれないと、俺は思った。暗に俺は武瑠と東雲の今日の話で聞いていた。月曜日に見にこられると。なぜ月曜日に見にこれるのかというのは、彼女が月曜日は部活が唯一ないからだ。そして今日の演奏会は中止になった。しかし、今日の演奏会が中止になっても月曜日に演奏会が延期になるとは決まったことじゃない。火曜日だって水曜日だって、平日ならいつだっていいはずだ。しかし、来週は実習が火曜日から金曜日まである。犯人はそれを逆手に取った。北校舎が爆弾の標的になったのにも、もちろん訳がある。吹奏楽の活動場所は北校舎3階にある。犯人はこう思ったはずだ。もし、爆弾予告で演奏会が延期せずとも、自分たち吹奏楽部は必ず中止になるであろうと。だから時間指定を4時半~6時半といういかにも演奏会に合わせたように書き込んだんだ。」


「流石冬馬(とうま)だね、驚いたよ。」


 武瑠は平然と言った。彼女が自分の演奏を見に来たいが為に、未遂爆弾魔になったということに対して何も思わないのだろうか。


「で、冬馬はどうするんだい?学校側に言うのかい?」武瑠が聞いてきた。


「そんなことはしないさ。俺はあくまで犯人を知ろうとしただけだ。犯人を捕まえようとはしていない。武瑠もそういっていたはずだ。『犯人の目的と、犯人が誰なのかってこと。』を当てようということを。」


「そんなこと言ってたね。じゃあ冬馬がそういうなら、僕も何も言わないよ。それだったらわざわざ別に今日中に言ってもらわなくてもよかったのに。」


「そうかもな…」俺はどうにも答えようがなかった。


 犯人はあくまでも、同級生の知り合いだ。それを知って通報する気にもないし、元々犯人追求すらしたくなかった。


「もう何もない?じゃあもう帰るよ。」そう武瑠が言う。


 俺は何も返事をしなかった。俺が抱えるには少し重すぎる出来事だった。恐らく東雲は武瑠のことが好きだったのだろう。でなければこんなことはするはずがないと思った。ごく小さな世界の色恋になんでこんな出来事が起こってしまったか。


 しかし、俺はどうしても武瑠に今日直接会って言わなければならなかった。

 

 武瑠は無視する俺をお構いなしに、後ろで手を振って帰ろうとしていた。





「まてっ、武瑠!」


 武瑠は立ち止ったが、振り向きはしなかった。





「お前はそれでいいのか?」



すみません。毎回読みやすいように1行1行開けていたのですが、一尺八寸のセリフが多かったため、非常に文字が密接しております。

ご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ